映画「血のバレンタイン」Blu-ray 2枚組 超・特別版レビュー「映画を「元の形」通りに観たいと思う気持ちに普通の映画ファンであろうとウルトラゴアホラー映画ファンであろうと何ら変わる所はありません!」

20年前に鉱山で落盤事故が起こり
炭鉱に閉じ込められた炭鉱夫ハリー・ウォーデンは…。
自分が仲間の肉を食ってまでして
酸欠でキチガイになってまでして
生き延びていたのに
呑気にバレンタインのパーティなんぞを開いていた
町の奴等を決して許さずパーティの主催者をツルハシで惨殺し
その心臓(HEART)をバレタインハートとして捧げて精神病院に入れられた。
「バレタインを祝う奴等は必ず殺してやるッ」
と言い残して…。

20年後に20年ぶりにバレンタインのパーティの再開を決めた
実行委員の元に惨殺された女のハート(心臓)が届けられる。
「ひょっとしてキミたちはもう忘れちゃったかな～?」
「オレは一瞬も忘れてねえよ…」
「パーティ開いたら殺すって言っただろォォォォ」
と書かれたメッセージカードが同梱されて…。

斯くして20年後に再び…
炭鉱夫の格好したキチガイの殺人鬼が
突飛な方法で片っ端から惨殺を開始するのであった…。

この人殺しのキチガイが…。
精神病院を脱走したハリーなのか…。
それとも「別の誰か」がやっているのかが本作品の焦点で…。
明らかに
「ハリーに見せかけて全部アイツがやってるんじゃね?」
という誘導があり…。
1.ハリー
2.ハリーに見せかけてるアイツの仕業
3.それとも別の誰かなの?
の間で視聴者の関心を
最後の最後の最後まで掴んで離さない作劇の妙に唸る。

本作品はスラッシャー映画兼ジャッロ映画であるので
「動機」に全く重きが置かれておらず
「動機」なんて最後に10秒くらい描写があるだけ!

ジャッロ映画に於いては
1.スタイリッシュな惨殺
2.意外な真犯人
3.唖然とする真相
4.目が点になる結末

が重要なので伏線も論理的整合性も割とどうでもいい。
ソコがミステリとの違いですね。

真犯人が真犯人である必然性など!
ジャッロには要らねえんだよ!
ジャッロに於ける「犯行動機」は…
「普段が普通に見えてた真犯人が実はキチガイだったから」
が「普通」なのです。

この話は…。
1.キチガイの人殺しによる大殺戮
2.ひとりの女を元カレと今カレが奪い合う痴情の縺れ
が並行して描かれ…。

最後にふたつの話が結び付いて大殺戮は止まり
痴情の縺れも解消する奇跡の様な着地を見せるのだ。

吹替では元カレがベルばらのアンドレ(志垣太郎),
今カレがシャア(池田秀一)で
リプリー(弥永和子)を奪い合う
夢の様な光景が展開されるワケです。

吹替はね…。
セックスする=ニャンニャンする
逆さまになる=ぶら下がり健康法
等々味わいがありますね。

「夕やけニャンニャン」に「オールナイトフジ」が負けたと思ってるよ…。
女子大生より女子高生…。

ひとつだけ言えるコトは…。
このオンナにはオトコを見る目が全く無いと言うコトである。

本作は炭鉱夫の格好した
キチガイの殺人鬼くんが張り切って殺しまくったので
MPAA(向こうの映倫)が難色を示し…
「ウルトラゴア描写をうんと割愛しなければ公開罷りならん」
とのお達しを出し…
泣く泣くカットしたウルトラゴア描写の極めて希薄な
「気の抜けたコーラバージョン」が…
現在「90分全米公開R指定版」と呼ばれ…
かつて日本で出たDVDもこのバージョンとなります。

今回の目玉はその割愛されたウルトラゴア描写を…
可能な限り復元した「93分アンカット版」であり…
「3分の差分」の中に…僕達がずっとずっと観たかった
ウルトラゴア描写がギッシリミッチミチに詰まってて
孫を抱いた大泉逸郎の様に自ずと恵比須顔となります。

スティングレイさんの方針として
「映画にバージョン違いがあるなら可能な限り全バージョン収録する」
ので本商品は「全米公開版」と「アンカット版」の2枚組となってます。

映画は…例え如何なる理由があろうとカットして欲しくありません。
ソレがウルトラゴア描写であるなら尚更です。
「ウルトラゴア描写のないウルトラゴアホラー映画」とはこれ如何に。

今回…可能な限り「元の形」に近づけていただいた関係各位の御尽力に
改めて感謝したい気持ちです。