ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディションを迎えるにあたって
「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」の発売が発表された。これまでもNintendo SwitchにはWiiやWiiU時代の様々なゲームソフトが多数移植されてきたが、満を持してついにあの「ゼノブレイドクロス」が移植される。わたしの周りのゲームファンにも喜んでいる人たちがとても多い。私もWiiUの時に、夢中で惑星ミラを隅々まで駆け回ったので、このように現行機に移植されることはとても嬉しい。これまでNintendo Swichでゼノブレイドシリーズを遊んできた新しいファンの人たちが、ゼノブレイドクロスに触れる機会ができるのはシリーズファンとしてもとても嬉しい。
ゼノブレイドクロスはファンの間でしばしば「減点法だと40点、加点法だと1000000000点」と冗談で言われるくらい、良いところと悪いところがハッキリと分かれていることも特徴だと言える。
ゼノブレイドクロスの良いところはファンの皆様がたくさん語って広めてくれると思うので、今回はディフィニティブエディションが発売されるにあたって、改善してほしい点をいくつか挙げたいと思う。
一つ注意しておきたいのだが、私はゼノブレイドシリーズのファンの一人であり、ゼノブレイドクロスにはプレイ時の思い出がたくさんある。プレイ中は幾度もその美しい世界や澤野弘之氏の音楽で何度も感動した。
今回のディフィニティブエディションでより多くのプレイヤーがゼノブレイドクロスを遊んでもらいたいと心から思っているファンの一人だということはここに記したい。
主人公の存在の薄さ
ゼノブレイドクロスはアバターシステムを採用している。見た目やボイスなど自由にキャラクリエイトできるし、ある程度ゲームを進めると自由に作り直すこともできる。とても自由度の高いところが魅力的である。
しかしながらそのアバターシステムの弊害が物語のイベントシーンで色濃く出ている。イベントムービーでは、アバターの出演はあるものの物語では影がとても薄い。というのもムービーシーンで主人公はほぼ無言であるし、アバターが自己主張をする場面ではムービーがストップして選択肢ウィンドウが突然出てくる始末。音楽も止まるし物語の進行もそこでストップしてしまう。
主人公は最後の確認された最後の地球人という設定なのだが、物語においてどうしても主人公の影が薄いと感じてしまう。むしろ物語を大きく動かしている主役はエルマと言える。そういう意味でゼノブレイドクロスはエルマの物語と言えるのかもしれない。
アバターの声優はたくさんいるしその中には故人も含まれる。鬼籍に入った方がいる以上、新たにボイスの収録をするのは難しいためディフィニティブエディションでもこの点は改善されないだろう。せめて選択肢を選ぶ場面を無くしたり、もしくはムービーが止まっても音楽が流れ続けるなどの工夫を期待したいところではある。
打てど響かぬフィールド
ゼノブレイドクロスの魅力と言えば何と言ってもそのフィールドだろう。その広さはもちろん、立体的で多種多様の生命が息づくそのフィールドは、まさに惑星ミラそのものである。開発チームはまさにひとつの惑星をまるまる作り出したのだ。これは大変素晴らしいことだと思うし、このフィールドの魅力こそがゼノブレイドクロスの面白さを決定づけて言えるといっても過言ではない。
しかしながらこの広く美しい惑星にも問題点がないわけではない。
ゼノブレイドクロスの魅力は、画面内の見えるところにどこへでも行けるところだと思う。序盤のストーリーさえ達成すれば、あとは自分の足で惑星のどこへでも行くことができる。物語の終盤で舞台になる白樹の大陸や、黒鋼の大陸などへも、序盤から海を泳ぎたどり着くことさえできる。
しかしながら、序盤の時点でそこにある建造物や敵の基地、ストーリー上で舞台となる場所にたどり着いても何の反応もない。特に海洋にあるライフを見つけた際に何のイベントも起きなかったのは少しがっかりしてしまった。私たちはゲーム内で同じ地球人の生き残りを探すという使命を持っていたのにも関わらずだ。
どこにでも行けるという点が、その当時のRPGの主流である「物語を追う」スタイルが、自由度の高い広大なフィールドを駆け巡るゼノブレイドクロスと相性が悪かったのではないだろうか。
これは現在のゲームでは解消されている点だと言える。例えば「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」では、物語を直接追うのではなくクエスト方式にした。決められたストーリー順にイベントが起きるのではなく、各地を訪問することでクエストが発生する形式だ。これにより、自由に世界を歩き回る自由度の高さと、物語の厚みを持たせることの両立に成功した。
システム周りの詰めの甘さ
ゼノブレイドクロス開発当時、任天堂社長の岩田聡氏をびっくりさせたほどのデバッグ費用が掛かったのは有名なエピソードだ。これほど広大な世界なのにゼノブレイドクロスには目立ったバグはほとんどない。しかしながら、遊びやすさの点でいえばもっと磨き上げることが出来たのではないかと言える点も少なくない。
ドールジャンプが出来なくなる
ドールのフライトユニットを手に入れてしまうと、ドールでジャンプモーションに入っただけで飛行姿勢になってしまう。小さなジャンプでも飛行してしまい、BGMも変わるのは、興を削ぐものだった。せめてここは二段ジャンプで飛行モードになる等の改良点がほしい。
文字が小さい
ゲーム内の情報量が多い影響もあるのか、基本的に文字が小さい。非常に読みづらい。特にドールの装備品なんて名前を覚えられる気がしないほどの小ささと情報量だった。ついでに言うなら武器・防具の属性も多様過ぎてついてゆけなかった。
ブラッド・ロブスタークエスト
とあるクエストでは、ある人物がNLA内にロブスター型の爆弾を仕掛けたと話し、NLA内に散らばったロブスターを100個集めなければいけないというクエストがある。とにかくロブスターが小さくて見つけづらい。投げた。
ユニオンの存在がほぼ空気
主人公たちが所属する組織B.L.A.D.E.にはユニオンという所属部署が8つあり、どの部署に入るかによってゲーム内の活動がポイントとして溜まり、定期的にランキング付けされて報酬をえることができる……という仕組みがあったのだが、いつもランキングは原生生物を討伐するインターセプターかオーバードを討伐するアヴァランチばかり上位に固定されている為、実質死に要素になっていた。これはおそらく発売後に定期的なアップデートなどをすることで調整する予定だったのだが、WiiUの販売不振にともなう次世代機への早期切り替えにともないアップデート開発が中止になったのではと予想される。
明かされない謎と盛り込まれなかった設定や物語
とにかく世界も設定も壮大であるにも関わらず、ゼノブレイドクロスにはどうしても未完成というイメージを拭い去ることができない。それは物語の終わり方や盛り込まれなかった設定などが膨大にあるからだ。
ゼノブレイドクロスの設定資料集である「ゼノブレイドクロス ザ・シークレットファイル アート・オブ・ミラ」(通称アオミ)は巻末に未確認資料集付属してある。ここには、ゲーム内で盛り込まれなかったさまざまな設定が盛り込まれている。
アオミ内でのインタビューでも裏設定だったり非公開の物語の話題なども話されておりゲーム内だけで収まらないものがとても膨大にある。
実際にゲームを遊んでいても物語の後半は駆け足で進んでいる感じが拭えなかった。またラース人やクリュー人などの異星人に関しての描き方は不十分だったと感じてしまうこともあった。
これは想像にすぎないが、ここまで膨大なゼノブレイドクロスが未完成だと感じてしまうのは、WiiUの販売不振によって、発売後のアップデートや追加ダウンロードコンテンツの配布などが、必要最低限になっててしまい、本来ならばゲーム内で明かされるはずだった謎が、明かされる機会がなくなってしまったのも影響されているのではないだろうか。
もしかしたら、ゼノブレイドクロスディフィニティブエディションでは、明かされなかった設定や物語などが一部追加ストーリーとして保管されるかもしれない。
しかしながら、リマスターやリメイクにおいて元のゲームの物語や演出などが改めて練り直されるということはほとんどない。したがって、ディフィニティブエディションになったとしても、本編の物語はWiiU時代と同じものを体験することになる。
私が望んでいるのは、本編の作り直しなのかもしれない。描かれなかった物語や設定、演出をしっかりと本編に組み込んで、ゲーム内でしっかりと最後まで描き切ることなのかもしれない。
それでもぜひ遊んでほしい
ここまで長々と、ゼノブレイドクロスのモヤモヤした点を書いてきたが、それでも私はゼノブレイドクロスがディフィニティブエディションとして、改めて発売されることが本当に嬉しい。
ゼノブレイドクロスを遊ぶということは、惑星ミラに住むということだ。広大な惑星ミラの中で原生生物と戦い、生活し、そして生き抜いていくこと。それを私はとても楽しみにしている。ぜひこの機会に多くのゲームユーザーが惑星ミラを体験してもらえることを心より願っている。
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たくさんのゲーム音楽演奏会に参加して、たくさんレポートを書いてゆく予定です。