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No.28 新宿の件による不安を乗り越えるご無理

2020年7月はコロナによる緊急事態宣言を抜け出たところに見舞われた豪雨災害に始まり、そしてじわじわとカウントアップされる感染者数の中、それでも舞台を人生に取り戻したい!というみなさまの心意気がたいへんな追い風を吹かせてくださり、おかげさまでむりばかおじさん は各方面からたくさんの応援とご支援を実感しながら、嬉し涙の中で稽古と準備に励んでおりました。

そんな朝、それは落雷のような衝撃でした。

知ったのは直接のニュースサイトより先に、歌舞伎俳優・尾上松緑丈が猛烈にあらまいているブログでした。「ふざけるなよ 新宿のと或る劇場で舐めた真似してくれたらしいな」「万死に値する 覚悟もへったくれも無い世間知らずの小僧共が生半可な気持ちで遊び半分に首突っ込んで掻き回していい世界じゃない」ただごとじゃない殺気。いつも鋭利な刃物を振り回すような松緑丈のブログですが今日はどうも只事ではない気配。それがどんな事件について言っているのか、まだニュースサイトには詳細はないが、どうやら劇場、舞台でクラスターが発生したもよう。「世間はやはり、まだ舞台は危険だというのだろうか」むりばかおじさん は背中に冷たい水を浴びせられたような心持ちのまま、ドキドキしながら情報を集めまくりました。

午後になり事件の詳細が徐々に手元に集まり始めました。詳細はみなさまもご存知の通り。むりばかおじさん は事件で問題視されていたひとつひとつを検証し、現在脳内にある「無理ばっかり。」の現場と照らし合わせました。演出、芝居の構成に危険性がないか、稽古の方法に不安点はないか、タイムテーブルはどうか、楽屋についてはどうか、出演者・スタッフの日常の行動と健康管理に曇りはないか、少しでもお客様を不安にさせる言動がないか。

お客様の導線と入場・退場・劇場内での過ごし方について見落としはないか、スタッフの動きとお客様が触れる箇所について要注意箇所はどこだろう。そしてこの一件によりご来場に不安を覚えたお客様へはキャンセル返金を承るべきだろうが、そのお知らせについて。否、まずは、我々が万全の配慮をもって臨んでいることと、お客様のご協力も不可欠であり、心意気ではなく具体的に安全・安心してお越しいただきたい。

むりばかおじさん はお客様に、ご来場直前にメールで安心してお越しいただくためのたくさんのご無理をお送りすることにしました。その文章については次のご無理で。

この事件報道からたった3日で公演初日を迎えることになり、お客様におかれましても、不安と緊張感でいっぱいだったこととお察しいたします。エレベータが開いてロビーにご到着されるお客様から「今からお芝居をみるワクワクした気持ち」よりも、不安と緊張の方がずっと大きいことを痛いほど感じました。足を運んでくださって、本当にありがとうございます。

また、久しぶりの観劇の喜びの時間、久しぶりに顔を合わせた懐かしい友や知り合いと、再会を喜びたいところを、グッとこらえて、目と目で静かにコミュニケーションしてくださいましたこと、そのお姿に心から感動いたしました。

公演初日3日前という、さあ行け行けドンドン!となるタイミングで幸運にも一度足を止めて見直しの時間をいただけたこと。逆にとてもありがたいことだったといまとなれば感謝の気持ちでいっぱいです。


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