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炎の瞳の少女

私は忌み子として生まれてきた。

納屋に十年以上閉じ込められていた私にとって、この不吉とされる紅い月夜は僥倖だった。
なぜなら皆家に閉じ籠り、この納屋の鍵を確かめなかったからだ。
いつもは重たい錠前がついている分厚い戸を押し開け、外の世界へ足を踏み出した。
紅い月が私の細い腕を、透き通った肌を、白い髪を優しく照らす。旅立ちを祝福するように。
私は歩き出す。この村を出よう、そしてどこか遠くへと……。

突然腕を掴まれ私は物陰に投げ出された。目を開けると頭上に見るからに粗暴な男の顔があった。
「騒ぐんじゃねえぞ、小娘」
男のその言葉にこれまでの記憶が頭をよぎる。人としての名もつけられず罵られ、打たれ、虐げられた日々。

……もう、私を好き勝手にはさせない!

私は睨み返す。その瞬間、瞳に炎が宿った。
男は声にもならない悲鳴を上げて燃え上がった。転げ回った後動かなくなったそれを背に再び歩き出す。

炎は既に村を焼き始めていた。

【続く】

スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。