困難があっても、西会津に通い続ける【復興支援レポート】
福島県西会津町。
人口5746人、高齢化率は50%にもなる町です。(2022年9月1日現在)
高齢化による人手不足、進学率の低さなど多くの課題を抱えています。
僕はこの町で、昨年の10月から活動をしています。
ご挨拶が遅くなりました。
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)2年の櫻井航介です。
学部のパンフレットやYouTubeでちょろっと紹介されているので名前はわからなくても、「ピンク頭のやつ」と言われたらわかる人もいるかと思います。
昨年の10月から西会津町で耕作放棄地を利活用した米作り、中学生へのアントレプレナーシップ教育といったさまざまな方向から活動をさせていただいています。
■記録的な豪雨が西会津を襲った
2022年8月3日に東北地方で豪雨災害が発生しました。
西会津町も被害を受け、唯一の電車であるJR磐越西線の橋梁倒壊によって一部のエリアで電車が不通になってしまったことをはじめ、土砂崩れや浸水被害など多くの場所に被害をもたらしました。
今回は、この災害のボランティア活動に駆けつけてきたので、そのレポートをお伝えします。
■泥に埋もれた畑の復旧作業
今回のボランティアの内容は西会津町で1番の若手農家である坂井さんの畑の復旧作業でした。
西会津町は山から湧いた水を地面の溝やコンクリートの溝に通して生活水や畑や田んぼに通す水として活用しているのですが、今回の豪雨で川が氾濫。さらには土砂崩れが起きたためにその水路が土に埋まってしまい、それらの水が一切供給できなくなっていました。
今の時期はちょうど米が1番育つ時期です。水がなくなり栄養が供給できないとなれば米の成長が阻害され、味や品質が落ちることはもちろん、最悪の場合作物が枯れてしまい出荷が出来なくなってしまいます。
作業は朝8時から。
地元の方をはじめ、武蔵野大学からは教員、学生、関係者の計5人。そして幡ヶ谷再生大学さんから20人集まり、全員で30人ほど集まりました。
作業の現場である坂井さんの畑の様子がこちらです。
現場の様子を初めてみた時、どこが被害を受けているのかわかりませんでした。
しかし話を聞くと手前の水溜まりは元々カボチャの畑で、奥に見える土の部分は田んぼで川が氾濫した時に流れてきた砂で埋まってしまったというのです。西会津町町役場の青津さんがドローンで撮られた写真がこちらになります。
砂で埋まった田んぼを見て、「海の家でもやるか!」と農家さんはポジティブに言っていましたが、実際は空元気だったように見えました。
■終わりのない泥かきと、被害を受けた野菜の救出
作業は、水路を掘り起こす班と、トマトの収穫の班に分かれて行いました。
水路作業の方は、コンクリートが土から露出していたので「その通りに掘るだけだし、人数もかなりいるから余裕だな!」と思っていたのですが、先に進むにつれてコンクリートが完全に地面と同化していきました。
手当たり次第に掘れども掘れども、コンクリートの溝が見当たりません。
宝探しのような途方もない作業は精神的にも体力的にもかなりくるものがありましたが、どうにかこうにか掘り続けてなんとか水が通るようになりました。
一方トマトの収穫の方ですが、水路の復旧作業に人員を割いた結果人手が足りなくなってしまいました。しかし、無農薬での栽培だったこともあって早く収穫しなければ全てが無駄になってしまうといいます。
少数精鋭で収穫と袋詰めに分かれて作業を行いましたが、暑いビニールハウスの中、慣れない体勢での作業ということもあって、実態以上に疲れが溜まりました。
午前の作業が終わり、昼食。
町のみなさんがお弁当を作ってくださいました。
街の名産品を使った沢山のおかずは疲れた体に沁み入りました。
西会津は定期的に土壌の調査をしてミネラル分が高い土を維持しており、野菜も米もとっても美味しいです。しかし農協に下ろすと二束三文になってしまうという課題もあります。
そして午後。次は田んぼの周りの水路堀りです。
ここは川の水が直接流れこんだこともあって、細かい砂が多く、水も多く含んでいたため午前とはまた違った大変さがありました。
天候は先日の豪雨など嘘のような快晴で猛暑日にもなるような日で、暑さに耐えながらひたすら無心で掘りました。
途中、町外の方から支援していただいた水やお茶で休憩しながら2時間ほど掘り、なんとか水が全体に通るようになりました。
町の人によると、朝の作業と昼の作業あわせて、1週間はかかるかと思っていた作業がわずか1日で終わったとのことで、かなり喜んでいただけました!
■いままでも、これからも、西会津に通い続ける
今回行ったのは重機が入れない場所での作業でしたが、まだまだ街全体を見ると復旧の目処すら立っていない集落も多く存在しました。
山間部の小さな集落は今回の災害を機に、完全に潰れてしまいました。
しかしそれをどうにかしていくのが僕らアントレプレナーです。
過疎地域の農業におけるブランディングとマーケティングの課題も明確になったので、今後も様々な企画や活動を行っていきます。これからも注目していただければと思います!
僕と西会津町の出会いは昨年の8月に学部内で行われた夏季インターンシップ企画で芝哲也教授のデザイン事務所Cauz(コーズ)に行ったことから始まります。
そこではクリエイティブ思考やブレインストーミングのワークショップを行ったのですが、その題材が「西会津町の町おこし」でした。
そこで西会津町について調べ、考えた内容を実際に町の人に伝えるまでは行ったのですが、実際のところ見てみないと分からないよね〜といったところでインターンは終わりました。
その後、夏休みが明けて数日経ったある日、芝教授から「今週末、稲刈りがあるんだけど、来る?」とのお誘いがあり、暇を持て余していた僕は2つ返事で「行きます!」と返信しました。
これがきっかけとなり、冒頭でご紹介した米作りや、地域の子どもたちへのアントレプレナーシップ教育の実施、今回のボランティア活動などにつながっています。
■助けを求める声に、あっという間に仲間が集まる
なお、今回ボランティアに駆けつけるにあたり、一緒に作業してくれる方の募集や、交通費や備品購入の足しになる災害復興補助金がないかなどをEMCのSlackで聞いたところ、EMCで「リーガル基礎」を担当している伊藤多嘉彦教授が中心となって、教員陣から交通費をカンパしていただきました!
このスピード感、これぞEMCだと感じました!
一緒に西会津に行ってくれた、EMC2年生の野坂さん、藤代さん、横浜創英大学の樋口さん、そして芝先生、ありがとうございました!
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