銭形平次捕物控71「平次屠蘇機嫌」(1938)+大川橋蔵・主演 第36話 紹介と感想
野村胡堂『銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌』嶋中書店, 2004, p.46-85
あらすじ
元日、八丁堀への年始回りをした平次は、輪飾りが裏返しになっている料理屋『さざなみ』を見つけ、ふらふらと千鳥足で中へ入っていく。
店では番頭が手拭を配っており、白地と浅黄の手拭があった。番頭は白地を渡そうとするが、平次は浅黄が欲しいと番頭と言い合いになる。
しかし、それも全て不審に感じた平次が打った芝居だったのだ。
騒ぎの最中に八五郎がさりげなく手に入れた浅黄の手拭には、十二支と江戸の名所が描かれていた。
平次は早速調べを始めるが、なんと『さざなみ』は三が日が終わるとすぐに店を畳んだのだった。
平次は、店の跡地を借りて商売を始める。果たして、手拭に隠された秘密とは何なのか……。
紹介と感想
前半は平次の酔った芝居、中盤はお静やお品まで動員しての一日店主ぶりなどが楽しい正月篇です。
平次短編の中では長めの話になるので、平次の酔った芝居も数ページにわたって丁寧に描かれています。
真相は大捕物に繋がるものであり、平次の店では、盗賊たちも正月を楽しんでいるのが感じられました。
正月から大手柄の一篇ですが、平次は謙虚な姿勢を崩しませんでした。
映像化作品
大川橋蔵・主演 第36話「平次屠蘇機嫌」(1967)
新年一発目の放送は、明るく楽しい捕物で始まりました。
倉橋屋周りの人間関係に変更があった以外は原作に沿っています。
大川橋蔵の酔った演技や、準レギュラーが勢ぞろいしていたりと、正月篇らしい楽しい内容です。
お弓ちゃんは歌声を披露し、お品さんは岡っ引として成長している姿を見せ、笹野様はみんなの環の中で笑顔を見せ、万七は正月早々憎まれ口を叩く、お馴染みの顔それぞれに見せ場があるのも嬉しい所です。
物語としても、いつものドラマの面白さと正月らしい特別な空気のバランスが良く、気持ちよく観ることができオススメです。
ゲスト
三河万才/夢路いとし・喜味こいし
倉橋屋/深見泰三
文六/西山嘉孝
虚無僧/川路 誠
虚無僧/近江雄二郎
九郎助/森 秀人
大川橋蔵版レギュラーキャスト(当話出演者のみ)
銭形平次/大川橋蔵
八五郎/佐々十郎
お静/八千草薫
三輪の万七/藤尾 純
清吉/池 信一
お弓/鈴村由美
笹野新三郎/神田隆
お品/宮園純子
太吉/川浪公次郎