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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第16回)

39日目か?

もういやだ。まだ階段が続いている。

最後の圧縮水分は昨日平らげてしまった。渇きと空腹に勝てなかった。

一体いつまで続くんだ。コムログもゲインに切り替えてしまって、表示が見えないから時間も計れない。ケミカルライトもケチりケチり使っているが、これが最後の一本だ。

明かりが無くなったらどうすればいいんだ・・・今から上に戻ったって、もう遅い。それに、上がったところで、待っているのは食料も水も無い砂漠の廃墟だけだ。

そもそも、この階段は非常出口ではなかったのではないか?
地下から上に向かって移動するためのものとしてはナンセンスな長さだ。非常事態の際にこの階段で地上を目指したとしても、確実に途中で力尽きて死んでしまうだろう。

とすると、これは上から下に向かって移動するために掘られた階段ということになるのだが・・・その目的は全くピンと来ない。私は今極端に疲れているし、腹も減っているし、喉も渇いているし、目は乾くし、汚れた皮膚はカサカサだし、服もボロボロだし・・・こんな状態でまともに思考が働くほうがよっぽどおかしい。これ以上の考察は無理だ。無意味だ。

ああ、どうすればいい? 『最後のあがき』もここまでだろうか・・・畜生、最期まで負けるものか。こうなったら、死の瞬間まで下り続けてやる。人が作ったものなら、人が底にたどり着けないはずが無いではないか。その場所に一体何があるのか見極め・・・

おおおおおお! また地震・・・ああ! ああうおお・・・

ガゴン、ガラガラカラ、ザザザ・・・ゴゴゴゴゴ 

【異常事態検出の為記録を中断しました】



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)