音楽理論「重箱の隅」第18話「スラーについて」
こんにちは。ベーシストの村井俊夫です。
音楽理論の端っこのほうにある、ふとした事柄、でも割と大事なこと…重箱の隅を楊枝でつつくような記事を書き連ねています。
よろしくお願いいたします。
今日のお題は
「スラーについて」
演奏指示記号のスラー(slur)は「2音以上にまたがり、なめらかに演奏する」ことです。
この場合、バイオリンなどの擦弦楽器でしたら「弓を返さずに、ひと弓で」という指示になりますし、管楽器でしたら「タンギングはスタートのみで」ということになります。
では、これがピアノやギターの場合はどうでしょうか?
「なめらかに」というからには、各音を途切れずに出す、ということは必要ですが、ピアノやギター、ベースなどのリズム隊楽器は基本的には各音にアタックを持っています。
強いて言えば、ギターやベースにはハンマリングやプリングオフ、がありますが、2、3音ならまだしも、このような長いスパンでの対応はしません。どうしても以下のように何箇所かのアタック音があります。
押弦している指をスライドさせる、という発想もありますが、その場合にも同様であり、かつ、スラー以外の演奏要素(ポルタメント)も含まれてしまいます。
『スラーというのは、そのフレーズに込める気持ちを書いている』という意見もありますが、その気持ちを込めた時にどのような発音になるべきなのでしょうか?
①リズム隊楽器の場合、各音には必ずアタックが付きますので、それを「なめらかに」聴かせるには、各音の連結関係を「アタックのグラデーション」で示すことが方法のひとつ、と思います。
いくつかの音にまたがってクレッシェンドやデクレッシェンドをほんのり加えることで「つながっている」感じを示そうとしています。
②アンサンブルに支障のない範囲で、タイミングのグラデーションを作ることもあります。例えば「上行形では最初は少しタメ気味、音が上がるにつれ前のめりで」とか「下行形では最初は前のめり、音が下がるにつれ少しタメ気味」など。
擦弦楽器や管楽器とは違い、ピアノやギター、ベースは「スラーと奏法」が直結しない場面に出くわすこともありますが、その時にはバイオリンやフルートなどをイメージすると「そのフレーズが求めているニュアンス」をつかむことができると思います。
おあとがよろしいようで。
お読み頂き、ありがとうございます。
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