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◆◆心折れる時もある。折れてみるのも良い。◆◆

火事当日は駆けつけてくれた仲間たちが結成してくれた「ムガルカフェ援護チーム」に勇気をいただき、2日目には再建の為の場所情報や励ましのお言葉をあらゆる方からたくさんいただいて気持ちを引き締めて、3日目に火事後初めて被災したお店に入って、全てが水没した現状を目の当たりにした。

その夜、カーンくんの心が折れた。

「もう一度インド料理屋をやりたいのか、やれるのか、わからない。」そう言ったきり、力なく寝室へ行き、頭から布団をかぶって丸まってしまった。

私はというと、壊れてしまったムガルカフェを見るのはとても悲しかったけれど、被害状況を確認に来た保険会社の方が注意深く丁寧に現場を調べた上で、どういう風に壊れてしまっているのかを分かりやすい説明と共に「全損です」と伝えてくださったおかげで、「起きてしまったものは嘆いてもしょうがない。片付けから新しいお店を作り上げるまで、相当パワーの要る道のりかもしれないけれど、また、笑顔が生まれる場所を作るぞ。」という気持ちでいられたのだけど。

布団をかぶったまま、ウンともスンとも言わなくなった彼を眺めながら、考えた。

3年くらい前に、巣鴨の路上で小さな屋台として始まったムガルカフェ。落ち込んだ気持ちを横に置いて、ここから今、パワーを絞り出してまた一から作っていくって、気持ちがついていかないのかもしれない。

(巣鴨の路上で週一回だけ出現する屋台としてスタートしたムガルカフェ。)


私は、出来ることならまたムガルカフェで大好きな人たちと再会をしたいけれど、それはあくまでも私の気持ち。

もしもカーンくんが「もうインド料理屋さんそのものをやりたくない」という答えを出すとしたら、その気持ちを一番大切に、家族として私に出来ることを見つけよう。

でもその前に、「やりたくない」のか「やりたいけれど、再スタートまでの道のりを乗り越えられるか自信がないからやりたくない」のか、それともそれ以外の思いがあるのか、そこだけは急かさずに彼の口から出る言葉を待とう。と思った。

その夜は、私にとってとても長い夜だった。

目の前でふさぎ込んでしまったカーンくんの気持ちを最優先にしよう、彼が言葉を発するのを待とう、と覚悟を決めたものの、その間もムガルカフェを応援してくださるメッセージやアドバイス、色々なご提案が届く。

ついには、Facebookの中で「ムガルカフェが大好きだ」というコミュニティまで作ってくださった方がいて、そこにまた沢山の応援やはげましの声が届いていた。

(火事の後にFacebookで立ち上がった「ムガルカフェが大好きだ!!」というコミュニティ。...泣ける。)

そういうアクションにとても感謝を感じながらも、もしかしたら「ムガルカフェを再開しないことになりました、応援してくださったにも関わらず、申し訳ございません」とおひとりおひとりにお詫びをするパターンも生まれるかもしれない。とやるせないような焦りが時々沸き上がっては、「その時は、その時。どんなパターンが来ても、肝心のカーンくんの気持ちを大切にした上で、誠意を尽くそう。」と、自分を奮い立たせる。そんな夜を過ごした。

長い夜だった、本当に。

この後、丸1日かけて沈み込んでいたカーンくんは、とある場所で、とても彼らしく前を向くきっかけに遭遇をする。

何がカーンさんの気持ちを前へと向かわせたか。

隙間なく丸まったお布団のかたまり(カーンくん)の、中身を想像してみたりした。


続きます。


最高に美味しいビリヤニと温かい笑顔が集まるムガルカフェをもう一度作ります。応援よろしくお願いいたします!