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有名になるほど聞く力が衰える

photo by Chase Fade

構造と権威の観点から、有名になるほど聞く力が衰えるというお話です。

また、新製品開発にも悪影響を与えることを解説し、聞くための解決策を紹介しています。



構造的に聞けなくなる

有名になるほど不特定多数に向けたコミュニケーション機会が増えます。例えば、講演やポッドキャストといったプレゼンテーションの機会です。

これらは1:nのコミュニケーションです。一人が多数に向けて話します。1時間の100人に向けた講演なら、みんなが1時間、あなたの話を聞いてくれるわけです。

有名になるほど、一人一人から率直な話を聞く機会が減りやすくなります。大勢から一人に向けたn:1のコミュニケーションは成立しません。

自分の講演に力を入れるのと同じくらいに、100人の声に耳を傾けるとしましょう。すると100時間かかってしまいます。講演と同じ1時間なら、100人から機構とすると一人30秒ほどしか聞けなくなってしまいます。

自分の影響力を高めるゲームで有利な位置にいる人は、人から丁寧に聞くことはコストパフォーマンスが悪いと感じるようになります。有名になって1:nの機会が増えるほど、一人一人から聞くコストパフォーマンスの悪さを感じてしまいます。

つまり有名になるほど、人から聞く意思の力が衰えやすくなるというわけです。



権威で聞こえなくなる

有名になるほど、みんなは思っていることを率直には言わなくなります。いろいろな理由があります。

有名な人のプレゼンをきいて自分が勇気づけられたから、その人の意見に違和感を感じても、いつも肯定しなければならないと思ってしまうかもしれない。恩を艶だ返す気持ちになってしまう。

有名な専門家に、自分が意見をいうのはおこがましく感じるかもしれない。

営業力のある有名な人に意見を投げたら、今の仕事を干されてしまうかもしれない。

こうして、有名になるほど非対称になっていきます。有名人なったら率直なダイアローグはできない、というわけです。

つまり(周囲の人の)話す意思の力が衰えるわけです。



ヒット商品を生み出したプロダクトオーナーの悩み

プロダクトオーナー(新製品開発者)について考えてみましょう。

ヒット商品を作ると、反対意見を挙げていた人たちも従順になっていきます。みんなが話を聞いてくれるので、プロダクトオーナーの仕事はどんどんやりやすくなります。

同時に、周りの人達から入る情報はどんどん歪んでいくようになります。周りはあなたを勝ち馬のように見るようになります。小気味よい話ばかりするようになります。「あやかる」という社会的行動をとるというわけです。

プロダクトオーナーは、一人一人から丁寧に聞く時間は無いし、ヒットメーカーという権威もあって聞こえなくなってしまいます。周りにはおこぼれに「あやかる」人ばかり。

入ってきた歪んだ情報を鵜呑みにすれば、次の新製品では失敗することになるでしょう。

一方で、自分で見聞きしか情報しか頼れなくなると、いつしか表現者のように振る舞うようになります。だからヒットを作った人はアーティストみたいになっていくわけです。

でも現実を見てみれば、新たに作っているのはナンバリングだったりします。新鮮で価値のある情報が入ってこないので、挑戦できなくなってしまうからです。

これがヒット商品を生み出したプロダクトオーナーのジレンマです。

(一つ目のヒット商品が、たまたまの偶然だったら悲惨です。二つ目のヒット商品を作ろうにも、何年も最初のヒット商品を作っていたときと同じことをしようとするからです。まったくうまくいきません。勝ち馬だからついてきた人達は蜘蛛の子のようにちりぢりに去っていきます。ほんと悲惨です)


手厳しいフィードバックをくれるパートナーがいるか

要は、有名になるほどコミュニケーションネットワークの中で孤立してしまう力学が働いているという話です。

解決策は手厳しいフィードバックをくれるパートナーを確保することだと思います。有名になろうが、権威付けされようが、いつも通りに手厳しく、真に迫るフィードバックをくれる人を確保することです。

会社の経営レベルで言えば、お手盛りに無縁な裏の取締役。
事業単位でいえば、健全なライバル部門。
個人でいえばメンターでしょう。



手厳しいフィードバックをくれるメンターの確保は難しい

有名になったり、年を取るほど、人からのフィードバックが、少なく、かつ遠回しになって、自分が不適応になっていきます。

私は解決策として「お金を払ってでも、手厳しいフィードバックをくれるメンターを探す。習慣づける」をオススメします。

個人でメンターを付けることはまだまだごく一部だと思います。わざわざお金を払って厳しいフィードバックをもらおうとする人は限られています。しかし、正気を保ち、物事を正視するには非常に有効ですので、有能なメンターを付けることをオススメします。

(コーチングではありません。コーチングとメンターは違うものです。)

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Mori Yuyaのプロフィール
https://note.com/mryy/n/n6f01561a6253

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