◆DAY13 タンゴが似合うとは

*2019年4月13日*

土曜レッスンからのミロンガ。
今日はオーチョやサンドイッチなどレッスンで習ったステップも活用できて、少しだけタンゴらしくなってきた感。どれもリードがわかるレベルで完成度は低いけど、徐々に綺麗にできて(綺麗というか自分らしく)いければいいな。


*タンゴが似合うとは

最近、「タンゴが似合う」ってどういうことなんだろう、とよく考える。

「タンゴを始めた」というとかなりの確率で「似合う」と言われるのだが、それはどういう意味なのか。タンゴというと、「情熱的」という言葉が枕詞のようについて回るけど、私はそんな情熱的な感じでもないと思うし……。

かくいう私も、路子先生がタンゴを始めたというときは、「似合う!」と思った。そのときどんな気持ちで言ったか思い出してみると……

エレガントであること。エロティシズムがあること。つまり女性として魅力的であること。
そして、影があること、かな。サンバみたいに明るいところで踊るんじゃなくて、なんとなく淫靡な、薄暗い雰囲気が似合う踊りがタンゴだと思った。

私の場合は、タンゴのイメージ=映画『ラスト・タンゴ』から入ったから、タンゴの本質的な部分みたいなものを映画から最初に感じ取ったというのも大きい。もちろん映画を観る前は、私も「タンゴ=情熱的」と思っていた、というかタンゴとフラメンコの違いもわからなかった。

映画を通じてマリア・ニエべスとフアン・カルロス・コペスという伝説的カップルのタンゴ人生を追っていくと、どちらかというと「情熱」というより「愛とか憎しみとか全て含めた、命を燃やす踊り」というイメージが強くなった。憎しみ合いながら踊る、という感覚は、タンゴを始めた今もわからないけど。

何より80代で踊るマリアさんは「おばあちゃん」ではなく、「女」として美しいと思ったし、タンゴを踊っていれば女性として美しく歳を重ねることができるのかなあ、なんて思ったり。

そんなことをつらつら考えながら、踊る路子先生をじっと観察。

やっぱり綺麗。美意識の高さを感じさせる踊り方。足の上げ下げ、角度、つま先まで神経を行き届かせて、自分を美しく見せる動きを意識している気がする。ハルティーナさんのダイナミックな感じともまた違う。たとえ同じ動きをしても人それぞれに違う魅力があって、おもしろいなタンゴ。

路子先生は、「ふだん、日常生活で出せていない自分をタンゴでは出せる(表現できる)という意味で、三人は同じ」といっていた。
(大好きな人たちと「同じ」といってもらえて嬉しい)

「タンゴが似合う」ということについて考えるのは、
私にとってタンゴの本質について考えること。


*どこか悪さがある
2週間後、年上のお友達と飲みにいった時に、主な話題となったのはやはりタンゴだった。プーさん(ちょっと熊みたいなので)はタンゴは未経験ながら、ラテン文化が好きで、昔からタンゴの曲に親しんでいたらしい。

私が、「タンゴは言葉を介さないコミュニケーションで、踊るだけで自分を見透かされる気がする。ただのダンスのはずなのに、なぜかインナートリップする」と言うと、「禅みたいな?」とプーさん。
(確かに禅や瞑想に通じるところもある!)

また、「3分が永遠で一瞬に感じることがある」という私の言葉に、「3分はスポーツの世界でも一区切りとして使われる単位なのが面白いね」と。
(やっぱり3という数字には何かある気がする……。)
こういう一つ一つの返しで、何かしらのヒントをくれる人。

そして先の、「タンゴが似合う」ということについて。プーさんに「タンゴを始めた」と話したとき、案の定「いいじゃん、似合うね」と言われたので、「タンゴが似合うってどういう意味?」と聞いた。

すると彼は、「ちゃんとレディなんだけど、どこか悪さがある」と答えたのだ(この時、何か私の中で腑に落ちた!)。

「タンゴは、年を取ってからますます味が出そうだよね」。プーさんはこうも言った。
「若い時の、エネルギー溢れるタンゴもいいけど、年をとった老夫婦が、普段はよぼよぼ歩いているのに、タンゴを踊る時だけは背筋を伸ばして、でも難しいステップなど踏まずにゆったりと踊っているのがいいよね」。

阿波踊りもそうで、若い人の踊りも、くたびれたおじさんの踊りも、どちらも異なる色気があって、どちらもいい、と。

なぜ阿波踊りを例に出したかは謎だけど、うーん、わかってるなあ……と舌を巻いた。つくづく感度がいい人だ。私がうまく言えないことの核心をついてくる。

「ちょっとやってみたい!」と言うので、シャンパンバーの片隅で、アブラッソを組んで左右に揺れてみた。
驚いたのは、しっかりアブラッソができていること!しかも何も言わないのに迷わずClosedで。

この人、踊ってたんじゃないか、って本当に思うくらいだった。そしてアブラッソが力強い。音楽もなかったからリズムに乗るのも難しく、すぐに席に戻ったけれど、アブラッソが心地よいのに本当に驚いた。
この人はいい踊り手になりそう、とタンゴを激しくおすすめしちゃった。

自分がタンゴにハマってるものだから、人にまでその魅力をシェアしたくなり「タンゴゴリ押しおばさん」になってしまう。困ったものだ。

でももちろん、わかってくれそうな人にしか言わないんだけどね。

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