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労働力不足の考察記事を読んで

 今朝、以下のニュースを読んで・・・

 (。´・ω・)ん?

と思いました。

まず最初に、疑問に思ったのが、

理屈で考えれば、労働力は不足するはずがない。労働者を募集しても応募がないならば、従来よりも高い賃金で労働者を再募集すれば良いからだ。マクロ的に考えても、需要と供給の一致する価格(労働力の価格である賃金)が実現すれば、定義からして需要と供給は一致するはずだ。

上記記事より引用

なぜ?
と、驚きました。
原理原則の理屈のみで考えた場合、

労働市場において「求人数(需要)」と「応募数(供給)」の過不足により、人手不足や人余りが発生する。

とならなければいけないはずです。

この記事では、「賃金相場」が収斂することしか考えておらず、応募人数や、雇用可能数が【有限である】ことを理解できていないようです。
実際、米国では30ドル以上の時給を提示しても応募が集まらない人手不足に陥っているケースもあります。

どんなに給料を引き上げようとも、労働者人口が100人しかいない社会で、求人数1000人を満足することは出来ない。
賃金だけで求人に成功するのであれば、100位までの賃金提示額でなければ採用は出来ず、あとは、人手不足になるしかないだけです。

具体的に言うならば・・・
介護職の場合、「求人数(需要)」>「応募数(供給)」
事務職の場合、「求人数(需要)」<「応募数(供給)」
という風に、各職種における【人気度】があるという現実を度外視しすぎているということです。

上記の記事へのツッコミの根拠

ということで、のっけから論拠部分が揺らいでいる記事だなあと思いました。

これ以降の展開でも記者の我田引水は進んでいくようです。

上記の理屈(人員確保できないのは高給を支払えない企業が悪いという理屈)から、

記者の論理骨子は、
「企業は高い賃金を用意すべきであり、支払えない企業は市場から退場すべきである。」
というものです。

まあ、言わんとしていることは分からなくもないですが・・・

では、この記者は、
「焼き鳥の串1本50万円です。
 ビール一杯800万円お支払いください。」
と言われれば、ボッタクリだと喚くんじゃないでしょうか?
え? そんな店には行かないだけ? (苦笑)

でもね。記者の論理展開だと、購買選択の自由は認められないんですよね。
なにしろ、職業選択の自由を全面排除した論理展開になっているのですから・・・

現実に即して考える場合、
企業が賃金を低く押さえざるを得なくなるのは【価格競争】があるからです。
記者の言うように無制限に人件費を上昇させて良いという理屈の世界では、価格競争がない前提条件が無いと成立しえないのです。

なぜそうなるのか?
実際に、低賃金労働の企業が市場から退場し続けた場合を想定してみましょう。(記者の前提条件の誤りが浮き彫りになりますね・・・)
その場合、市場は【寡占】が進みます。
最終的には、ドンドン値段を上げても消費者は受け入れるしか方法がないという形になっていきます。

上述の事例は極端な金額ではありますが、日本で居酒屋が1社しかない状況にまでなり、居酒屋で酒を飲む娯楽が大金持ちの道楽レベルにまでなってしまえば、あり得る価格設定かと思います。

我々、一般消費者がある程度の値段で物品やサービスを購入できるのは、【価格競争】が機能するぐらい競合他社が存在しているからです。

ネット民の中には、安易に市場から退場というお話をする人がいますが、それが何を意味するのか? あまり想像力が働かない人が多いみたいです。

我々町工場は、失われた30年の中で、多くの淘汰を経験してきました。
場所によっては、半分ぐらいの企業が消滅しています。

その結果、生じたのが、

【欠品】・【廃番】・【価格高騰】の嵐

です。

必要な工具がない。
やってくれる処理屋さんがない。

そういった事例が多発しました。
供給力不足による価格高騰は、今現在の世界が経験していることでもありますね。

さて。記者の締めくくりの論は、「最低賃金の引上げ」です。

これも言わんとすることは分からないでもないですが・・・

例えば、水を運ぶだけのウエイトレスに、時給1,500円とか2,000円を支払うとすれば、どうなるでしょう?

お店の格があれば、消費者も支払うかもしれませんが・・・
もんじゃ焼きのお店で、そんな賃金設定したらウエイトレスを雇用できませんよね。
当然、どこの店でも人件費高騰を導入するとなればサービス価格が上がります。
場合によったら、米国みたいに「チップ制」を導入することになるかもしれません。

でも、消費者サイドは「コップ一杯のお水」を持ってきてもらうだけで、「はい。チップ100円です。」と支払うでしょうか?
この程度のサービスでお金を取るのか? となるのでは?
セルフサービス化してしまうかもしれませんね。
そうなると、別の意味で人手不足解消にはなりますが・・・

賃金の問題というのは、多くの要素が絡みます。

高度なスキルを必要とするものであれば、高賃金になるでしょう。
誰でもできるような仕事であれば、低賃金になるでしょう。

そこにあるのは上述のように、ジョブへの対価に対する消費者の評価が、どうなっているのか? に影響されるのです。

ですから・・・
記事にあるように、単純に
「賃金を上げることで人手不足解消」
「低付加価値企業の市場からの退場による人手不足解消」
という論理展開では、世の中が回らないと思います。

ただし、記者の意見が全面的に間違っているというお話ではありません。

消費者・労働者・企業の3者のバランスで成り立っているものに対し、企業の努力のみで成立するかのような論理展開に対し、

 (。´・ω・)ん?

となっただけです。

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