読書記:「日本の宝・和牛の真髄を食らい尽くす」(千葉裕士、 講談社)(2015.11.6日経産業新聞寄稿)


TPP時代を向える中、我が国における「食」「農」政策が活発化、ビジネスでの関わりも増えてきている。「里山・里海」、「グローバルとローカル」といった、経済成長、地域社会、グローバル化で抱える課題の解決策が論じられるが、本書では「和牛」をテーマとした新しい農業や地域振興のあり方について、牛肉の薀蓄と合わせて知ることができる。
著者は、生産から小売りまでの垂直統合経営という近年のビジネスモデルを「和牛」に適用した。
トレーサビリティ、サステナビリティという食品事業での重要成功要因の採用に加え、地域活性化と生産者支援を強く意識しており、ビジネスを通じて公益に貢献したいという志が伝わってくる。
「熟成肉」の正しい定義について説かれるくだりは、高付加価値商品としてのブランド力強化を図るための方法論であり、国際競争にさらされることになる日本の「食」「農」の今後を考えるにあたってのヒントになるだろう。

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