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ゲームクリエイターへの6歩目

無知すぎた自分

CROSSにゲーム内広告を掲載しようとしたら、依頼したC社の製作チームが解散状態だったことは完全に誤算でした。
広告の実装と同時に、iOSのみの対応だったCROSSをAndoridにも対応させようとC社に掛け合ったのですが、開発チームが解散していたため引き継ぎもうまくいっておらず、これは任せるのは無理だなと断念。結局はまたクラウドワークスで新たな依頼をかけたのです。

その依頼にもある会社が名乗りをあげてくれたので、見積もりのためにソースをお見せしたのですが、コードにかなり癖がある上にコメントも全部英語で独特なので、Andoridに対応させるのはかなり手間がかかるだろう、とのことでした。そしてこのように言われたのです。

「Unityで作られていたらもっと簡単なんですけどね」

Unity...それは生まれて初めて聞いた言葉でした。
ご存知の通りUnityは無料で使えて3Dにも対応した高性能のゲームエンジンです。
ですが当時の私はゲーム製作はプログラムだけでできるものだと思っており、製作を支援するためのゲームエンジンという存在はそれまで知りませんでした。そしてCROSSはCocos2d-xというゲームエンジンで作られていたことや、cocos2d-xだとマルチプラットフォーム対応が大変だということもこの時初めて知りました。
(結局、広告表示はお願いできましたが、Androidでのリリースは十数万円の費用がかかるということで泣く泣く諦めました)

CROSSの発注時、費用や納期のことばかりに気を取られ、何のゲームエンジンで作られるかなんて気にもかけていませんでした。
私はゲーム製作についてあまりにも無知過ぎたのです。

製作スタンスを見直す

私はCROSSをリリースしたことでゲームを作ったつもりでいましたが、それは大きな勘違いでした。
CROSSでの私のスタンスは、お金を払い要望だけ言って理想のモノを作ってもらうというもの。

でも、それは自分でモノを作ったとは言いません。

例えば、自分の理想の家を建ててもらうためには一般的に建設会社に相談します。建設会社に建築費を払って希望のプランを伝える、そのような立場を建て主と呼びます。建て主も知り合いに「家を建てたよ」とは言いますが「自分で家を建てたよ」とは言いません。なぜならお金を払ったとはいえ、建設会社に家を建ててもらった発注者で、家の製作者ではないからです。いわゆる購入者に過ぎないのです。

では私がなりたいのはゲームの発注者なのか。理想のゲームさえ作れればそれで満足なのか。

答えは否。やはり私はゲーム製作者になりたい。

発注者は一見強い立場のように思えますが、今回のように製作者側と連絡が取れなくなった時点でプロジェクトは暗礁に乗り上げてしまいます。内容を理解していればプロジェクトを引き継ぐことも可能ですが、往々として今回の私のように発注者はプロジェクトの中身を全く理解していません。
モノづくりにおいて発注者側にいるというのはそういうことなのです。

しかしお金を払って要望だけ言ってゲームを作ってもらう、という現在のスタンスではいつまでたっても発注者のままです。このタイミングで見直す必要がありました。

ゲームの製作には企画、プログラム、グラフィック、音楽などのスキルが必要になります。世の中にはこれらを全て一人でやってしまう器用な方もいますが、もし知識ゼロの私がこれらを一人で全部やるとすれば、膨大な時間がかかるでしょう。趣味の延長でやるのであればそれでいいかもしれません。ですが自らが定めたプロの基準は次のような高いハードルでした。

目標1)100万ダウンロードされる
目標2)世間に評価される
目標3)ゲーム製作で食べていく

これらをクリアするにはゲームを数本リリースするだけでは絶対無理だとCROSSで学びました。面白いゲームを早いペースでリリースし続ける体制でないとこのハードルをクリアするのはまず無理です。
それに当時の私は、食べていくために本業の建築の仕事をこなしていましたので、そのような環境で無知な中年のおじさんが一人でこのハードルをクリアするのが相当厳しいことは明白でした。


自分自身で「ゼロから自分一人でゲームを作ったよ」という個人製作のスタンスではいつまでもプロになれないことは薄々わかっていたのです。

Unityとの出会い

製作者にもっとも必要なもの、それはやっぱり知識です。
もちろんセンスや技術も大切ですが、それは知識の土台があってこそだと思います。どんなに建築デザインのセンスがあっても構造的に無理な建築物は建てられないのと一緒です。

とはいえ、製作者が全知全能である必要もないと思っています。建築士を生業としている私自身、家づくりの知識はあってもクロスを貼ったり塗装をしたり木材を加工したりする技術は持っていません。ただ職人さんたちができることできないこと、それにかかる手間や費用などは理解していますし、その知識があれば家づくりはできます。
そこでゲーム製作においても、まずはゲーム製作に関する知識を広く浅く学ぼうと思ったのでした。

まずはUnityとやらをやってみよう!

そう思い立った私は本屋に行き、Unityの関連本を探しました。
2015年当時はUnity5がリリースされ、高性能のゲームエンジンとして認知度が広がり始めた、いわばUnity元年となった年でした。

とはいえUnity関連本はまだまだ取り扱いが少なかったので、とりあえず無知な私でも理解できそうな初心者向けの本を購入し、Unityについてゼロから学んでみることにしました。(ちなみに和尚本こと「UnityではじめるC#」と出会うのはその翌年のこと)

早速Unity5をインストールして、本を読みながら指示に沿ってサンプルゲームを作っていく。すると自分の思う通りに3Dのボールが転がったりアニメーションが動いたりするではないですか!

こいつ...動くぞ!!(当たり前)

20年数前、ファミリーベーシックでマリオを動かすのに四苦八苦していた頃と比べると雲泥の差です。
あの頃プログラムが全く理解できず、それがゲームクリエイターへの道を諦めましたが、もしあの頃にUnityがあったなら自分の人生も変っていたのかも、と思わせてくれるくらいUnityは素晴らしいゲームエンジンだったのでした。
調子に乗った私は「Unityさえ理解できればゲームクリエイターになれるんじゃないか」などという淡い期待を膨らましていくのでした。

とはいえ、サンプルゲームは作れたものの、本に載っていないようなRPGやシミュレーションのようなゲームを作る術はありませんでした。結局Unityのようなゲームエンジンはゲーム製作支援ツールであって、プログラムの知識がないと自分の思い描く通りのゲームを作るのは難しいこともわかりました。

しかしそれを知っただけでもUnityを勉強した価値はありました。
プロゲームクリエイターになるためには自分に何が足りないのか、その足りない部分をどう補えばいいのか、それがわかっただけでも無知の自分にとっては大きな進歩だったのです。

そして2015年4月、CROSSに続くゲームアプリ第2作目の製作に取り掛かることにしました。





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