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星間飛行

あなたの気持ちがわからない

私の家族

うちは私と妻と猫が2頭?の4人家族だ。
猫について詳細を書くと、ロシアンブルーの6歳と、ラグドールの6ヶ月なるかならないかの2頭が家中飛び回っている。
今朝がた、ラグドールの子を避妊手術に連れて行った。事前に予約を入れておいて、朝起きたらケージに入ってもらって、車で開院時間と同時くらいに病院についた。

ラグドールの彼女は図太い神経をお持ちで、ロシアンブルーの彼と比べる病院での態度はまるで違う。ロシアンブルーの彼はケージを見た瞬間にパニック、病院につけばふるふると小刻みに震えて、もうあかんのや僕は、みたいな顔でこっちをみてくる。
かたやラグドールの彼女は、ケージには眠そうに入り、車の音が少し怖かったのかむーんむーんと少し喋り、病院についてからはひたすら人と動物の往来を興味深そうに目で追っていた。

また明日

簡単な血液検査をしてもらい、全く異常がなく(私の肝臓の数値の方が問題だなぁと心が喋った)避妊手術の受け入れを頂いた。
血液検査の結果を私が聞いている間も、彼女はむーんとも言わずに眠そうにその大きくて蒼い目を「何やってんのお前」みたいな感じで私の方に向けていた。
それでは、と、ケージごと彼女が院内に連れられていく。
「大丈夫、また明日迎えに来るからゆっくりしような」みたいなことを言ったけれど、多分彼女はよくわかっていなかった。  
わかっていない顔のまま、奥の方に連れられていった。

彼女のいる家

先述の通り彼女は半年くらい前からうちにいて、成長期の勢いも相まりかなり存在感を出していた。
飯の時間になれば自分に割り当てられた以外の飯も奪い食い、家中をぷるるるるんと言いながら駆け回りロシアンブルーの彼にちょっかいを出しキレられ、寝たい時に寝る。起きたい時に起きて人間を起こす。実に猫らしい。
ロシアンブルーの彼は、ずーっと人間と暮らしてきたこともあり彼女よりずっと繊細で話を聞いてくれて打たれ弱く寂しがりやだ。うざそうながらもラグドールの相手もちゃんとする。
良いとか悪いとかの話ではなく性格として。
損な役回りだなと、似ている性格の私も思う。

ラグドールの彼女がうちにきてから半年ほど経つがこの2頭の関係性はかなり安定してきたほうだと思う。
たまに遊び喧嘩ムーブみたいなのもしてるけれど夜は一緒に寝ているし、お互いをやっと同胞と認めている感は出てきた。
飯も一緒に食う。水も一緒に飲む。おやつは奪い合わない程度に。

残念ながら彼らの意見は聞けないけれど。
聞けないからこそ最善を尽くす責が人間にはある。

彼女のいない家

そうして、初めてラグドールの彼女がいない時間ができあがった。
私と妻とロシアンブルーの彼。
この3人は実に6年近く日々を紡いできた。
人間たちが喧嘩してる時にびびって隅に逃げたり、地震が来た時は意味がわかっていなかったり、人間の食べ物で食うのはパンのカスだけだったり(それ以外は排泄物を隠すムーブをする)、僕がメンタル的にやられていたときは何を知ってるのかは知らんが一緒に寝てくれた。
去年末に引っ越した新しい家も3人で一緒にゆっくり慣れていった。

その3人の時間が、ふいに戻ってきた。
まずラグドールの彼女はぷるるるるとかうにゃあんとかずーっと言いながら走り回っているので、彼女がいないことで単純に静かだった。

ロシアンブルーの彼も、ちょっかいかけられたり喧嘩をふっかけてくる相手がいなくて穏やかな感じがするり

でももう、なんか違うなあ。
もちろん人間たちは調子が狂う。
懐かしいなぁという気持ちにさえなるし、懐かしい気持ちはその人(猫?)を思う証明なわけなので、
砕けば少しさみしい。

加えてロシアンブルーの彼も違和感は感じている、かもしれない。
キョロキョロしたり、落ち着かない動きをしたり、人間にくっついてきたり。
人間にくっつくのは普段ラグドールの彼女が人間にべったりなので、ロシアンブルーの彼は普段できないこのタイミングでやってる、いわゆる甘えともることもできるけど、そんなに昔からベタベタというわけでもない。
結局はいつもラグドールの彼女と一緒に寝ているベッドに落ち着いた。
彼女の存在がそこにある気がした。

結局

私は人間なので妻とは会話ができる。
ロシアンブルーの彼(いわし)はどう思っているんだろうね、とかラグドールの彼女(しろみ)は大丈夫かな、など。
そして人間はしろみが無事にこの家に帰ってくることを確信している。
この記事を書いている今晩は少しさみしいが、明日の朝には迎えにいって、テンションの下がったしろみを皆で囲うのだ。無事に終わってよかったねと、ちゅーるとかをあげてみんなでベッドで寝る未来が見えているし信じている。

いわしはどうか。
そもそもしろみがいなくなっていることすら気づいてないかもしれない。
数日はしろみのことを覚えているけれどまぁ数ヶ月もすれば忘れるかもしれない。
いなくなってせいせいしているかもしれない。
逆になんであいつおらんくなったんや、心配や、などと気にかけているかもしれない(お兄さんなので)

彼と私たちは言葉が通じない。
違う惑星の宇宙人同士みたいな人間と猫のコミュニケーション。

それでも6年一緒に暮らしてきた。
例えば1年一緒に暮らした人間より、6年暮らした彼の方が私たちのことを知っていると信じたい。

彼は彼女と一緒に寝る(ことがある)ベッドに今寝ている。
人間と寝たい時は人間の方に来ることもあるが、今日はそのベッドで寝ている。
彼女が入れるだけのスペースを開けて寝ている。
僕や妻にはその真意は全く分からないけれど、
少しだけ彼もさみしいのかなあと思ってみたりする。
でももしかしたらうるさいのが居なくなってゆっくりできると思ってるかもしれない。
でもなんか少しいつもより静かでつまらんな、とおもってるかもしれない。

泡沫の時間に思った宇宙人の話。

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