日本人の叡智(磯田道史著、新潮新書)(2012.3.2日経産業新聞寄稿)

------後日のコメント------------------
各種メディアで大活躍中の磯田道史氏ですが、様々な教育・研究機関を経て、現在、国際日本文化研究センター教授となりました。。
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本書は映画化もされた「武士の家計簿」の著者による日本の先達の言葉の紹介である。
1項目で700文字ほどの言葉の紹介ではあるが、それぞれに深みがある理由は「はじめに」に記述されているとおり、著者が膨大な時間を使って先達の人物を知るための努力をなしたことによる。資料はトンの単位に及ぶという。言葉を発した人物の背景を知ることでその真意の理解が助けられる。
「人材は一癖あるものの中に撰ぶ(えらぶ)べしとの論は、今の形勢には至当なり」(島津斉彬)は、非常の時勢に対処するための癖はあっても一芸知能ある人材登用が必要であるという心得を説く。
「隠すと申すは、潔白ならぬ事より起こり候、此方(こなた)は腸(はらわた)を出し
て、政事致す心底に候」(松平定信)は、情報非公開が原の時代に財務開示を行って解決策を導いたという教訓である。
昨今の困難な状況において、我々が確かに再認識すべき「叡智」の言葉である。

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