サイフがなくなったら
サイフをなくしてしまった。
打ち合わせのスタバに行き、
コーヒーを買おうと、
サイフを出そうと、
そしたら、サイフを入れてるカバンのポケットが、
全開になってる。
ファスナーが下りきってるカバンのポケットに手を入れると、
あるはずのサイフが、ない。
アタマの中が真っ白になった。
のは一瞬だけで、
なぜか落ち着いていた。
最前までいた図書館か、
移動のバスの中か、
歩いてきた道端か、
でしかない。
全部あたってみて、
最終的には交番にも届けた。
わたしは、なぜか落ち着いていた。
わたしは、なぜ落ち着いているのだろう、
と考えられるくらい、冷静だった。
カバンの中に、
iPhoneはある。
Macもある。
iPadもある。
サイフではなく、
このうちのどれかがなくなっていたら、
こんなに平気ではいられないだろう。
サイフの中には、
クレジットカードがある、運転免許証がある、マイナンバーカードがある、健康保険証がある、職場のIDがある、nanacoがある。
すべて、再発行してもらえばいい。
面倒だけど、そうすれば元通りになる。
その瞬間、
nanacoには3,000円チャージしてたことを思い出した、
クレジットカードのEdyには10,000円もチャージしてた。
これは失効するだろうか、どうなんだろうか。
チャージしなきゃよかった……。
サイフには現金は入れていない。
ほぼすべて、電子マネー払いだからだ。
自分の中に、サイフの重要度が低くなっていることに気がついた。
もしiPhoneをなくしていたら、
ものすごく落ち込んだだろう。
今夜の飲み会の場所がわからない、
明日の予定がわからない、
LINEでの連絡がつかない、
買いなおさないといけない、
えらい出費だ。
macでもiPadでも、
書き溜めたデータがなくなる、
撮りためたデータがなくなる、
kindleのデータがなくなる。
データはクラウドで取り返すことはできるけど、
デバイスは買いなおさないといけない。
えらい出費だ。
そう考えると、サイフは……。
しかも、サイフなら、
誰かが拾ってくれさえすれば、
きっと出てくる。
絶対に出てくる、という自信があった。
はたして、飲み会の途中、
バス会社から電話がかかってきた。
「サイフがありました」
熊本ばんざい!
日本ばんざい!
産交バスさん、ありがとう。
でも、えらいことに気がついた。
サイフは、重要なものではなくなっていることに。