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1月に読んだ小説:『蜜蜂と遠雷』ほか

最近、小説もそうですが、物語に接するときに「構成」を意識するようになりました。このエピソードの意味は? このセリフの役割は? このキャラクターは?

たとえば歴史的な建造物を見たときに「あぁきれいだな」「すごいでかい」とかではなく(もちろんそういう感想は大事にしたいけれど)、「部屋割りは?」「このパーツを使った理由はなんだろう」「配管はどうなっているのだろう」とか、そういうふうに見るようなイメージ。

料理だったら「おいしい」「きれい」だけでなくて、材料や調理法にも興味を持つような感じでしょうか。

作り手の目線。楽しみ方の一つということで。



蜜蜂と遠雷

ようやく読みました。

そしてひさびさに読みました、恩田陸・大先生。まぁまぁでした。


自分が好きな恩田作品は『夜のピクニック』。何回も通して読んでいますが、いつもラストシーンで涙してしまう。それくらい好きです。

本作も似たような筆致、似たような優しさであふれているけれど……

うーん、及ばないか……中学生・高校生くらいの頃に本作を読んでいたら印象が違ったかもしれません。自分も長いことピアノやっていたので。

えんえんとピアノコンクール。4人のピアニストにスポットを当て、それぞれの人生と音楽性が描かれます。演奏シーンの描写はさすが真に迫る。キャラクターも巧みに深堀りされて、非常に好感度の高いキャラに仕上がってます。ただ、みんなそれぞれに天才過ぎて、ちょっとひいて見てしまうところはある。

息切れしたのか、それともそういう演出なのか、最後のコンチェルトはあっさり目。そこはもったいないような気もする。

amazon musicで曲を流しながら読みました。雰囲気が出てよい。いいスピーカーにつないで大音量で聞きつつ本作を読んだら、リビングが一気にコンサートホールになりました。クラシックは以前よく聞いてたし、コンサートにもぼちぼち行ってましたが最近は全然です。やっぱりすごくいい。

映画にもなっている本作。関連するCDもたくさん出ています。

noteのお題「読書の秋2020」でも課題に挙げられていた本作です。きっとnote内にもたくさんの感想文があるでしょう。


しかし直木賞と本屋大賞のダブル受賞ですか。本屋大賞ってもともと直木賞や山本賞にひっかからない、ちょっと異色でアウトロー気味だけどおもしろい作品を取り上げる賞ですよね。最近は違うのかな。



遠い山なみの光

前回の『日の名残り』に続いてのカズオ・イシグロ。英国の作家さんですが日本にルーツをお持ちで、長崎で暮らしていた過去があるようです。本作がデビュー作。

カズオ・イシグロといえば、ノーベル賞を取るずっと前に、確かイングリッシュ・ジャーナルに載っていたインタビューを聞いたのが自分の最初の思い出。

英国人と結婚し、英国に住む日本人の女性が、長女の死をきっかけに昔を思い出す。戦後すぐの長崎。そこで出会ったある女性とその娘……

登場人物の会話が噛み合ってなくて、だらだらぐだぐだして、ずいぶんと読みにくいな、と思ったら、どうやらあえて噛み合わない会話にしていたようです。



あなたの人生の物語

テッド・チャン。SF界ではとても有名な作家さん。

1-2年前だったでしょうか。NHKラジオを聞いていたら書評コーナーで本作、そして新たに日本で発刊される作品(『息吹』)がレビューされていて、SF通っぽい方がなにやら熱弁をふるっていたのを覚えています。寡作で有名で、少し分厚めの短編集である本作に載っている作品が、邦訳されている全作品らしい。しかし質はどれも非常に高いとか。

たまたま古本屋で見つけて挑戦しました。表題作を含む8編の作品を収録した短編集です。

――――なんかむずい……ネットのレビューを見たりしながら、何度か読み直してみましたが、いくつかの作品は正直さっぱりわからぬ。

とりあえず表題作「あなたの人生の物語」。映画「メッセージ」の原作だとか。地球にやって来た宇宙人の言語を解明しようとする博士。過去・現在・未来を同時に表現するその言葉を学ぶうちに、博士自身の思考にも変化のきざしが……といった筋。やっぱり難解。言葉を学んだだけでそうなるかな……なるのか。

エピソードの時制がよくわからない。

そもそも時制がないっていうオチだろうか。


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