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IoTスマートホームのサービス開始に失敗した話

プロジェクトの立ち上げ

私は、情報システム部で社内SEをしている山田だ。

本業に追われる中、突然、会社から指示が下りた。「今流行りのIoTで、わが社独自のスマートホームを作って販売しろ!」というものだ。

情報システム部内で数人が集められ、本業と兼任でプロジェクトを立ち上げることになった。

社内には、IoTに詳しい人材はいない。まずは情報収集をする。

「……あれ?」

情報収集をしている過程で気づいた。このプロジェクトには、前任者がいたようだ。しかし、すでに転職してしまったらしい。前任者が何をやろうとしていたのか、なぜ辞めたのか、今はもうわからない。

とりあえず、手探りで進めることなった。

この時点で、なにやら不吉な予感がしたのは言うまでもない。

新技術、IoTの甘い香り

情報システム部内は、みんな乗り気だった。

「新技術」「IoT」「スマートホーム」

IT業界で活動するエンジニアにとっては、大変、興味が沸いてくる流行語だった。

IoTは、ユーザの生活が一変するような内容だった。とても素晴らしい技術で溢れていた。IoT機器の種類も豊富で、皆の想像力を掻き立てるには十分だった。

「どんな未来にしたい?」

そんな話をしながら、皆で様々な未来を出し合った。楽しい時間だった。

導入する機器

調べてみると、色んなベンダーが、たくさんのIoT機器を出していた。そこで、プロジェクトメンバーが、それぞれ気になった機器をピックアップすることになった。

導入する機器は次の8機種。

スマートミラー:鏡。鏡面上に画面を表示したり、タッチして操作することができる。

スマートリモコン:スマホからIoT機器や既存の電化製品(TVやエアコン)を操作することができる。外出先からも操作可能。

・スマートライト:スマートリモコンに対応した室内灯。

スマートカーテン:スマートリモコンに対応した自動開閉カーテン。

スマートスピーカー:アレクサ。スマホだけでなく、声でもスマートリモコンを動かせる。

スマートロック:ドア鍵。室外からの解錠ができる。ワンタイムパスワードも発行できる。

環境センサー:室内の気温、室温など検知。住み心地がわかるというもの。

・管理アプリ:環境センサーの情報を表示。スマートリモコンやその他IoT機器の操作ができる。

離散するプロジェクト体制

IoT機器は大きく2種類に分けられた。理由は、機器の取付に、施工が必要かどうかだった。その為、機器ごとに管理部門を分けることになった。

施工が不要(情報システム部)
 スマートミラー、スマートリモコン、スマートスピーカー、管理アプリ

施工が必要(設計部)
 スマートライト、スマートロック、スマートカーテン、環境センサー

施工が必要な場合、(よくわかってないが)建築に関わる法律や、耐火テストなどをクリアしないといけないらしい。

その後、IoT機器の管理部門の他に、広報部、商品企画部、法務部、営業部、等々が入ってきて、大所帯になってきた。

プロジェクトのエントロピーが、徐々に増大していった。

主管部門はどこ?

情報システム部が主体でプロジェクトを立ち上げたが、管理部門を分けたことで、どこがプロジェクトの主管部門なのか良く分からなくなった。

また、兼任の関係者が多すぎて、プロジェクトの定例会は誰かが必ず欠席していた。部門が部門を会議招集しても、強制力はなく、人を集められなかった。

設計部「情報システム部はなにやってるの?」

情報システム部「設計部はどんな状況なの?」

その他の部門「何も聞いてません」

その結果、それぞれの部門が独自に動き始め、プロジェクトに暗雲が立ち込めるのだった。

コンセプトは皆の心の中に

弊社独自のスマートホームに対して、コンセプトを決めることになった。

ただ、IoT機器を欲張って、8機種も導入しようとした為、その弊害が現れた。単純に、IoT機器でユーザの生活が一変すると思っていたが、そもそもの部分で行き詰ったのだ。

「だれの?どこの?なんの?どんな生活が一変するの?」

8機種もあってターゲットが絞れない。さらに、メンバーが各々考えた未来のイメージが掛け合わされて、収拾がつかなくなった。コンセプトの前に、手段を決めてしまった典型的な失敗だ。

誰かが言った。

「みんなの、色んな生活が、変わるでいいんじゃない?」

「これはあかん」と、私は強く思ったのだった。

ーコンセプトは皆の心の中にー

役員のこだわり

役員はスマートミラーを気に入っていた。8機種の中でも、一番食いついてきた。何度も、「うちの嫁さんに使ってもらいたい」と言っていた。

「手鏡や化粧鏡がいい。洗面台に設置するのもいいな。待てよ、姿見もいいな。あ!お風呂の中の鏡がスマートミラーってのも面白いな!」

どれだよ。

ここでも、コンセプトは決まらないまま、プロジェクトは進んでいく。

実証事件

IoT機器の実証実験を行うことになった。8機器を社員に配って、自宅で実証してもらう方針だ。そこで様々な事件が起こった。事件は、次のようなものだった。

膨れ上がる予算

ベンダーの既製品を集めただけなので、弊社のブランド色を出す為に、カスタマイズを行うことになった。

IoT機器8機種ごとに、こまめに入るシステム改修。積もる費用。予算使用を上程するのは、それぞれの部門。

全体感がわからない。いくらかかるかわからない。そして、いつ終わるか分からない。蓋を開けたら、実証実験に〇〇〇〇万円。

この後、役員が激怒するまでに、数カ月を要した。

あれくさぁぁぁぁぁん!!!!

実証事件が始まった。まずは、スマートスピーカーからスマートリモコンを経由して、家電を動かしてみた。

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仕事の問題点への対応方法を、今までの経験を踏まえてご紹介します。効率の良い進め方や、職場の生命維持方法など、ぜひ参考にしてください。■おま…

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むぎ

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