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その町では、もう長いこと夕焼けを見た者がないという。 「最後に見たのは、ありゃいつだっ…
町の図書館から、「日本語大辞典」という、とても重要な文化財が盗まれてしまった。 「なん…
志茂田ともるとファミレスに入ったときのことである。店員が注文を取りにやって来たので、わ…
駅へ行く途中に、古物商が新しくできていた。当然のことながら、店先には古道具ばかり並んで…
桑田孝夫がスマートフォンに買い替える、と言い出した。不用意に発したわたしの何気ないひと…
中谷美枝子の部屋へ遊びに行くと、もうコタツが出してあった。 「まだ、10月中旬だよ? 中…
3丁目のラーメン屋「ポンポン亭」2階には、わたしの古くからの友人が間借りしている。 実は彼、宇宙人なのだ。 出会いは幼稚園の頃、同じもも組で隣の席だった。 男の子なのにやたらと生っ白い顔をしている。それもただ白いのではない。灰色がかって、妙にてかっていた。まるで、プラスチックかナイロンでできた人形のよう。 「あんたってば、なんかちょっと変」わたしは、初対面の相手にずけずけと言った。 「ぼく、変かな、やっぱり」気を悪くするでもなく、ぽりぽりと頭の後ろを掻く。さらによく
立ち食いピザ屋で、モッツァレラ・チーズのハーフを食べる。さて支払おう、と思ったら、財布…
幹線道路沿いの高級ステーキ・ハウスの前を通りかかると、窓際の席に座る桑田孝夫を見つける…
予鈴が鳴っても、教室の中はまだざわざわと騒いでいた。 「チャイムが鳴ったんだから、もう…
近頃、裏山に山賊が出るという。町へ行くには近いので、よく通る道だった。 「なんだか怖い…
月のきれいな晩、川っ縁の一本松の傍らに立つお地蔵様に声をかけられた。 「これ、そこな旅…
四国、丸亀平原のほぼ中央に小高い丘がある。そこでは、中秋になるとタケノコがわんさか生え…
つけっぱなしのラジオから時報が流れてきた。ぼーっとした頭でラジオに耳を傾ける。 「はーい、たったいま、朝の6時になりましたよ-。今朝の『面占い』を始めましょうねー。本日の『鼻ぺちゃ』さんの運勢は……おやおや、なんだか不穏な雲が近付いていますよ。これは……。ま、まあ、占いなど気にしないことです。今日も1日、無事に過ごせますように!」 わたしは思わず、自分の鼻に手を当てる。「鼻ぺちゃさん」というのは、自分のことではなかろうか。 袋から取り出した食パンにマーガリンを塗って、冷