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美術館の帰りに出会った女の子

ほっこりする体験談を聞いた。

わたしの仲間内で『コウペンちゃんとまなぶ 世界の名画』という、
わりと子ども向きの本が流行っている。
(『コウペンちゃんとまなぶ 世界の名画』イラスト:るるてあ 監修・著:稲庭彩和子 著:鮫島圭代 KADOKAWA 2021年)

予約の段階から2000部を超えていたというから、
売れている本でもある。

なぜこの本が人気があるのか、流行っているのかというと、
「名画」ばかり53作品、
しかも「とりわけ明るい気持ちにさせてくれる」名画を、
見開きで1作品と、その解説がついていて、
なぜその作品が「名画」であるのか、その秘密がわかることと、

名画の楽しみ方は100人いたら100通り。いろんな感じ方ができて、多くの人がそれぞれに「いいね!」と思う部分があるからこそ、名画は名画なのです。

どんな楽しみ方、解釈の仕方をしてもいいんだ、ということで、
楽な気持ちになって絵を観ることができるし、
それで読み進んで(観つづけていく)ことで、
最終的には、名画を身近に感じられるようになるから、
この本を手に取る人が多くいるんだろう。

こんなことがあった(そうだ)。

友人の話。
東京都現代美術館に横尾忠則展を観にいった帰りのこと。
電車に乗っていたら、なんだか興味津々の視線を感じた。
視線の先は、自分の膝もとに広げて読んでいた『コウペンちゃんとまなぶ 世界の名画』。
視線の元は、小学校3年生ぐらいの女の子、とそのおかあさん。

友人も興味津々でお声がけをした。
女の子はニコニコ顔で、コウペンちゃんが大好きといった。
それで、いっしょに『コウペンちゃん……』を観ることにしたけど、
女の子のワクワクがとまらないので、その本を、彼女が電車を降りるまで、貸してあげることにした。

女の子はおかあさんといっしょに『コウペンちゃん……』を楽しみながら、
お絵かきが大好きなこと、
先日お絵かき教室に入会して、今週から通うことがうれしくてしょうがないこと、
などなどを問わず語りに友人に話してくれた。

その女の子が電車を降りる駅に近づいたころ、
おかあさんは「本を買ってあげたいから、写真を撮っていいですか?」
といって、友人がOKするのを待って、スマホでパシャ。
女の子は自分の可愛らしいポシェットの中に手を入れて、
なにかをもそもそ探している。

あった、といって女の子が友人に手渡したものは、
鬼滅の刃の竈門炭治郎のキーホルダー。
炭治郎好きの友人はそのお礼の炭治郎に驚いて、
なぜ自分が炭治郎好きなのかわかったのか、と尋ねたら、
わかんないけどわかったの、とニコニコ顔だった。

『コウペンちゃん……』の帯には、こう書いてある。

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