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京都の「名前のないラーメン屋」で、入店から帰る瞬間まで感動が続いた話

看板がないのに行列ができていて、地図の上にはあるのに初見では見つけられないラーメン屋がある。

その名も、「名前のないラーメン屋」

京都の三条にある、デートでも行ける雰囲気なのにうまいと評判の店だ。そして本当に名前がない。看板もない。名前のないラーメン屋としか呼べないのだ。

事前情報はほとんどなく初めて訪れた私は、そこで人の導線が考え抜かれたお店のデザインに感動した。

味はもちろん良いのだが(わかりやすい指標でいえば、食べログは星3.6)、スマートな店内に驚かされ続けたので、今日は興奮気味に語ってしまおうと思う。


まずはカフェかと勘違いしそうになる店内はこんな感じ。

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ラーメン屋といえば、人がぎちぎちに詰まっている脂と湯気に包まれた空間じゃないの。カウンターで座る真後ろまで人が待っていて、無言の圧を感じながらかきこむものかと思っていた私には、この爽やかさは異次元だった。

初めてきたら、間違えてカフェに来てしまったかなと思うだろう。食券機が目に入らなければ、コーヒーの香りがしてきたと錯覚しそうなのだ。実際、私たちの周りもほぼ8割がカップルだった。しかもちょっと綺麗なカッコをした子たちもいる。

さて、そんなラーメン屋のラーメンってどうなのよ、と思っているあなたに、まずはラーメンのご紹介。

こちら鶏モモから抽出されたあっさりめの淡麗スープ、味玉トッピング

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透き通るスープが美しい。そして淡麗というけれどしっかりダシがきいていて、普段はあまりラーメンをガッツリ食べることのない私でも脳が欲しがるこのお味。

他には、ラーメンは濃厚スープ(鶏ガラを煮込んだ)と重層スープ(淡麗スープと濃厚スープのブレンド)から選べる。つけ麺やカレーつけ麺もあるので、隣の人の食べているものがまた気になっちゃって仕方ない(食いしん坊)。

連れの重層スープも我慢出来ず一口もらったが、こちらはまたグッとコクがあって美味しい。麺に絡みつく感じ。

麺も、喉ごしがいい。程よく歯応えのあるストレート麺で、大満足。

チャーシューは安定でしっかり美味しい。さらに、ひとつだけ乗っているミニトマトのさっぱり感が食欲を沸かせる。

ほんの数分で、一気に食べ終えてしまった気がする。はあ、美味しかった。


・・・と、ここまでは完全に食レポになってしまったので、感動した「デザイン」について話したい。

ベンチでの待ち時間、人はたくさん待っているのにきちんと秩序が保たれる設計になっているなあと思った。

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まず、地下へと外付けの階段で降りていくと、一本の通路が食券の販売機まで続いている。ちょうど一列に並ぶくらいの道幅しかない。

店内は余裕のある空間デザインになっているので、人がみっちり入っているという印象が一切ない

けれども、そういう「余裕ある空間」を作ろうとしたときに、その余白に人が秩序なく佇むことってよく起こる。

いくらきちんと列に並ぶことが習慣化されている人でも、一体どこに並んだらいいのかわからないからなんとなく空いている場所に佇んでみるとなりそうなのだ。

でも、通路が一本でそれ以外は明らかに段差がついているから、待つ場所ではないことを明確にしてくれる。

これくらいの人気店だったら、人の整理に手を焼きそうなのにそれをおしゃれなデザインでどうにかしているのは感動的だ。

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食券を買ったら、ベンチに座るのだけれど、これもいい具合に順番になっている。座ってしばらくすると、店員さんが食券をまとめて回収に来てくれた。

店員さんも、おしゃれカフェかバーで働いていそうないでたちだ。

自動的に列がきちんと進んでいるのを眺めているうちに、先頭のかた〜と呼ばれていざカウンターへ。

お水をセルフでとると、ごとんとおまちかねのラーメンがやってくる。

そしてここで、初心者の私は「あれ、お箸は?」となったのだが、それも私が驚いたデザインのひとつだ。

ラーメン屋さんのテーブルとは思えないようなコンクリ?石?の質感の机の上には、一切の余計なものは置いていない。代わりに、一人ひとりのお腹の位置に引き出しがついている。

そこに紙ナプキン、箸、爪楊枝、香辛料がきちんと入っているではないか。

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見栄えを損ねない上に、カウンターの反対の厨房側から出ずに机を拭ける。お箸や香辛料などをお客さんへの提供タイミングで気にしなくていい。定時でのチェックなどは必要かもしれないけれど、この仕掛けもあまりにスタイリッシュだった。

そして極め付けは、出口だ。

どうやら私は、ほとんどの建物は入り口と同じ位置から帰るものだという固定観念に囚われていたらしい。

ここでは、食べ終わったらカウンターの後ろの出口専用の扉から帰ることになっている。混み合って行列になっている入り口でお客さんとすれ違うことなく帰れるし、ましてや一列になっている通路を通らなくていいのだ。

狭い店内ですれ違うというストレスを感じなくていいし、お店側もそこで発生する時間のロスや管理しづらさを取り除けるのだろう。

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(実際に店の外まで行列ができている)

こうして店を出るまで、ラーメンの味とその洗練されたデザインとに打ちのめされていた。


そして何より、また食べたい。この文章を書いていて、体は東京に戻ってきてしまったというのに心は京都に向かっている気がする。

また行きたいお店なので、気になった方は是非行ってみてほしい。

あ〜〜ラーメン食べた〜〜い!

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