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手段のby? 道具のwith? 何が違う?

【問題】
次の日本語を英語になおしなさい。

これまでずっと右手で物を書いてきた人が,本当は,左手で用事を済ませていることの方が多いのに,それに気づいていないだけということも大いに考えられるのです。

【解答例】

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【解説】
慣れてくればその必要はありませんが,はじめのうちは…

①長い文はパートに分解する
②パートごとに英作文をする
③パートごとの関係をみてつなぎ合わせる

といった作業を重ねたほうが間違いが少なくなります。
またそれぞれのパートの語尾で分かりにくくなっていた
パートとパートの関係がはっきりして書きやすくなることも多いのです。


①パート分解

基本ルールは「一つのパートに動詞が一つ入っている」

A:これまでずっと右手で物を書いてきた人が
B:本当は,左手で用事を済ませていることの方が多いのに
C:それに気づいていないだけ
D:ということも大いに考えられるのです


②パート英作文

注意点はSVを確認することです。

A:人(S) これまでずっと書いてきた(V) 右手で(M)


以前投稿したnote記事「『昔からずっと』って英語で何て言うの?」
でも取り上げたように

「これまでずっと…」という表現は
現在完了にalwaysやlongという副詞を加え

have always done… / have long done…

とするだけでできます。

もちろん,alwaysやlongの代わりに文末に
for a long time / for yeas / for ages / for some times
などの副詞句を入れてもいいですね。

「右手で」はちょいと注意が必要です。

by his right handではなく

with his right hand

となります。
難しいですよね。
いわゆる「手段のby」と「道具のwith」問題ってやつ。

そこにたどり着く前に少し寄り道にお付き合いください。


手段のbyと道具のwith


交通手段はby train / bus / taxi / car / foot…などのように
「by + 無冠詞名詞」を使って表すのは
皆さんも中1くらいの時に習いましたよね。

I go to my office by car.

僕もその当時は理由もわからず「byの後ろは無冠詞!」
と覚えた記憶があります。

そしてそのあとにこんな問題を出されたのも記憶に残っています。

I went to Osaka with my cousin (    ) his car.

答えはinでした。
「何が違うんだ?」という疑問が浮かんだのを覚えています。

そこで初めて理解したのがこの違い

by car「車という【交通手段】で」
in his car「いとこの車という【乗り物】で」

by carのcarは車という「交通手段」を表します。
車という「乗り物」を指すのではなく「手段」を指す名詞なのです。
「手段を描いてください」と言われても描くことはできません。
それははっきりとした形が浮かばないからです。

はっきりとした形が浮かばないもの「不可算名詞」です。


それに対してin his carのcar「乗り物それ自体」を指します。
「車という乗り物を描いてください」と言われれば
多少の差はあるかもしれませんが
「タイヤがついた窓のある箱的なモノ」を書きますよね。

ある程度はっきりと形が浮かぶもの「可算名詞」です。

さらに上の2つの違いは

交通手段には他の選択肢(電車・バス・タクシーなど)がありますが
いとこの車はいとこの車で他の選択肢はありません。

同様に

by hand「手書きという【筆記手段】で」
with my right hand「自分の【右手】で」

by handのhandは手書きという「筆記手段」を表します。
手という「体の一部」を指すのではなく「手段」を指す名詞なのです。

一方でwith my right handのmy right handは
手という「体の一部」を指します。

また交通手段と同じように
筆記手段には他の選択肢(キーボード入力・音声入力など)がありますが
私の右手は私の右手でほかの選択肢はありません。

by handは筆記手段だけでなく,他の手段としても使われます。

These leather goods are made by hand.
「これらの革製品は手作りです」→他の選択肢(機械)がある

You have to wash this sweater by hand.
「このセーターは手洗いしなければならない」→他の選択肢(洗濯機)がある

ややこしいですが,繰り返して使えばなれます。

by hand : (他の手段ではなく)手で[を使って]

with one hand : 片手で
with one’s hands / with both hands : 両手で
with one’s right hand : 右手で
with one’s left hand : 左手で

長くなりましたが
パート英作文A「これまでずっと右手で物を書いてきた人が」
に戻りましょう。

A person has always written with his right hand.

これでは
「ある人はずっと右手で物を書いてきました」
という文になっています。

関係代名詞説を使ってa personという名詞を修飾しましょう。

Aパート:A person who has always written with his right hand.


続いてBもまずはSVを確認しましょう。

B:済ませていることの方が多いのに(V) 用事を(O)手で(M) 本当は(M)


訳しにくい日本語表現

主語はa personを指すのでheでいいですが
「用を済ます」はどのように表現したらよいでしょうか。

「用」って英語でなんて言うの?と思った人はこう考えましょう。

幼稚園児に「『用を済ます』って何?」と尋ねられたら何と答えますか。

それが答えです。

つまり英語にしにくい日本語表現に出会ったら
幼稚園児が納得できる日本語に変換
その日本語を英語に変換する作業をしてみてください。

あなたならどのように説明しますか。

「必要なことをする」,「物事をする」
he does things

で十分ですね。


「ことのほうが多い」は頻度が(右手)よりも高いという意味なので
more oftenでいいでしょう。

oftenは単独では助動詞・be動詞の後ろ,一般動詞の前に置かれますが
very oftenやmore oftenのように修飾語がつくと
文末に置かれる傾向にあります。

「左手で」は先ほどの通り。

そして「本当は,実際は」はactuallyという副詞を使って

Bパート:He actually does other things with his left hand more often.


続いてCの構造も確認しましょう。

C: 気づいていないだけ(V) それに(O)

「気づく」という単語はいろいろと思いつくかもしれませんが
次の3つを区別して使えれば大学入試の英作文では十分です。


「気づく」:notice / realize / recognize

notice : (五感で)気づく
None of us noticed that he was there.
「彼がそこにいることに誰も気づかなかった。」
→姿も見てもいないし,声も聞いてないし,気配も感じていない。
realize : (状況を判断して)気づく
I’ve realized how precious time is.
「私は時間の貴重さに気づいた。」
状況を判断して
「ということは…そうか!なるほど!」
とそれまで気づいていなかったことに気づいたり
これまでを振り返り
「やっぱりそうだよな…」
と改めて重要性に気づいたりする。
◆recognize : (経験済みなので)気づく
Have you lost much weight? I didn’t recognize you at first.
「めっちゃ痩せた?最初,君だって気づかなかったよ。」
→昔から知っているので気づくはずなんだけど気づけなかった。

もう一度まとめますね。

notice : (五感で)気づく
realize : (状況を判断して)気づく
recognize : (経験済みなので)気づく


ここでは
「よく考えてみると
書くこと以外では意外に左手を使うことのほうが多いんだよな…」
の『気づく』はrealizeですね。

このrealize大学入試の英作文では重宝します。
「痛感する」,「実感する」,「しみじみ感じる」
はすべてrealizeで何とかなります。

Cパート:He just doesn’t realize that.

続きましてDの構造を確認しましょう。

D:ということも(S)大いに考えられるのです(V)。

「ということ」はA~C全体の内容を指しているので
仮主語itで表してみましょう。

「考えられる」は「あり得る」ということなのでpossibleで表現できます。

Dパート:It is highly possible.

Aパート:A person who has always written his right hand.
Bパート:He actually does things with his left hand more often.
Cパート:he just doesn’t realize that.
Dパート:It is highly possible.


③パート結合

DパートのItの内容はABCなのでthat節でまとめると

It is highly possible that ABC.

となります。

またCパートのthatの内容がBにあたるのでBCをまとめると

He just don’t realize
       that he actually does things with his left hand more often.

となります。

さらにBCの主語heはAにあたるので代入すると

A person who has always written his right hand just don’t realize
        that he actually does things with his left hand more often.

これでABCがまとまったのでDと合わせて完成。

【解答例】

It is highly possible that a person who has always written his right hand just don’t realize that he actually does other things with his left hand more often.

【別解】

It is entirely possible that a person who has always been writing with his right hand simply doesn’t realize that he actually uses his left hand more often to do other things

他にも解答はたくさんあると思いますが
参考にしていただければと思います。


まとめ

①長い和文英訳は動詞を基準にパートに分割する。
②パートごとに主語と動詞を意識して英訳する。
③英語にしにくい日本語表現は幼稚園児に説明できる日本語に置き換える。
④パートをつなぎ合わせるときにはそれぞれのパートの関係を考え
 易しいつなぎコトバでつなぐ。


おわりに


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