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カレーを作った。実家と同じ味がした。

一人暮らしで煮込み料理を作ると、何食もそればかり食べ続けることになるよ。カレーとかシチューとか肉じゃがとか、2日くらい食べることになるんだよ。

以前からそんな話はよく耳に入ってきて、だからなんとなく買ったカレールーは未開封のまま、私のキッチンで2ヶ月半を過ごしていました。

実家にいたころもカレーは月一回くらいで、それも父が食べたがるから。私自身カレーは好きですが、食べたいから作る!というほどの熱意もなかったのです。じゃがいも、にんじん、たまねぎは、それぞれの具材が別の料理に使われることが多く、オールスターを一堂に会そうと思うこともあまりありませんでした。

そんなわけで私の食卓にカレーが並ぶのは、疲れたとき用のレトルトカレーだけです。カレールーは放っておかれて随分と寂しい思いをしていたことだと思います。


そんな私ですが、あまりに大量のにんじんとじゃがいもとたまねぎとを同時に使いたいと思って、ついにカレーを作りました。

ルーは濃いめ。具は大きめ。

それが我が家流のカレーです。

具がゴロゴロしているのが好きなので、煮込みに任せてあまり小さく切りません。以前恋人には、もうちょっと小さくしたら?と申し訳無さそうに言われたこともあります。

でもこのスタイルが馴染んでいて、どうしても具材が一口には大きいままのカレーを作ってしまいます。そしてルーはとびきり濃いめ。



実家では2種類のルーをブレンドしてみたり、大きな鍋に10人前を作ります。でも小さな鍋で作れるのはせいぜい3人か4人前です。

そんな小さなお鍋に、無理やり5人前のルーを溶かし込んでこっくりさせます。最初から2日めのカレーのような濃さなんです。


特別難しくもない工程はもう十分に馴染んでいて、何かを考えるでもなく無心で煮込み続けました。

そしてふと気がつくと、そこは実家とおんなじ匂いになっていたのです。

夕食がカレーの日は、リビングいっぱいにこの匂いが漂っていました。それで家族5人で食卓を囲んでいたときも、ごろごろとした野菜があふれそうになるくらいお皿にもられていました。

懐かしいな。

そんな感情がもう現れたことに少し驚きます。カレーの匂いなんて、誰が作っても同じルーなら似たようなものだろうに。

食べてみると、たしかに、実家の味です。

本当ならもっとにんにくがたくさん入っているんだけれど、それはなんとなく人と会うかもしれない日には避けたいから入れていません。

まず一番に妹の顔が浮かんできて、自分でも家族が好きなんだなあと感心するほどでした。

もしかしたら、もう私が実家でカレーを食べることなんて一生に何度もないのかもしれません。

もし家族ができたら、私の作るものが誰かの実家の味になっていくのかもしれません。


そう思ったらごくごくありふれた市販のルーが、なんだかとても愛おしいもののように思えてきました。

またいつかカレーを作ったら、私は実家を、家族を思い出すんでしょう。

今回は3食連続だったから、しばらくはいいけれど。




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