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詩 完熟失恋

詩 完熟失恋

叶わないから恋はちょうどいいのです
柘榴の実がはじけるようくらいの
でっぷり太った色欲まみれのわたしが
両手からあふれて落ちていきます
好きになったら負けなのです
愛してしまえば許さざるえません
いくらさみしくて手を伸ばしても
彼らは全部を拒むでしょう
そうしてわたしは種を蒔きます
忘れないようにひとつずつ植えます
その花が咲く頃にまた思い出し
こころの傷を花びらでなぞります
叶わないから恋はちょ

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詩 消炭

詩 消炭

都合よく消費されることばかりだ
出会った時に大体が決まってしまう
誰にも嫌われたくないから
否定もしなければ肯定もしないばかりに
私のパッケージがやさしさとちょろさだと
つけいられていることは重々わかる
結果、表面張力いっぱいまで貯めて
違うが一気に溢れ出した瞬間に
相手もnot for meだと気づき
手のひらを返して離れていってしまう

(プレイボールの合図で飲み干す
言葉の純度はウォッカと同

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詩 まほうがとけない

詩 まほうがとけない

愛している
一緒にいて
結婚しよう
ありのままでいいよ
でも、好きとは言わない魔法使いは
私が欲しかった言葉の靴を差し出してくる
サイズがぴったりかはわからない
合えばいいとは思うけど
その靴を履くには旬が遅すぎる

ヒールは女のプライドだし
ビーフは男の矜持だし
どっちを取っても捨ててもどうも
やっぱりは私は立ち止まる

眠れない夜をココアに溶かして
ブランデーの涙を一滴ずつ垂らす
欲しいのが心

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詩 あなたがそこにいなくても

詩 あなたがそこにいなくても

空が飛べない分、泥水を啜った
27クラブに入会もできなかったし
そもそも凡人なのもとっくにわかっていた
それでも、特別な何かになりたくて
たくさん勉強して真面目に書いた
言われなくても早出残業して
誰よりも正しくあろうとしたけど
結局のところ、私は女でしかなくて
出世もできなければ結婚出産で定義され
人として生きようとしても
女であり続けることしかできず
結果として女である蜜を舐めることが
この世

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詩 生命体:恋

詩 生命体:恋

私は恋でできている
安定が欲しいと嘆きながらも
ときめきを摂取しないと生きていけない
経血は甘ったるい罠で不定期営業
去ってしまった男たちの影を数えては
勝手に傷ついて悦に浸っている

人生全部タイミングな訳で
欲しいものだらけでやっていけない
無償の愛が欲しいのは
心の隙間を埋める長い棒を待っているから

毛穴という毛穴から全部
世の中にあふれるやさしさを滲ませたい
そして、誰かを包み込める毛布

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詩 相対的擬似的自虐婚

詩 相対的擬似的自虐婚

月はまばたきしていて
ようやくわかる頃には
私は歳を重ねすぎたのだ

カウントダウンをエイトロックで
鏡越しの自分はどこだ

今日も眠剤をミンティア代わりに
酒で流しては眠れないまま
愛してるよりも愛したい
もうすぐ夜明けと溶けていく

追い越した背中を眺めている
思っていたより重症だ
今ならわかるじゃ遅すぎた
背負った十字架は捨てられない

愛されたいガールは終わり
でもいつまでたっても甘ったれ

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詩 ジェネリック亡霊

詩 ジェネリック亡霊

深夜の電話越しだからだ
ストゼロとマルボロ片手に話すと
もう二度と会うことのない彼が現れて
わたしと結婚しようと誘う
彼とはかつて恋仲に近いような
お互いの利害的さみしさでだけつながっていた
そのうちにわたしの比重が大きくなり
そして 彼の彼女が死んで全部終わった
彼は酔うと舌ったらずになって
もう歩けないと言って電話をしてきた
その電話がいつになるかはわからない
が、わたしはずっと待っていた

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詩 人生設計

詩 人生設計

隣で寝息が積もる中、
私はひとり煙草を吸う
ねむたさと同居する白んだ空は
なんでもいいよと許してくれるが
体温を交換することもできず
心に捻り潰した煙草の消し跡みたいな
穴がたくさん開いていくばかりだ

自立した人になりたかった
誰にも頼らずまっすぐ立てる
薬もいらなくていつでも羽ばたける
元気でかわいい普通の女の子でいたかった

現実は薬と酒まみれでずっと吐いてる
機嫌すら依存してまともにできな

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詩 たったひとりのために

詩 たったひとりのために

たったひとりのために生きると
誓い合って祝詞をあげる
健やかなる時も 病める時も
支え合って生きていくこと
それは美徳であり、破綻する舟である
いちばんちいさな呪いは
愛することであることなのだ

愛しましょうね、どこまでも
地獄の底まで連れていって

たったひとりのために生きると
誓い合ったはずなのに
私はカレーだけ食べるのではなく
たくさんのものが食べたくて仕方ない
チョコも中華もスパイスもた

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Love is over

Love is over

いつまでも勝手に私の言葉で死んでくれる貴方でいてね。作品の中でだけ、永続的に生き続けられるから。忘れないで、言葉にしてよ。そしたら貴方が、世界が、私自身がぜんぶ消滅してしまっても、化石になって歴史的価値になりうるかもしれないから。

コストを支払っても永続的に女であると、切り貼りした心臓の奥に刻印されてしまった時から、賞味期限/消費期限のカウンドダウンは始まっている。どうあがいたって、所詮はオスメ

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ささやかな愛が行き着く先で

当たり前に好きになって
当たり前に結婚をして
当たり前に子供を産んで
当たり前に幸せになって
当たり前に死んでいく
そういう人生設計の元で
わたしは生きている

誰かのためにやさしくなって
傷ついて傷つけて
それでも 一つになりたいから
やさしくなってつつみこんで

死にたいのに死ねないから
両足でちゃんと立つために
酒を飲んだ
煙草を吸った
股を開いてセックスした
ひとりで朝を迎えた

当たり前

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朔日

ぐらぐら沸く眠気の中、
縦じわが目立つ爪に
ちょっとだけ届かない夜を
マニキュアで重ね塗りした

泣かなくても欠けやしない
と、気づいてしまったから
もう一人のわたしがしんだ

箸使いの綺麗さが基準
檸檬の橋の向こうに立つ
笑顔が飛んだら 街が溶ける
#詩 #20190304

夜の電車にて

吸って吐いて、また吸って。永遠に凍結されていく青春の軌跡をなぞることで、私たちはみんな大人になっていく。曖昧な青色の夕暮れの行方を、三口コンロのように簡単な着火と捉えてはいけない。沸かした湯の中で泳いでいく明日が来る前に、どうか、忘れていく誰かの役割を静かに、静かに、数えたら春だ。
#詩 #20190302

ネオトーキョー

溜まっていく音がする
罪悪感より甘ったるくて
いくらでも生ぬるい
スカートの下で笑ってるまま
ほどけていくのを見つめてる
本当はやめたいのに
気持ちよくて止まらない
アルコールでほどけていく
純情さがほしかった

既視感だらけのベッドルームに
朝日が差し込んで魔法が解ける
#詩 #20180701