朝起きたら蛇とベッドインしていた話など/南山宏・ちょっと不思議な話
「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2019年12月号、第428回目の内容です。
文=南山宏
異食症
キューバはバヤモ市の外科医師団は、腹部の激痛を訴えて緊急搬送されてきたレオスバーニ・ピノ・ロペス(32歳)の命を、2時間を超える除去手術で救った。
激痛も当然で、ロペスの胃からは出るわ出るわ、鋏、釘、ガラス片、爪切り、鉄屑などが33個、石ころが7個と、消化不可能な金属物と鉱物類が大量に発見された。
医学上このような極端な偏食癖は〝異食症〟と呼ばれている。
名画急騰
現代絵画の最高峰のひとりと目される前衛画家クリストファー・ウールが描いた市場価格250万ドル(約2億7000万円)の高価な抽象画が、ニセの黒髭をつけた黒づくめ姿の乱入者にカミソリで切り裂かれる被害に遭った。
だが、事件現場の米コロラド州アスペンの画廊の男性従業員が、ニセ髭男の正体を当の名画の共同所有者のひとり、ニコラス・モーレイ(40歳)当人と見破った。
ニコラスはカリブ海の島国バルバドスで歯科医だった父親ハロルド(73歳)と共同名義で、この高額な名画を購入していたのだ。
当然、強盗・脅迫・暴行・器物損壊等の複合容疑で逮捕状が出されたものの、なぜニコラスがおのれの大事な所有物をわざわざ毀損したのかは皆目不明で、ハロルドも事情が事情なので、美術品の賠償保険請求の提出を拒んだ。
昨年5月4日付「デイリーメール」紙によれば、皮肉なことに修復専門家の手で見事に復元されたくだんのウールの絵は、市場価値が300万ドルに急騰した。
魚降る
インドの古都ファテプールシクリ市で、2018年7月13日の午後、モンスーンの雨が降り止んだあと、体長10センチないし15センチの小魚の群れが路上でピチピチ飛び跳ねて、住民たちを驚かせた。
専門家は例により「近くの池から竜巻が運んできた」と説明したが、どの池かは特定しなかった。
聖霊の妨害
ドイツはフィエルゼンで、あるドライバーが制限速度の2倍近い猛スピードで走りながら、たまたま出現した〝聖霊〟のおかげで、交通違反で捕まらずにすんだ。
今年5月28日付「BBCニューズ」によれば、警察のスピード違反取り締まり用自動カメラが違反車を捕捉して作動したまさにその瞬間、レンズの真ん前を1羽の白いハトがさっと翔び過ぎた。
大きく広げた翼に妨げられて通過車両の撮影に失敗したのだ。
その交通違反車のドライバーは制限速度が時速30キロの道路を、24キロも超過した時速54キロのスピードで疾走していた。
警察のスポークスマンはこんなステートメントを発表した。
「確認できたのは車両だけで、ドライバーのほうは確認できなかった。彼が罰金刑を免れたのは、恐らく有翼の守護天使が意図的に翼を広げてくれたおかげだろう」
そして溜め息とともに続けた。
「このような形で〝聖霊〟が干渉してきたのは、きっと偶然ではないのだろう。われわれは神の意志を尊重して、今回はこのスピード違反者を不問に付すしかない」
加速膨張
「ハッブル宇宙望遠鏡の最新観測データを綿密に解析した結果、宇宙はわれわれの予想をはるかに上回る超スピードで加速膨張しているという新事実が判明した!」
本年4月25日付「ナショナル・ジオグラフィック」電子版で、米ジョンズホプキンズ大のノーベル賞天文学者アダム・リース博士らの研究チームが発表した。
彼らの解析結果によれば、宇宙の膨張はこれまでの予測値を約9パーセントも上回る超速度で加速していることが判明したという。
最新学説では宇宙は正体不明の暗黒物質と暗黒エネルギーがほとんどを占め、われわれに見える星や銀河などの通常物質は、全体の4パーセントしか占めていない。
暗黒物質は通常物質と同様に重力で相互作用するが、暗黒エネルギーが発するのは斥力(反重力)とされる。宇宙の加速膨張の謎を解くカギは、おそらくその重力と斥力の謎解明如何にあるらしい。
大蛇の朝
イギリスはロンドン郊外ケンジントンのアパートの一室で独り暮らしのアデライン・ウィリアムズ夫人(46歳、仮名)は、2018年7月23日の早朝、眠りから覚めた次の瞬間、心臓が口から飛び出しそうになるほど仰天した。
いつのまに潜り込んだのか、大蛇が1匹、夫人のベッドの中でトグロを巻いていたからだ!(といっても実際のところは、体長1メートルたらずの小型種のニシキヘビにすぎなかったのだが)
アデラインは慌ててベッドから飛びだすと、地元のRSPCA(動物保護協会)に通報した。
だが、協会の職員たちが現場に到着するまでには、小さなニシキヘビはアパートの通路を這いずり去って姿を消してしまったので、捜し回ってやっと捕獲に成功したのは、翌日になってからだった。
動物分類学上、アフリカ原産のこの種のニシキヘビはボールニシキヘビと呼ばれ、性質が温和で、人間に害を加える恐れがないため、近年わが国でもペットとして飼う愛好家が増加傾向にある。
異臭の原因
2018年4月30日付AP電によれば、オーストラリアはメルボルンのロイヤルメルボルン工科大学の図書館で、4月28日、エアコン装置から出てくる変な臭気がガス漏れと勘違いされて大騒ぎになり、職員や学生や居合わせた訪問客たち総計約600人が、先を争うように屋外に緊急避難した。
だが、ガス漏れの箇所を捜し回ったガス会社の専門家たちが最後に辿りついたのは、学生食堂の調理場の食器棚の中に放置された大きなドリアンの実だった。
果肉の独特の美味さから〝果実の王様〟と呼ばれるドリアンは、その美味さとはうらはらに〝テレピン油とタマネギと脱ぎ捨てたスポーツソックス〟を合わせたようなきつい臭気を放つ。このため、東南アジア諸国では、持ち込み禁止のホテルや公共輸送機関
が多い。
(ムー2019年12月号掲載)
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