音楽理論「重箱の隅」第21話「リズムがハシる…OK?NG?」
こんにちは。ベーシストの村井俊夫です。
音楽理論の端っこのほうにある、ふとした事柄、でも割と大事なこと…重箱の隅を楊枝でつつくような記事を書き連ねています。
よろしくお願いいたします。
今日のお題は
「リズムがハシる…OK?NG?」
です。
「リズムがハシる(走る)」ことをOKとするかNGとするか、については十人十色、さらにジャンルによってもまちまちかと思います。
クラシックではテンポの変化は当然ですが、その場合のaccel.(次第に速く)やrit.(次第に遅く)は予定されている表現なので「ハシる、モタる」とは違うものです。
今回のお話は軽音楽、つまりポップス、ロック、ジャズなど「基本的にIn Tempoの音楽」のリズム隊について、です。
ハシることへの肯定意見としては「盛り上がったらハシるのは当然、それがカッコイイんだよ」というもの。否定意見としては「In Tempoなんだから、その曲のテンポはキープしなきゃ」というもの。どちらも一理ありそうですが、少なくとも、ハシることを無条件にOKとするのは一考の余地があると考えます。
たしかに演奏が盛り上がった時にテンポが上がり、高揚感を感じることはありますが、それはもしかしたら音楽的な盛り上がりではなく、いわば「ジェットコースター効果」かもしれません。
本来、音楽的な盛り上がりは「譜割りの変化」「シンコペーションの増加」「ポリリズム」「不協和度の増加」…などの要素ですが、単にテンポが前のめりに上がっているだけの場合には、テンポが上がることによる「忙しさ」が高揚感にすり替わっている、にすぎません。ジェットコースターの急降下で「キャ~~~」となるのと同じ感覚です。
「でも、誰々の何々の演奏はハシってるけど、すごいカッコイイよ!」というものが多々あるのも事実です。しかしそれらは決して「ハシっているだけ」ではなく、音楽的に素敵な要素がたくさん盛り込まれているはずです。それらを優先的に盛り込んで、結果的にハシっているけどカッコイイ、と。決して「ハシっているからカッコイイ」わけではありません。
テンポ設定は、その曲を最も魅力的に聴かせられる数値、なので、それを軽視するわけにはいきません。加えて、クリックを使ってのレコーディングにおいても盛り上がりを作る工夫は必要です。作曲においても演奏においても。
結論としては
①テンポキープは大前提として心がけるべき。
②テンポキープの中で、音楽的に盛り上がる工夫(上記)を模索する。
③それらの要素を盛り込んだところ、結果的にハシっていた、ならば、それはそれでアリ。ただしクリックを使った録音では成り立たない。
といったところかと考えます。
ちなみに、ことさらに盛り上がりを求めていない状況でもハシってしまうケースがあります。これは単に「間がもたないから次の音を急いでしまう」状態です。解決策としては「音のサステインや休符を聴く」「1拍の中身を細分化して感じ取る」などを心がければ改善します。
おあとがよろしいようで。
お読み頂き、ありがとうございます。
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