「やりたいことはなくたっていい」けど、やっぱり諦められない
やりたいことはなくたっていい。
頭では分かっているのに、やっぱり諦められない。
その理由はたぶん、大学時代の研究生活にありそうで。
-----
選択肢を狭めないように、何でもできるようにと選んだ学部、学科、研究室。
いざ研究テーマを決めるタイミングで気付いたのは「やりたいことが特にない」ということだった。
なんかすごそうだな〜という分野はたくさんあったが、おそらくそんな軽い気持ちを先生は見抜いていたのだろう。なかなかポジティブな反応が得られず、テーマ決めは難航した。
周りの同期はどんどんテーマを決めて前に進んでいく。やばい。辛い。
あとから先生に聞いたところ、まったく遅いとは思わなかったらしいけれど、いままで成績優秀で進んできた自分にとっては、出遅れるなんて初めての経験だった。
そこから救ってくれたのは図書館とアルバイト。
悩んだわたしは大学の図書館をうろうろし、気になった書籍をパラパラめくる。それをとにかく繰り返した。
ある日、和雑貨店でアルバイトをしていると、目の前にある商品と、図書館でみつけた数学の分野が結びつき、ひとつの研究テーマを思いついた。
これはいけると思ったが、自信はあんまりなかった。その夜は先生からポジティブな反応を得られる夢と、今まで通りの反応をもらう、2パターンの夢をみた。
結果的に先生の反応はすこぶる良くて、わたしは結局大学院まで含めた3年間をその研究に費やすことになる。
研究生活の中で一番辛かったことは、このテーマ探しだった。それくらい研究自体は楽しく充実していて、院進学に悩んだことはあれど、テーマを変えようと思ったことは一度もない。
人生でいちばん没頭できた経験だと思う。
-----
話は戻って、いま。
わたしはやりたいことがない。でも見つけたい。
この状況は、たぶん研究テーマ探しと結構似ている。
違うのは、先生がいないこと。選択肢の数が段違いなこと。あと、かける時間。
昔から人の目を気にして生きていたみたいで、いいねと言ってくれる人がいないと、どうにも不安になってしまう。
それに、まだ28歳なので、なんでも挑戦できると思っている。
研究テーマ探しの時より広くて深い世界にぽつんと一人でいる気持ちだ。
わたしがこんな状況になったのは、最初に入った会社を休職してから。あの日からすべてが崩れ、ゼロから考え続けて、気付けば2年半が過ぎた。
考えることは好きだが、こんなに続けているとたまに疲れてしまう。
同じところにいるように見えて実は進んでいるんだよ、螺旋階段みたいにね、なんてことは頭で分かっているのだけど、ふと、自分はいつまでこのままなんだろう、あれから全然進んでいないよね、と悲しくなってしまう。
それくらい疲れた時、わたしはやっぱり本に頼る。
いまは図書館よりも本屋が近くにあるので、そこに駆け込み、端から端までぶらぶらする。
すると、ヒントになりそうな本が見つかったりする。
たとえばこの前は、ずっと興味のあった現代アートの雑誌が目に留まった。
やりたいこと、稼ぐことばかり考えていた自分に対して、「学ぶ」という選択肢を思い出させてくれた日だった。
本屋でおすすめなのは六本木にある文喫。本がバラバラに置いてあるので、人気ランキングなどのフィルターがかかることなく、様々な本を目にすることができる。
ここでは「考えることが好きだなあ」と思い始めていたタイミングで、佐藤雅彦さんの『新しい分かり方』に出会えた。
本屋は私にとって考え続ける燃料を補給する場所だ。もう少し頑張ってみようと思える。
頑張る理由は簡単で、こうやって探し続けていれば、いつかきっと研究テーマよりもっともっと好きになれる、没頭できる何かを見つけられると信じてるから。信じたいから。
研究生活のおかげで、夢見ることができるし、諦めることができない。
-----
研究生活は3年だったけれど、人生はもっと長い。
テーマなんて簡単に決まらなくて当たり前だと頭では分かってるんだよなあ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?