越前和紙の里と和紙の明日

ここ数年、古書店に書を探しに行ったり、筆職人や墨職人を訪ねたり、書にまつわることをテーマに色々な所を訪れている。

昨年末は紙をテーマに北陸一人旅に出掛けてみた。

今回のお目当ては、福井県は今立地区。越前和紙の里として多くの紙漉き工房がある地域。
最寄駅の武生駅からバスで約30分。山間の集落である。
山のブナの木が蓄えていた水が流れる岡本川沿いに歩いていくと沢山の紙工房があるのだが、川の流れる音と、工房から聞こえるボイラーや漉き桁の音以外何も聞こえてこないような、とても静かな場所。
吸う空気がしっとりとして美味しい。

今回は事前にアポを取っていた工房1件を含め、全部で5つの工房を見学、どこの工房の職人さんも忙しい中手を止めて、たいへん丁寧に説明してくださった。
おかげで原料の植物を大釜で煮るところから、ムロで乾かされた紙を剥がす所まで、ドーサ引き(にじみどめ)などの加工以外は全て見学することができた。

中でも感動したのは、チリトリ(原料である植物の、繊維以外のものを取る作業)中の楮や雁皮の言いようもない美しさ。漂白された楮や、生成りの麻、卵色の雁皮が、水の中で透き通って揺蕩う。

⬆️(チリトリ後の楮)

住宅環境の変化などで和紙があまり使われなくなった今、多くの工房では、伝統的な紙漉きの技術を使いながら、土産物のような工芸品を作ることで、技術が絶えないようにしている、ということだ。
いつか和紙が日の目を見る時まで技術を継承していきたい、と言っていたのが印象的だった。

また、羅紋紙の技術復活の研究をしていたり、栽培が難しいと言われる雁皮の木を育てるグループがあったりと、ただ伝統をつなぐだけに留まらないたゆまぬ努力を垣間見ることができた。

⬆️(栽培しだして4年という雁皮。雁皮は人の手で育てるのが難しいといわれている)

大量生産品を安く買うこともできるけれど、きちんと手のかかったものを使っていくことは、伝統工芸やその技術を護ることにつながると思う。

越前を後にして、加賀雁皮を見に金沢へ向かうも、2時間に1本しかないバスの乗り継ぎを失敗して断念…(方向音痴の自分を呪う)。
またの機会に期待。

北陸の自然の美しさ、紙漉きの神聖な雰囲気、人々の暖かさに触れることができ、感動の連続の旅となった。
心残りは風邪気味で喉をやられてしまい、お酒が飲めなかったこと😭
あと体のことを思ってうどんばっか食べてた…
次は蟹とか食べたいな…
帰りの北陸新幹線の車窓から見えた景色は、まさに飛び雲、平安に想いを馳せた。

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