ペルソナ分析の有効性

Webマーケティング手法のひとつに "ペルソナ分析" がある。ターゲットとなるユーザにモノやサービスを、いかに効率的に売るか分析する手法だ。ここではペルソナ分析はどういうものかを詳しくは述べない。多分、この記事を読んでいる人はペルソナ分析について説明しなくても十分に知っているし、詳しく説明しているサイトは山程あるので、他のサイトを参照して欲しい。

ここでは、ペルソナ分析が本当に有効であるかを考えていく。

一般的にはペルソナ分析は有効であると考えられ、どのようなマーケティング部門でも行われている。しかし、実際には失敗しているケースも多い。その場合、よく使われる言い訳としては「ペルソナ分析が不十分だったので、次回はもっと分析しよう」というものだ。その他にも失敗した理由は様々だが、共通している点は、ユーザのことを理解している(気持ちになっている)点だ。

架空のユーザを作り上げるとは言え、多角的な要素から分析すれば理解したような気持ちになるのも無理はないが、ユーザのことを真に理解することは可能なのだろうか。

SIer であれば「顧客が本当に必要だったもの」という風刺はお馴染みのネタだ。顧客の要求通りのモノやサービスが作れないのは、開発側の勝手な思い込み、もしくは顧客自身も自分が必要とするものが分かっていないというものだ。以下の風刺画は、SIer 業界では有名なものだ。

ここでのポイントは、2 つある。ひとつは、開発側の勝手な思い込みにより本当に必要なものを見失う点。もうひとつは、顧客側も自分が必要とするものが分かっていない場合があるため分析の根幹を歪める点だ。

SIer 業界では、このような失敗を避けるために「正しいゴール」を決めて顧客と合意することを教訓としている。しかし、現実は予見可能性の低い分野や、過去の開発・運用経験や他者の成功事例に引きずられて「誤ったゴール」を設定し、「失敗を達成」するプロジェクトは少なくない。

ペルソナ分析の場合はもっと深刻で、ユーザとゴールについて合意するという概念がない。そのため、結果的に成果が出たとしても分析が成功したという保証にはならない。

ペルソナ分析では、ユーザの抱える問題点について分析を行い、解決するための方法を提供することが有効であると言われている。Google もユーザの検索クエリーを(例え、暇つぶしの娯楽探しであったとしても)「問題」であると定義して、解決するための記事を提供している。その意味で、ペルソナ分析の本質はユーザの問題点にフォーカスすることは正しいように思える。しかし、本当にそうだろうか?

この疑問を投げかける真意は、正しくユーザの問題点を把握できるのか?ということだ。先の例に挙げた「顧客が本当に必要だったもの」からも分かる通り、ユーザ自身も問題を正しく把握しているという保証はない。

ドナルド・ゴース、ジェラルド・ワインバーグ 共著『ライト、ついていますか』では「問題とは望まれた事柄と認識された事柄の相違である」と明確な定義を与えている。この本の中には、問題の発見の重要性を説明するためにビルのエレベーターのサービスの例題が登場する。朝と夕方には、エレベーターが地獄のように混雑し、利用者は永遠の時間を待たされる。この問題を解決するには、どうすればいいのだろうか?以下は解決案の一例だ。

・エレベーターをスピードアップする
・労働時間をずらしい、ラッシュアワーを平均化する
・各階止まりと急行にわける

人は問題を解決したいという要求が強く、問題らしきものがあると、たちまちその解決方法に取り掛かってしまう。しかし、このエレベーターに関する問題とは何だろうか。つまり、誰が依頼主で、誰を幸せにしなければならないのか。この件に関しては「望まれた事柄とは、エレベーターの待ち時間を短くすることだ」と考えてしまいがちだが、それは正しいだろうか?

この問題の唯一ではないが、最良の解決策はエレベーターホールに鏡を設置することだった。エレベーターホールで待つ時間の暇つぶしの道具を与えることで、利用者に待ち時間が短いように感じさせる。 これは、前に挙げたどんな解決策よりも簡単で低コストになる。

ブログでも同じことが言える。記事を書くときに問題点を「エレベーターの待ち時間を短くすること」にフォーカスして、上記のような解決策を提示してはいないだろうか?それは、本当にユーザの求めていた答えなのだろうか。ここから見えてくる教訓は、ユーザの問題点を正しく発見できれば有益な情報を提供することは可能だが、ユーザの問題点はそう簡単に発見できないということだ。

問題解決のコンサルティングでは「問題解決の上手下手は、そして問題解決の経験の差は、問題の定義の差に最もよく現れる。あざやかに見える解決策は、あざやかな問題定義によることが多い。」と言われる。

もしも、あなたがユーザの問題を簡単に定義できると思っているのであれば、それは過信であり、慎重になるように改めるべきだ。本質的な部分を軽視することは失敗する可能性を高めるだけである。

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