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昨年の今日、私は今の会社の内定をもらった。

12月28日最終営業日。池尻大橋の駅まで向かう道端で、白い息を吐きながら電話を取りました。

この1年で私の人生は大きく変わりました。もしかしたら今頃海外の大学に行っていたかもしれない私は、今年の4月から新入社員として日本の企業で働き始めました。自分が働くなんて思ってもいなかったのに、去年の10月から就活を始め、もう年の瀬が迫った12月の最終営業日に内定の通知の電話を受け取りました。

電話で私に結果を伝えてくれた若いお姉さんの声。これで良い年を迎えてくださいね。そう言ってくれた言葉の温かさが道端の寒さとは対照的で、私の体に染みました。

2020年の3月に大学を卒業し、その後の進路として描いていたのはニュージーランドの大学院への留学。ところがちょうどコロナが流行りはじめました。最初は半年待てば行けるかと楽観視していましたがそうもいかなくなったので、秋から就活をはじめたのでした。

大学にいた頃は、みんな業界は違えど名のある企業からいくつも声がかかるように見えました。実際は就活って大変なものだとわかっていましたが、疲れた、大変だ、とスーツで顔を突き合わせられる相手が私も欲しかったのです。私の季節外れの就活は、そもそもの選択肢が限りなく少なくなっていました。ハローワークにも行きましたが、12月に入ったときには手持ちの企業は1社のみでした。

勉強すると決めていた、そして海外に行きたかった私に、いろんな人がいろんな言葉をかけてくれました。その当時同じ時期に就活をしている知り合いなんて1人もいない中、私は確かに怯えていました。

何にも所属していないということ、確約された未来がないこと、自分は今自分の持っている力以外の何物でもないことを、フリーターをしているその期間に学んだからです。組織に所属していれば安定できるのだとは思いません。けれども、自分が何かをできる場所があること、自分の生活が自分で営めること、そんな当たり前のように見えていた毎日を失った怖さが私に就活をする必要性を与えていました。

仕事はやってみると面白いものでした。もともと人との距離感をあれこれと考えすぎる私には、リモートワークでみんなが不器用なコミニュケーションをとる環境がちょうど良かったようでした。

私は今、日系企業で、契約やコンプライアンスを担当しています。自分では海外に留学した時から、日系の大企業なんて堅苦しそうな環境は自分には合わないと思っていたのに。

自分で仕事する場所を選べて裁量権もたくさんあって。そんな環境を求めて学生時代にはベンチャー企業でインターンまでしました。けれども社員が20名ほどのベンチャー企業で2社、それぞれ1年半ずつインターンをしたところ、私は企業の文化やある程度整った地盤があるということが心地よさにつながるとわかりました。簡単に言えば、社員同士が家族のようなアットホームな場ではなく、それぞれが割り切って会社と言う環境に籍を置いているくらいがいいと思ったのでした。

もう一つ気づいたことがあります。それが大企業が与えられるインパクトの大きさでした。何かを動かしたいと思った時に、アクセスできる資源の多さ、社会に与えられるもともと持っているインパクトの大きさ。自分が最初に見たい景色が何なのかを、インターンを通して改めて考えられたのだと思います。

私が今の会社を選んだ理由は、海外に留学したかった私がなんとか自分の人生に爪痕を残そうとしたからでした。私は海外では幼児期からの人間の発達を勉強しようとしていました。好きなことを素直に好きと大きな声で言えないような、そんな私たちが生きるこの社会のどこか閉鎖的な環境、自信のなさを変えなくてはいけないと思っています。日本に漂う空気が、どこか硬く暗いものなのは、ありのままで生きる姿やそうしたい自分自身の意思を、認めてあげづらいからだと思っています。

だから変革しようとしている大企業に入りました。この規模の歴史ある日本企業が、伝統を持ちつつ変わることができたなら、これからの日本のロールモデルになれると思ったからです。

実際に入社してみたら、今まで思い描いていた「会社」とはかなり雰囲気の異なるものでした。社内のSNSで自由に議論される内容や、若手が立ち上げている沢山の企画。自分でも手を上げれば様々な挑戦ができる環境に、むしろ気後れするほどでした。

けれど、きっとここなら面白く風通しのいい仕事ができると感じられているのも事実です。留学にいけなくなったというと同情してくれる人は多いです。でも、前にしか進まない時間をもう私は進んでしまっているから、そこからどうしたいのかを考えるしかないんです。仕事をしていて楽しいと思える環境を自分で選ぶことができたことを、去年ひとりで歯を食いしばりながら就活をしてくれた自分に感謝します。そして人に恵まれたことは本当にありがたいことです。

私の人生がまた大きく動き出した2021年。これからは慣れて思考停止になることがないよう、挑戦する好奇心を持ち続ける社会人でありたいと思います。


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