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おわりに(2/2)(『人生はなぜ辛いのか?と思ったときに読む『モト』の話』)

おわりに(後半)

モトと僕

 「モト」という名前は、日本語の「もと」=元、素、基、源を表すと同時に、ラテン語起源の「moto」=動き、動くことを表すネーミングで、自分でも結構気に入っています。
 モトは常に動いていますが、「移動」することはありません。この矛盾を満たす「構造」として三次元空間を捕えた時、先程の「スピリチュアルな世界」だけで言われてきたことを、初めて現実の世界と結びつけることに成功しました。

 このことを思いついたのが28歳の頃だったと思います。ラバランプという装飾ランプを見ていたとき「三次元空間に裏面がある」という発想が急に沸き起こって、そこから芋づる式に「表裏を行き来する素粒子」という発想にたどり着きました。これがのちに「モト」と命名されることになるアイデアです。

 僕はこの「モト」と、そこから考えられる「人生という『仕組み』」の考察に夢中になりました。
 その頃の生活は、自分に発達障害があることを知らないまま、心身に無理をさせて非正規の低賃金労働を転々としていたため、まさに「地獄のような」毎日でした。ですからどちらかというと「社会」を恨んでいましたし、そういうわけで、この「モト」のアイデアも自分だけの知識にとどめて、他の人には教えないでおこうなんて意地悪なことを考えていました。

 それから15年ほど月日が流れまして、その間にリーマンショックからの派遣切りや就職活動の5年にわたる失敗などを経て、完全に社会という場所に失望していた数年前、自身の発達障害(ASD)が発覚し、そのための社会性訓練を受ける機会に恵まれました。

 生活保護を頂きながらデイケアに通って、発達障害者向けの社会性訓練と、コミュニケーション能力の訓練をがっつり三年やることになるのですが、その中で初めて「自分と同じことでつまずいて、社会に絶望している人がたくさんいる」ことに気づきました。
 僕は、社会という場所は、僕より幸せな人たちが、きらびやかに生きている場所だとばかり思っていました。ですが、そうではなく、どんな人も多かれ少なかれ「人生という苦しみ」を抱えたまま、それでも「生きなければならない」場所こそが「社会」なんだと、初めて気づいたのです。

 僕個人の障害特性として「人に言われないと周囲の人間関係に気づけない」というものがあります。デイケアに通い始めるまで、そういう「社会」というものの本当の姿に「自分で気づけないまま」生きていたんですね。僕は人一倍ニブイんです(笑)。


モトのことをブログに

 そういう新しい「社会観」が芽生えるにつれ、僕が温めていた「モト」から見た新しい世界観を「人に伝えていかなければならない」という使命感のようなものが出てきました。実際に、僕は訓練を通してこの「モト」の動きや性質を応用して、それまででは考えられなかったような、円滑で楽しいコミュニケーションをすることができるようになっていきました。その経験が、同じようなことで苦労している「仲間」の役に立つかもしれない、という思いがむくむくとわき上がってきたんです。

 その思いをぶつけるように、僕は2018年から

「人生はなぜ辛いのか? と思ったときに読むブログ」
https://jinseihanazeturainoka.blogspot.com

というブログを始め、書きなぐり始めました。書けば書くほど、今まで漠然と僕のアタマにあったアイデアが形になっていく手ごたえを感じ、結局100エントリーまでノンストップで書き上げました。
 ブログ自体は2020年2月現在も継続中です。ですが、その100エントリーの内容を、もっとわかりやすく、もっと広く人に伝えたいという思いから、このたび本という形にまとめることにした次第です。


この本について

 この本は、そのブログで書きなぐった内容を「もっと分かりやすい順番で」「もっと身近な所から」「もっと理解しやすく」再編集したものです。
 実は、本当ならもっと長くなる予定でした。ですが、みなさんのお手もとに「より早く『モト』の話を届けたい」という思いもありましたので、ひとまずこの一冊を早く世に出すことを目標に書いてきました。デイケアでの訓練や、障害者向けの作業所で働きながら、合間合間をぬって毎日コツコツと書いてきましたが、今はようやく完成して一安心というところです。

 「おわりに」の冒頭で「僕の話を信じないとこ」と念押しをしましたけれど、それでもこの「モトの話」の中に、みなさんがご自身の人生の苦しみを少しでも和らげる「何か」を見つけて下さったら、著者として幸甚の極みです。

 最後になりましたが、この本を世に送り出すお手伝いをして下さった全てのみなさまに感謝を込めて。モトがいっぱいありますように!


2020年2月7日

( 糸冬 )

「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)