まこたろ

これまで触れ合ってきた猫や動物たちのこと、私生活のこと、思いついたことなどを、エッセイ…

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これまで触れ合ってきた猫や動物たちのこと、私生活のこと、思いついたことなどを、エッセイや小説、詩などでとりとめなく書いています。 https://twitter.com/macotaro37

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野良猫なんかきらいだ

「ねえ、猫がいたよ。ほら猫だよ!」 僕が猫を好きだって知ってる人は 街で猫を見かけると教えてくれる でも僕はさ、「うんそうだね」と 素っ気なく興味なさげにうわの空 猫なんかよりも、そばのカラスに 興味津々な僕のことを友人は見て 「あれ?猫が好きじゃなかったの?」 そう不思議に思われたりするけど 猫は大好きだよ、それはほんとさ 興味ないのではなくて嫌いなんだ 僕は野良猫のことが大嫌いなんだ 僕が育てた野良母猫と6匹の仔猫 寒い冬の日にふらっと部屋に来て そのまま

    • こうあるべきだ、という固定観念

      子どものとき、親の望む通りのリアクションをしないことで僕はひどく殴られた。 道で死んでいる鳩を見たときに、父から「こいつが死んでいるのを見て、どう感じたか言葉に表してみろ」と言われた。いつもの表現力のテストだった。 父は物書きで、言葉を扱うプロだ。その息子の僕は、言葉をうまく扱えない子どもだった。 脳の言語野に問題があったわけでも、声帯や舌に問題があったのでもない。心に漂っているぼんやりとした心模様を言葉に表すのが苦手なだけだった。 気持ちを言葉に変換することが苦手な

      • チョコレート。

        チョコレートをはじめて食べたときのことを覚えていますか? 僕の育った家庭はかなり特殊な環境でした。両親は熱心な共産主義の活動家で、資本主義からの革命を本気で起こそうと考えていたので、テレビは「洗脳装置だ」とNHKのニュース以外は付けませんでしたし、新聞は共産党の機関紙・赤旗のみ。食事は質素なものが善しとされていたのと、大企業の製品は一切食卓に並ばなかったのでミートボールなんかもおとなになってからはじめて僕は食べました。 お菓子は、甘納豆しか食べたことがありませんでした。あ

        • バス停。

          夜10時の新宿西口のバスターミナル 日曜の最終バスの出発まであと23分 人陰のまばらなバス停のベンチに座り 灯が消え真暗になったビルに囲まれて 5月の最終日の夜の風は生暖かくって でもちょっぴり肌寒くて、ぴったりと くっつき合いながらあなたと過ごした 春の終わりの新宿西口午後9時37分 一日中ふたりでいても尽きない会話に よくもそんなに喋ることがあるもんだ と笑っていたけれど、40年分の僕の ねえねえ聞いて聞いて、こんなことが あったんだよ、だから、終わらないよ とりと

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        野良猫なんかきらいだ

          居心地のよい場所

          最近、新宿の弁天湯という銭湯にどっぷりハマってる。家から原付で10分、自転車なら20分の距離なのでそこまで近い訳でもないし、なんだったら徒歩圏内に3つくらい他の銭湯があるので利便性が特別良い訳では無い。寒い日だったら、10分も原付に乗ってたら湯冷めしてしまうし。 でも、町の銭湯としてはベスト・オブ・ベストで間違く良い風呂だ。 どうして弁天湯がここまで心地よいのか、待合のソファでぼんやり考察してみた。 まずお風呂。ぶっちゃけよくある変哲の無いタイプのラインナップ。マイクロ

          居心地のよい場所

          今般のコロナ禍、皆様無事にお過ごしでしょうか?どうかご自愛ください。僕は元気です。

          今般のコロナ禍、皆様無事にお過ごしでしょうか?どうかご自愛ください。僕は元気です。

          自転車。

          土曜日。 自転車に乗って、池袋まで買い物に行った。フライパン、トング、パスタを入れる大きめの器。僕は大食いだから。 僕に癌が見つかってから、テフロン加工のフライパンは一緒に暮らす君が棄ててくれた。アルミの鍋も体によくないと、全部ステンレスに替えて。フライパンの無い生活は、苦労も多かったけれど楽しかった。ステンレス鍋は焦げつきやすくてすぐに真っ黒になっちゃうし、食材がこびりついて調理がしづらいけれど、四苦八苦しながらスクランブルエッグを作ったり、工夫しながらパンケーキを焼いた

          自転車。

          エイリアンの小旅行

           はじめて、新宿区の中井という街に行った。かわいらしいスケールの街で、アップダウンの激しい土地に、いびつに入り組んだ路地が縦横に走り、そこに小さな店たちがギュッと詰まっている。店だけではなく、その隙間を埋めるように住宅やアパートも並んでいる。  タクシーから降りてすぐに感じたのは、生活の気配だ。そこに暮らす人々の匂いがしみついていると思った。まるで、知らない人の家にお邪魔したような、そんな感覚を味わっていた。  居酒屋の前で、解散するのが名残惜しそうなおじさんたちが数人、

          エイリアンの小旅行

          「ありがとう」が言えなかった。

           ありがとう、と人に伝えるのが苦手だった。心から感謝をしていればいるほど。その一言では伝えきれないくらい感謝をしている。そう思うと、どんな言葉にすればよいのかがわからなくなってしまって、言葉にすることをやがて諦めてしまう自分がいた。  自分の心のなかのことを言葉にするのは、やっぱり難しい。書いては消し、書いては消し。言葉に出してから、本当にこの言葉であっているんだろうか、と迷ってしまう。そして、また諦めてしまう。  ある人が言った。言葉そのものよりも、熱量が大切だと。ひど

          「ありがとう」が言えなかった。

          長いプロフィール

          子どものころ、僕はほとんど言葉をしゃべらない少年だった。 言語能力になにか問題があったわけではない。心模様を言葉に置き換えることができなかったからだ。頭のなかでは、常に目まぐるしいスピードで思考が流れ、回転していた。 花を見れば、 「なんていう花なんだろう。きっと名前はあるのだろうけれど、僕にはわからないや。図書館に花の図鑑があったから、それで名前を調べてみよう。嗅いだらどんな香りがするんだろう。でもいまは蝶々さんが集まっているから、順番が終わったら嗅いでみよう」 心

          長いプロフィール

          黒猫

           最近知りあった黒猫の話。    猫にまつわるエピソードを書いている僕だけれど、じつは野良猫が苦手だ。苦手というと語弊があるかもしれないが、この言葉が一番しっくりくる。  苦手なのは、一度彼らとつながりを持ってしまうと、いつも気にかけてしまうからなんだと思う。雪の降りそうな寒い夜には、こんなときにちゃんとあたたかくして眠れる住処はあるんだろうか、とか、台風の日には、どこに隠れたって容赦なく打ち叩く雨に体力を消耗していないだろうか、とか、考えてしまう。  名前までつけてしま

          いままで自撮りをアイコンにしていたけど、小説を書いてる会社の部下ちゃんが休憩中にnoteを読んでるのを偶然目にして冷や汗。身バレして困るような内容ではないが「知られてるかもしれない……」と思っただけで自由に書けなくなってしまうからアイコンを変更しました、とさ。とっぴんぱらりのぷぅ

          いままで自撮りをアイコンにしていたけど、小説を書いてる会社の部下ちゃんが休憩中にnoteを読んでるのを偶然目にして冷や汗。身バレして困るような内容ではないが「知られてるかもしれない……」と思っただけで自由に書けなくなってしまうからアイコンを変更しました、とさ。とっぴんぱらりのぷぅ

          感想を言うのが苦手

           誰にも話をしたことがないけれど、僕がいちばん苦手なことは、見たもの、触れたものの講評を言葉にすることだ。ちょっと格好つけて講評なんて書いてしまったけれど、平たくいえば感想だ。  映画や本、芸術、音楽。それらに触れたときに、どう感じたかとか、どう思ったとか、そういう「心のなか」のことを言葉にするのが本当に苦手で、苦痛ですらある。だから僕は人と映画を見るのも苦手で、映画を見たあとの喫茶店は、拷問にすら感じている。  なにも感想がないわけではない。胸が張り裂けそうに感じたり、

          感想を言うのが苦手

          テーブルの水

             猫は、手順というか様式というか、そういったものに固執して、それを楽しむようなところがある──そう言っていたのは、作家の村松友視さんだったと思う。  いまから22年前。埼玉県の朝霞市というところで一人暮らしをはじめたころ、ひょっこりと現れて一緒に住みはじめた「岩田」という猫のことは、まえに記事に書いたけれど、この岩田も手順や様式にとてもこだわる子だった。  たとえば、水を飲むとき。普通の猫は、水の入った容器に顔を突っこんでそのまま舌を使ってすくい上げるようにして水を飲

          テーブルの水

          マリー

          2016年に書いたものを加筆して再掲載しています 「いま出発しました。到着予定時間は25時前後です」 知人の伝手で知り合ったブリーダーさんから電話があったのは、2004年1月17日の21時頃でした。携帯が鳴るのをいまかいまかと心待ちにしていた僕は思わず立ち上がり、 「ありがとうございます! すごく楽しみです!」 電話の向こうの相手に何度も頭を下げました。 高まる気持ちを落ち着かせるためにベランダに出て1月の冷たい風に当たり、仔猫を迎入れるための準備に不足がないか頭を

          ちこ

           猫と友だちになることにかけては自信のあった僕だけれど、どうしても心を開いてくれない猫も、過去にはいた。とくに憶えているのは、山本さん家の飼い猫・ちこだ。  山本さんは、いまではもう完全になくなったブルセラショップを経営していた人で、約20年前の出会った当時は、たいへん羽振りがよかったけれど、何度か逮捕をされたり、危ない目にあったりを繰り返して、そのうちに消息がわからなくなってしまい、もうずいぶんと長い間、連絡が取れていない。  彼とのエピソードだけでも、1冊の本が書ける