「スマイル0円」思想が招くカスタマーハラスメント

前回の、子育てを変えずして、パワハラ・いじめはなくならないという記事に、「カスタマーハラスメント」の記事を書くと予告したので書いてみようと思います。カスタマーハラスメントというのは、いわゆるお客様による店員などへの嫌がらせ、理不尽な要求などを指し、昨今のコロナ騒動の影響で人々の間に漠然とした不安や恐怖が広がる中、自己中心的で精神性の低い人々の身勝手な要求に疲弊する従業員の方が多数いらっしゃるようです。もちろん今に始まったことではなく、世の中的にめちゃくちゃありふれていましたが、ここ数年「カスタマーハラスメント」と名付けられ定着することで、より人々の意識に上ってくるようになったのかなと思います。この辺の流れはセクハラ、パワハラ、モラハラの類に似ています。

ここ数ヶ月、頭の中がハラスメントへの興味・関心でいっぱいだったのですが、やはりどんなハラスメントにも共通するのが、「相手を下に見る、見下す」ような態度です。相手の尊厳を無視し、感情のないモノのように扱い、自分勝手で理不尽な要求をしてきます。その根底にあるのは、お金を持っているお客様の立場が上で、店員の立場が下、という暗黙の認識なのだと思います。これは百貨店や高級品を扱う商売においてはより顕著でしょうね。それは、以前に「平凡」「退屈」を仕事とお金で解決する消費社会 の記事に書いたように、拝金資本主義がもたらしている「まず人は消費者であらねばならない」「金こそ正義」という思想の賜物だろうと思います。たくさん消費できる人が偉い、立場が上、という社会全体の価値観があるように思います。

さらに日本は「おもてなし」とか「お客様は神様だ」的な思想が強いので、自分が客の立場の時は丁寧に接してもらえて当たり前と思っているし、店側の立場の時は丁寧な接客をしましょうと指導されるのが通例となっていますよね。店員のサボり的な行為には本当に厳しいものがあり、常にお客様に監視されているようなところもあります。他国へあまり行ったことがないので伝聞レベルですが、不愛想で不親切な対応が当たり前の国もたくさんあるとよく聞きます。それに比べて日本はどこへ行っても店員さんの気持ちの良い接客を受けられ、嫌な思いをすることはほとんどなく、それは良いところでもあると思います。これは客の立場ではありがたいと思う部分もありますが、自分が店員の立場になると、これはものすごいストレスであって、「気持ちの良い接客をしなければならない」「ずっと辛い姿勢でいなければならない」「お客様の予定を優先しなければならない」「仕事中に水すら飲めない」といったそれ自体がハラスメントともいえるような行為を当たり前に耐えなければなりません。

末端で働く接客業の人々(大抵非正規)の待遇の悪さ、金銭面での軽視され加減も非常に気になっており、その賃金の安さもお客様に軽く扱われる原因なのではないかと考えています。街で接することの多い末端で働く店員さんというのは、その企業にしてみれば付加価値の源泉です。本社の管理職が1日休んでも売上には影響ないけれども、末端の店員が休んで店を開けられなければ売上に直に影響してきます。それでも管理職は何倍も給料をもらっていたりするわけです。日本はチップ文化があるわけでもないし、いくら気持ちの良い接客をして会社の売上に貢献しても、それで時給が上がるわけではない場合がほとんどです。

「スマイル0円」と言えば誰でも思い浮かべる仕事がありますね。場所によっては1000円以下の時給で働かせているくせに、接客で求められるものが高すぎると思います。「スマイル」は0円じゃありません。はっきり言って日本の平均的な接客業の時給は明らかに低すぎます。低賃金で働く接客業の方々のあり得ないほどの忍耐力・真面目さによって日本の気持ちの良い接客は支えられているんですね。享受する方は「スマイル0円は当たり前」と思って軽視するからこそ、店員を見下すようなカスタマーハラスメントが横行するのではないでしょうか。

接客って本当に感情労働で、どんなに理不尽なお客様が来ても感情的にならず冷静に対応することが求められているため、ものすごく感情を抑圧するし本当にストレスが溜まります。上司・同僚がまともな人だとねぎらってくれたりかばってくれたりして救われることもありますが、その辺りは運です。理不尽なクレーム対応を苦にして従業員が辞める会社もたくさんあると思います。日本全体として、お客様に甘すぎでは?と思う節もあり、従業員を守るためにも会社には毅然とした対応をとってほしいところですが、「お金を持っている人が偉い」思想が根強いと、やはり下手に出てしまうようです。パワハラ、セクハラ、カスハラ…あらゆるハラスメントにおいて、善良な人々は無力なのでしょうか?精神的に幼い人々が真っ当な人々を追い込み、社会全体を疲弊させている状況を黙って見ているわけにはいかないなぁと、問題意識の火が燃え上がるのを感じる毎日です。

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