マガジンのカバー画像

シュールな短編小説

337
ファンタジー、そして時にはシュールな短編集。
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

ガラスの海を越えて

 大海原のど真ん中、友人の桑田孝夫と小舟で揺られている。 「陸はまだかなぁ」わたしは大あ…

むぅにぃ
3年前
5

富士山移転計画

「富士山は日本の象徴なのに、なぜ山梨県と静岡県だけに委ねておかねばならんのですっ!」  …

むぅにぃ
3年前
5

スカイ・ドライブ

 この惑星は地球より、はるかに文明が進んでいた。  クルマにはそもそもタイヤなどついてい…

むぅにぃ
3年前
4

砂漠の屋台

 振り返れば、砂の上を自分の足跡だけが点々と、どこまでも続いている。  雲1つない空から…

むぅにぃ
3年前
6

捕らえられた石の公園

 あんまり暑くて、夜も明け切る前に目が醒めてしまった。 「このまま横になっていたら、熱中…

むぅにぃ
3年前
6

脳みそが家出する

 すっきりとした朝の目覚めだった。  洗面所に立って鏡をのぞき込み、あっと驚く。なんと、…

むぅにぃ
3年前

ゾウのように大きなカブトムシ

 雑木林で、大きなカブトムシを見つけた。 「あのカブトムシ、ずいぶんと大きいね!」わたしは思わず叫ぶ。 「あー、あれかぁ。あれね。きっと、『ゾウカブトムシ』ってやつよ」中谷美枝子はそう言ったが、たぶん、その場で思いついたのだろう。  わたしもそう名付けたと思う。生い茂る木々の間から、立派なツノを上下に揺らし、のっしのっしと歩いている。確かにゾウのように大きかった。 「よーし、あいつを捕まえて飼うことにするよっ」わたしは林に向かう。 「よしなって。カブトムシは、夏の間しか生きら

ヴェイダー卿の親戚かもしれない乗客

 ブルートレインに似た古い電車に乗って、わたしは東北へと向かっていた。  狭いシートには…

むぅにぃ
3年前
8

X-トイレ

 ワシントンD.C.からはるばる、モレターとスカヘーがわたしを訪ねてやって来た。 「メールは…

むぅにぃ
3年前
2

弁当工場の日常

 始業のベルが鳴り、わたし達従業員は持ち場に着く。先頭も最後も、霞んで見えないほど長いラ…

むぅにぃ
3年前
2

山の上の魔法使い

 遠い親戚が魔法使いをやっていると聞かされ、興味半分、あいさつがてら、遊びに行くことにし…

むぅにぃ
3年前
2

幽霊にインタヴュー

 昼下がりの音楽室に、ポロンとピアノの音が響いた。 「いらっしゃい。夏休みに入ってからと…

むぅにぃ
3年前
4

台車に乗って

 課長に頼まれた書類を資料室まで取りに行った。 「けっこうな量だぞ。総務から台車を借りて…

むぅにぃ
3年前
4

大地のなくなる日

 耳をつんざくようなサイレンが鳴り響き、町内放送が流れてくる。 「市民の皆様、本日の昼をもって、大地がこの地球上から完全に消失します。これより、この世界は空と海だけとなります」  もうあと1時間しかない。いったい、どうすればいいんだろう。わたしは不安でたまらず、捕らわれて動物のように、部屋の中をただ、うろうろするばかりだった。 「そうだ、テレビをつけてみよう。ニュースをやっているかもしれない」  痩せこけた、いかにも学者ふうの老人が淡々と語っている。 「本日、昼ちょうどに、