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「中小企業にとっての知的財産」とは

 日ごろ、三重県で中小企業や個人事業主の皆さんの知的財産活用について支援をさせていただいています。支援活動の中で感じたことの一つが、知的財産という言葉の前に高い壁があること言うことです。

 この文章ではこの壁を低くすることにチャレンジしてみようと思います。

 まず、なぜ私が高い壁の存在を感じたかということから説明してみます。

 支援対象と考える企業に声がけする際、多くの企業の経営者から「わが社には知的財産なんてありませんよ」というお返事をいただきます。 この認識が高い壁です。勿論、そのような反応ではなく、前向きにお応え下さる経営者もいらっしゃいますが、前述のような場合が多いのです。

 多くの中小企業は大企業の下請けとして50年、100年と長きに亘り成長したり衰退したりしてきた歴史を持っています。そういった企業は大企業から仕事を貰って言われるままに対応してきたという意識が支配的だというように感じられます。言い換えますと、自分たちは何も創造的なことをしていないという意識が強いのです。

 果たして本当にそうなんでしょうか?

 そういった疑問を感じるのは、同じ経営者が「発注元に工程監査の際に技術を持って行かれてしまった」と仰ることが少なくないからです。盗まれたものは自分たちが考えた「秘密にしておきたいこと」に他なりません。これを言い換えると「わが社には知的財産がある」ということになります。

 日本の大手企業の多くは下請け企業に対して品質、価格、納期について厳しい要求を示し、大企業を顧客として長く事業を続けてきた下請け企業はこれらの厳しい要求に応えてきました。継続的な品質改善、原価低減、工程の短縮をなしてきたということです。中小企業は経営者自身と従業員が営々と積み重ねてきたものが知的財産であると言っていいでしょう。

 製造業を例にとれば、顧客から示された部品の図面は顧客の大切な知的財産でありますが、それを安く短納期で良い品物を収めるための工夫は下請け企業の大切な知的財産です。そして中小企業の経営者はそれを守り蓄積し発展させる責任があると言い換えられます。

 工夫の中には世界で初めてのもので、既存の技術よりも進歩性が高ければ特許権になる可能性があります。然しその前に、自社にはどのような工夫の蓄積があるかを集め、整理して、どのようにして保護するかということを考えることから始めるのが良いでしょう。

 こういった作業は従業員から見れば、自分たちの仕事の要点を強く意識し、仕事の意義を自覚できることに繋がり、自分たちが評価されると認識できることになるので職場のやる気の向上につながることになります。

 中小企業の経営者の中には、下請け体質からの脱却のために奮闘なさっている経営者もいらっしゃいます。そんな場合には自社が持っている知的財産は何かを明らかにし、武器にすることが大切です。そんなお手伝いにも関わらせていただきたいと考えています。

 私は中小企業の経営者の皆様とお会いする際にはこのような認識を持っていただけるように接していこうと思っていますが、それでも門前払いされることも多くあります。でも、それに屈することなくドアをたたき続けようと思っています。そんな折にはどうかドアを開けていただけると嬉しいです。

 

 

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