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「キャリアデザインのための企業法務入門」を読んで

いちおう法学部出身で、勤め先でも法務的な役割を担っているのですが、社会人2年目になって気づいたことがあります。

実務内で学べることだけでは、圧倒的に知識が追いつかない

社会人って、いつ新しい知識を得ているんでしょう。

通常の業務で忙しいのに、どんなふうに時間を作れば基本的な基盤となる知識を身につけた上で、時代に即したアップデートを加えていくことができるんでしょう。

そんな疑問は上司を見ていてすぐに解消されました。プライベートの時間にも、幅広い勉強をしているのだと話の端々から気づいたのです。

そして実際にやってみようとするとなんと難しいことか。そういえばわたしの他社で働く友人たちも、時間外にめちゃくちゃ勉強していたなあと思い出しました。社会人の学びって、相当意識して時間を捻出しないと難しいですよね。



まずは本を読んでみよう。
ということで今回は松尾剛行氏の「キャリアデザインのための企業法務入門」を紹介します。

というか、読んだだけでは右から左に流れそうなので、この場でアウトプットする機会をみなさんにいただきたいくらいの気持ちです。


さて、この本は基本的には大学で法学を学ぶ学生や、若手の法務担当者を対象にしています。まさにわたし向け。

企業法務とは何かから、契約について、BtoC取引、企業間取引、紛争解決、知的財産権、労働法務、スタートアップ法務、ガバナンス、テクノロジーと法務の業務、公共政策法務、と非常に幅広い内容をカバーしています。

中でもわたしは自分に関係の深い「契約の総論各論」と「企業間取引」について関心がありました。

加えて、キャリアデザインのためのというタイトルになっているように、今後テクノロジーが発展していったら法務人材はどうやって存在価値をアピールすることができるのかも、本書の見どころの一つだと思います。

そもそも法務は、ただ何でもかんでもリスク提示をしてビジネスを妨げる煙たい役割ではありません。リスクを管理しながら長期的に価値あるビジネス展開にするアシストを行うナビゲーション機能を有しているのです。もちろん法律を守るためにいけないことにはNOというガーディアン機能も持っていて、この二つが法務の役割と言えます。

そしてそれには取引の内容の理解も必須だということで、わたしは自分の現在の理解状況に危機感も持ちました。

もちろん自社の雛形等、契約の知識自体がまだまだ不足しているので、それを強化することは必須なのですが、ビジネスに関する基本的な知識も欠けているため、もっとそれを知るための積極的なコミュニケーションが必要だと感じました。

そして、契約を締結する時には、結局双方の力関係が重要になるということは日々の業務で認識しているところではありましたが、しっかり明文化されていました。

その取引(契約)をしないといけないと焦っている方が、基本的には交渉力が弱くなってしまう。

当然のことかもしれませんが、選択権がある方が、有利な条件を取れますし、それが力関係につながると言えます。単に大きな企業だから有利というだけではなく、どうしてもそこの製品・技術じゃないといけない理由があったら交渉に妥協せざるを得ない時もあるということです。

そのビジネスの判断となるポイントも、きちんと事業部門の担当者に説明できなくてはいけないと改めて感じました。


また、興味深かった点として、わたしの会社でも導入を検討しているリーガルテックの話題です。

契約書のチェックや管理等をしてくれる技術サービスがあるのですが、その導入までの壁がしっかり書かれていて非常に納得してしまいました。

1)コストの壁、2)セキュリティーの壁、3)導入効果の壁の3つの導入障壁を提示しています。

確かに、と思います。そもそもコストとセキュリティーに関しては導入検証に入る前に上を納得させなくてはいけません。セキュリティーに関してはサービスを選べばそれなりに担保できて、あとはリスクヘッジとコスト増加の問題になるのかなと。

一方で細かな契約チェックに割いている人的コストってそれなりに膨大なので、そこで例えば検証の許可をもらえたとして、導入効果の壁にぶち当たるのです。

今後テクノロジーとある程度共存していかないといけない部門でもあると強く感じているため、その効果を自社で最大限発揮でき(かつ効果を数値にもざっくり落とす)工夫が必要だなと感じました。

そしてテクノロジーによって置き換えられた仕事や、社内弁護士によって分担された仕事がなくなった後、自分ができるものが何かを今から考えておかないとというキャリアへの思考機会ともなりました。

よきビジネスパーソンであること(他部門との協力や専門知識を持つ相談相手として信頼関係を築くこと)の重要性を感じて、明日からの仕事にも繋げていきたいと思えました。

まさに企業法務の入り口に立っている方には各分野の基本をわかりやすく説明してくれる本書はおすすめです。

まさか仕事で法律に関わるとは思わずに学生時代を過ごしたわたしですが、こういう本にその時出会っていたら具体的なイメージをした上で授業の選択なんかをできたのかな〜とも思ったりするのでした。


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