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縁切りスポットを行くーー足利絵馬に見る本音呪詛の現在/吉田悠軌・オカルト探偵

オカルト探偵・吉田悠軌のライフワーク、縁切り絵馬の現地調査、2017年の成果をご案内。両毛地域に伝え守られてきた「縁切り」と「絵馬」の奇しき関係を、オカルト視点から説き起こす。

文・写真=吉田悠軌

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吉田悠軌(よしだゆうき) 怪談サークル「とうもろこしの会」会長、「怪処」編集長。怪奇スポットや都市伝説現場へのリサーチを各種メディアで発表する“オカルト探偵”。写真は今回の現場、門田稲荷にて。

門田稲荷の縁切り絵馬 定点観測2017

 年の暮れから年始にかけて、世間は賑やかで活気ある雰囲気に満ちてくる。しかし私にとってこの時期は「人間の心の闇」と向き合うタイミングだ。日本最強の縁切りスポット、門田(かどた)稲荷への年に一度の参拝を行うからである。

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「縁切の社」をうたう門田稲荷神社の看板。

 栃木県足利市の門田稲荷について、私はあちこちで何度も言及している。恋愛や人間関係などの解決を祈願する縁切り神社(寺)の中でも、最もインパクトの強い「縁切り絵馬」が並ぶ場所なのは間違いない。「別れろ」「死ね」といった言葉が連なるのは当たり前。嫌いな相手の顔写真を絵馬に貼り、ピンを刺したりカッターで切り裂いたり、顔中に穴を開けたり……。人々の怨念がつくりだすアウトサイダーアートのような絵馬群は、おそらく年始あたりで一部焚き上げられてしまう。その直前に1年の総決算を観察するのが、長きにわたっての私の恒例行事なのだ。

 もはや歩き慣れた境内を進むと、すぐに絵馬の掛け台が見えてくる。このところ祈願者が増えたため、以前は2つだった絵馬掛けは3年前から4つに増設されている。不遜ながら、私が多数のメディアで紹介した宣伝効果もあったとは思う。いずれにせよ「こういう場所があるなら祈願したい」と思う人間が決して少なくないということだ。

 さて、いよいよ今年の絵馬について品評していこう。全体として、この1年だけでも確実に祈願者の数が増加している。4つある掛け台にギッシリ並んでいるのはもちろん、もはやそこを飛び出して、庇ひさしに吊るしたり、脚部に紐を渡してスペースが作られたりするほど。
 内容については、恋愛と家族にまつわる悩み(不倫をしている側・された側、子どもの結婚相手が気にくわない、再婚相手の連れ子が嫌い等)はやはり多いが、それ以上に職場の人間関係トラブルが目につく印象。昨今のパワハラ・モラハラを問題視する傾向が、ここにも表れているのだろうか。また理由も書かずシンプルに「死ね」「呪殺」とだけ祈願している絵馬も多いので、そこは想像するしかない。

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