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蜘蛛の城2

最初は小さなトラブルだった


マンション完成後は、建設会社の関係会社が管理として入っていたが、
管理会社は倒産直前に管理組合の修繕積立金をごっそりと引き出して
逃げた、らしい。
その後、新しく自主管理組合を立ち上げ、数年はやりくりしていたが、
当時の管理組合理事長の安本が別口座に積み立てていたお金を持って
逃げた、という。
その安本を問い詰めた当時の理事であった佐野と葛西がお金を返すように
安本に迫ったらしいが、なかなか返そうとしない安本にしびれを切らした
佐野が脅迫まがいなことをしたため、逆に安原が佐野を脅迫罪で
訴える事となった、そうだ。
その後、誰が理事長を、管理組合を運営していくかと言った話の中で、
立役者となった葛西の名前が挙がった、という。
すったもんだの後、管理組合は葛西を事務長、佐野を会計、葛西の隣の住人である新井が理事長という体制が出来上がった、と聞いた。
実際に私がこのマンションに関わったのは、
少なくとも葛西を筆頭として管理を始めていた頃なので、
当時の人たちが話した内容が確実なものかどうかは
残念ながら保証はできない。
トラブルに関する話に関しては、噂話という形でとどめておいてほしい。

総会

平成19年、私は初めてマンションの総会に出席した。
場所は市内のホテルの会議室。
今まで会社の会議に出たことはあっても総会というものに
参加したことがなかった私は、緊張しながらもどんな内容で進むのかと
楽しみにしていたのを覚えている。
会議室の中には机が四角に並べられており、中央は開いた形状をしていた。奥の方に佐野と呼ばれたスーツの男と、いらだちを抑えきれていない男性が数名、目を吊り上げた女性も数名が入口から遠い場所に座っていた。
部屋の中央辺りに席を選んだ私はそわそわしながら
会議が始まるのを待った。
開始時間少し前に屈強な男を連れた葛西と数名の役員が入口に座り、
会議は始まったが…

…それは会議と言うには稚拙過ぎた。
暴言を吐いて葛西のしてきたことを指摘する奥に座った男性。
佐野は葛西を睨みつけ、メモを取りながら話をする。
会議前が静かだっただけに驚いた私は、
会議の流れを追う事だけに必死だった。

話の内容は以下のとおりだった。
男:葛西は安本の持っていたお金の一部を取り返したというが、
   どこにやったのか。
葛西:それはちゃんと口座に入れてある。
   すぐに出せないのは修繕費だからだ。
男:大規模修繕についての話はみんなでするべきだ。
葛西:先日、理事会で見積書を検討しあった。
   佐野さんが出してきた工事費は6千万円。
   そしてエレベーターの管理をしている会社が提示してきたのが
   8千万円。私が提示したのは2千万円。
   だから私の知っている業者で行う事になったんだ。
男:では業者を教えてもらっても良いのではないか!
葛西:そんなことをお前に話す必要はない!
男:話せないのは後ろめたいんだろう?
葛西:いいか、よく聞け!〇×建設会社の下請けの業者だよ!
   そんなに文句があるんだったらな、これより安い業者を探してこい!  
   とりあえず休憩だ!

そして、葛西は書類を持つと部屋を出ていった。
残されたのは事情を知らない、会議中央に座った人と議案。
役員の選任、来期の予算案、
昨年の決算について承認を得ることも出来なかった。
隣の人と目が合い、なんとなく『困りましたね』と言いたげな表情をお互い浮かべ、事の成り行きを見守るしかなかった。
しかし、休憩だと言われて待っていたが、
待てども待てども葛西が帰ってくることはなかった。

葛西は一部の住人には厚い信頼があった。
引越しで駐車場が足りない時は率先して場所を作り、人が来るからと言って駐車場が足りない時には自分が使わないように使用しても良いと許可もしていた。
水漏れがあれば業者に電話をしてすぐの対応をしていたし、
ゴミの日にはゴミを手前に寄せて回収業者の手を煩わせない様にも
していた。
新規入居者には人懐こい顔で「何か困ったことはないかい?」と自分から話しかけていく好好爺は、総会の後理事長の座に腰を下ろすのだった。

理事会の体制は葛西が理事長、荒川が副理事長、会計が澤田(会議の際にいた屈強な男)、そして賃貸で部屋を貸している東北のオーナー櫻場が監査。この時点で監査役がまともに機能していない理事会になったのは確かである。



マンション、使い込み、理事長、訴訟、等のワードで検索してみてください。結構トラブルってあるみたいです。


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