読書記: 「正義と悪」という幻想(天外伺朗 著、 内外出版社)(2022.7.30 発売)

Amazonの紹介文を読んで、予約して購入してしまったが、想像していた以上の内容。
もし、自分に天外伺朗氏ほどの内省力、文章力があり、発信する実行力があればこの内容と同じような考えを表現したい、と思わせる内容(考えていることはほぼ同じと思えたが、自分自身で本書のような文章にまとめる力は全くない、と確信をもって言える)。
平たく言えば、とても「共感」できる内容とも言える。
「宇宙の流れ」、「融和力」、「集合的無意識値」といった本書でのキーワードは個人的にはまさしくこれだな、という強い「共感」を得るものだった。
ただ私見では、一般的に本書に共感する人がどれくらいいるのかは気になる。なぜなら、本書の考え方はいわゆる「識者」とされる人々の発言内容と全く一致するものを見たことがないから。それはウクライナ(とロシア)の問題を具体的にとりあげているため、メディアで発信されている意見と明らかに異なっていることがわかるからである。
「識者」とされる人々の意見が一般の多数の意見とは限らないが、本書で言うところの「平和の守り手」の人口比(ロバート・キーガンは1%と言い、天外氏は日本社会に限れば、もう少し多いのでは?という感じ)がかなり多くないと「共感」されないのではないか。
ウクライナ紛争を取り上げるなか、プーチンが悪、または、ゼレンスキーのほうが問題か、といった分断された主張がほとんど(「識者」のメディアでの発言では)であるなか、この内容をこのタイミングで書籍にしたことは天外氏の吹っ切れ度の凄さも感じるところである(分断された両サイドから批判を受ける恐れもあるため、本書の考え方を表すのは躊躇するように思える)。
天外伺朗という人物の人間性(これまでの活動に裏打ちされた)が、それを可能としているのかもしれない。

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