見出し画像

洗濯機はどこに置くのでしょうか? 2021年版

無印良品は、暮らしの変化に呼応して、室内空間を編集できるように、家全体を「一室空間」として、固定された壁で家を仕切ってしまうことをなるべく避けたい=「脱・間取り」を提唱しています。
しかし、日々の暮らしのルーティーンに深く関わり、家事動線にも大きく影響する水まわり(キッチンや浴室・化粧室、トイレなど)は機能上固定せざるをえないので、その配置は慎重に検討する必要があります。

そこで、この水まわりを含めた、自分の家での日常の行動がどこで何を使って行われるかを整理してみました。

画像1

図-1

こうしてみると、例えば「入浴」は必ず浴室で行われますが、「くつろぐ」のは居間だけではなく、食堂や寝室であったり、場合によっては浴室やトイレということもあるでしょう。どこで何をするかは、人によって異なるでしょうし、同じ人であってもそのときの気分・状況によっても変わってくるはずです。
図-1では、そのように必ずしも行動と場所が1対1ではないものは点線で結んでいます。

これでは少し複雑すぎるので、行動を「家事」に絞ってみます。

画像2

図-2

こうして見ると、家事のうち調理は台所と決まっていますが、「洗濯」に関わる行動やモノは、場所が固定されていないことがわかります。人の個性や状況によって、いろいろなケースが考えられるということです。
「洗濯→干す→アイロンがけ」という流れから考えると、これらを1ヶ所でできるのが理想と思われます。ところが洗濯機は、最近は脱衣室と一体化された洗面化粧室に置かれていることが多く、アイロンがけをするにはスペースが足りません。

画像3

そこで、アイロンがけは食堂のテーブルや、居間の空きスペースにアイロン台を出して行う、ということが多いのではないでしょうか。さらにアイロンがけが終わった衣服をたたむわけですが、それは居間のソファや、寝室のベッドの上だったりするので、図-2のように行動が1ヶ所に絞られていないことを表す点線が多くなってしまうのです。

もともと日本人の暮らし方には、畳という一つの空間を多機能に使う、という素晴らしい知恵があるのですが、現代の暮らしでは、やはり家事動線はシンプルに短い方が良さそうです。
そう考えると、洗濯機は洗面化粧室に置く、というのが一般家庭では半ば当たり前のようになっていますが、本当にそれでよいのか?という疑問が湧いてきます。
また、そもそも洗面化粧室は家族以外の来客も使う場所ですので、そこに脱いだ衣類を置き、洗濯をするという極めてプライベートな行為を行うのは少々気が引ける気もします。

画像4

そこで、「洗濯機はどこに置く?」となるわけです(笑)。
洗面化粧室以外に置くとすると、「洗濯」の次の「干す」という行為の場所に近いベランダやテラス、あるいはほかの家事(料理)と同時にこなせるように台所、というケースもあると思います。しかしこれも外に洗濯機を置くのは洗濯機の痛みも早いですし、やはり不便です。台所に置くのは家事動線的にはかなり合理的ですが、食堂や居間と一体になっているプランではやはり家族以外の目に触れますし、料理と汚れた衣類が共存することに抵抗のある方もいるでしょう。

洗濯機をどこに置くべきか、もう少しバリエーションを増やすために、
図-2をさらに「洗濯」に絞り、「あったらいいな」というスペースを加えて整理してみました(図-3)。

画像5

図-3

洗濯、干す、アイロンがけ、という行動のためのスペースを設けることで、ずいぶんとすっきりしてきました。また、それぞれのスペースを近接させれば家事動線も合理的になりそうです。

画像6

そうはいっても、そんなに潤沢にスペースは取れない、というのが現実かもしれません。
そこで、わずか22.3坪の平屋、「陽の家」でプランを考えてみました。

画像7

画像8

洗面化粧室は、洗濯・脱衣室と独立させました。機能を単一化しているので少しスペースは絞っています。浴室との間に「洗濯・脱衣室」を設けることで、誰にも気兼ねなく(笑)脱衣し、洗濯機をまわせます。
その「洗濯・脱衣室」と隣接して「ユーティリティ 兼 物干し部屋 兼 下着クロゼット」を設けてみました。ここで洗濯の終わった衣類を天吊り式物干しに室内干しして、アイロンをかけて、さらに下着を吊り棚に収納できるようにすれば、しまうのも着替えるのも楽になりそうです。
つまり、図-3の「あったらいいな」スペースをぎゅっと凝縮してみたわけです。

また、水まわりを家の中央にもってくることで、「帰宅してすぐに手を洗い、服を脱いでシャワーを浴びる」という、コロナ禍以降の新しい暮らし動線にも対応できそうです。
「陽の家」のような平屋の場合は、「水まわり+あったらいいなスペース」を家の中央に設けることで、家事動線も、浴室と寝室のアクセスもすっきりとまとまる、このような案もあり得るのではないでしょうか。
2階建ての場合は、浴室、キッチン、寝室、居間の組み合わせが1階と2階とで立体的になるので、洗濯機を置く場所=家事動線はより多くのバリエーションが考えられそうです。

みなさんの家では、洗濯機はどこに置かれていますか? あるいはどこに置きたいですか?
ぜひご意見、ご感想をお寄せください。