【クッキー☆SS】ノルマつきの聖夜に祝福を!

この記事はブロマガからの移植記事です

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突貫クリスマスまでに動画作れるかRTA
賢者の贈り物みたいなニュアンス
まあありがちな話

ほんへ

ノルマつきの聖夜に祝福を!


ぐるぐると自分の尾を食うウロボロスのように季節は巡り巡って冬になり、ついにこのシーズンがやってきた。
そう、クリスマスである。
枕元に靴下を垂らすことはないであろう俺は憂鬱を覚えつつ「あー、またこの日がやってきたかー……」とため息を漏らすのである。
そう、毎年の恒例行事。コンビニバイトのケーキ売りだ。
「いらっしゃいやせー、クリスマスにケーキはいかがっすかー?」
声を枯せた林檎売りにはならないようほどほどの大きさで声を張る。
案の定というかやっぱりノルマは決まっていて1人10個売り上げなければ店長に怒られてしまう。
早めにこの行事を切り上げるには少しの頑張りと大量の運が必要になってくるのである。
……クリスマスなんて、なくなってしまえばいいのに。
残り一個で全く売れなくなったケーキを横目に
いるのかもわからないサンタクロースに願った。
もうそろそろそろコンビニバイトやめようかな、少なくともこの期間くらいは、そう思う俺だった。
空には小雪がチラチラ降り始めていて街中を歩くカップルがホワイトクリスマスだの雪降る聖夜だののたまっていた。
歯を鳴らす。寒い。ムカつく。帰りたい。
同僚はもうノルマをすでに達成していてケーキを売りは俺だけだ。
時刻はゴールデンタイム、声を張り上げる。
「ケーキいかがっすかー!」
「じゃあ一つください」
見慣れた顔がそこにはあった。
「仕事終わりにあなたのバイト先に寄ってみたんですよ、そういえば今日はクリスマスイブでしたね、すっかり忘れてた」
「矛盾さん……」
「ラスト一個でしたね、買えてよかったー」
嬉しげに目を綻ばせる顔。
あ、サンタさんですか? もうノルマは終わったのでクリスマス終了のお願いはなかったことに……
「よっしゃ! バイト終わり終わり! 見切り品のシャンパン買って一緒に帰りますかー!!」
ウキウキで矛盾さんに提案する。そうですねと二つ返事を貰ったのでさっさと帰り支度だ。
矛盾さんはラス1のケーキを、俺はチキンとシャンパンを買って家路へ急いだ。

「もうすぐ今年も終わりですね、12月は忙しかった……」
シャンメリーを飲み、ケーキチキンを嗜みつつ矛盾さんは言った
「もういくつ寝ると……が現実に近づいてきたっすね」
「今頃サンタさんはクリスマスプレゼントの仕込みで大忙しなんでしょうね」
「そういえばそうっすね、サンタのノルマはイブが終わってからか」
俺と似たようなもんだな。
もうサンタクロースなんて信じない俺らはプレゼントの準備に明け暮れるサンタの姿を想像して2人で笑いあった。
「そういえばクリスマスにはプレゼントがお決まりでしたね、じゃあこれをあげます」
コンビニで買ったやっすい手袋を矛盾さんにあげる。
「ふふ、ありがとう。いつの年になってもプレゼントは嬉しいものですね」
じゃあこれ、お返しにと矛盾さんはフワフワの毛糸でできたマフラーを手に
「……実は割と前から準備してました、どうぞ」
と言い俺の首にマフラーを巻きつける。
それは幸せを伴った暖かさだった。
「あ、ありがとう……」
コンビニで適当に買ってきた手袋とこのマフラー、差がありすぎてちょっとだけ後悔したが別にあちらの方は特に気にせず手袋をつけて嬉しそうににぎにぎを繰り返しているのでそれもすぐに吹き飛んでいった
「メリークリスマス、しりり」
「メリークリスマス、矛盾さん」
願わくばみんなにも幸せなクリスマスを。
そしていつまでもこうして笑い合える幸せを。
俺らはサンタクロースにそう願った。

おわり

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