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アガサ・クリスティー『死者のあやまち』映像化作品 紹介と感想



ピーター・ユスティノフ主演 ドラマ版 第2作『死者のあやまち』Dead Man's Folly(1986/米)

ヘイスティングスとオリヴァー夫人が夢の競演をするユスティノフ版は、他のドラマ版と変わらず制作当時が舞台となっています。
80年代を舞台としているのが、日本の2時間サスペンスでも良く見る当時を再現するには予算や時間がかかるという都合によるもので、80年代である意味がなく、むしろ雑音であるというのは雰囲気に浸りたい人にはマイナスポイントになるかと思います。

ジーン・ステイプルトン演じるオリヴァー夫人は、ユスティノフのポアロとは相性抜群の明るいオリヴァ夫人になっています。
そして、オリヴァー夫人に負けじと、原作ではポアロのセリフにしか登場しないヘイスティングスも「本当の相棒は私だ!」と言わんばかりに存在をアピールしていました。

物語は、殺人順序の変更や一部人物の名前変更はありますが、概ね原作に忠実に展開していきます。しかし、最後は皆を集めての謎解きになっているため、原作の持つドラマ性が薄まっており、そこが少し残念です。
それでも、原作の伏線を映像で再現しようと頑張っており、フォリアット夫人も雰囲気が出ていたと思います。

前作同様に製作上の制限がある中でも丁寧に作られており、娯楽ミステリードラマとして安定して面白いので、探偵組が仲良くわちゃわちゃしているのが好きな人や、一昔前の娯楽ミステリー好きにお勧めです。

スタッフ
脚本/ロッド・ブラウニング
監督/クライブ・ドナー
時間/94分

キャスト
   エルキュール・ポアロ/ピーター・ユスティノフ
アーサー・ヘイスティングス/ジョナサン・セシル
      オリヴァ―夫人/ジーン・ステイプルトン

    ハティ・スタップス/ニコレット・シェリダン
  エイミイ・フォリアット/コンスタンス・カミングス
  ジョージ・スタッブズ卿/ティム・ピゴット=スミス
       ブランド警部/ケネス・クラナム
    アマンダ・ブルイス/スーザン・ウールドリッジ
     アレック・レッグ/クリストファー・ガード
    ハティ・スタッブズ/ニコレット・シェリダン


デヴィッド・スーシェ主演『名探偵ポワロ』(英) シーズン13 第3話『死者のあやまち』Dead Man's Folly(2013)

2004年以降の新体制で最も脚本を担当しており、そのほとんどが原作のシナリオを活かしたものになっている安定のニック・ディア脚本になります。
全体的に長編版と中編版の間に位置するような内容になっています。

今作もサスペンスを高めるためや、時間内に納めるための細かい変更はありますが、物語自体は概ね原作に沿って進んでいきます。
ただし、結末が最終シーズンを意識した幕の降ろし方になっており、雰囲気も含めてユスティノフ版とは対照的に全体的に暗めのトーンになっています。

とはいえ、短いながらも祭りのシーンは楽しそうで、ポワロがキューピー人形を抱えているシーンも再現されているのはキャラ萌えとして高ポイントです。

グリーンウェイとその周辺をロケ地として使用しているのも本作の良い所になります。
そして、『名探偵ポワロ』最後の撮影回としても有名です。

原作の映像化としても、『名探偵ポワロ』としても、尖った所はありませんが安心して観ることが出来る映像化になっています。

スタッフ
脚本/ニック・ディア
監督/トム・ヴォーン
時間/89分

キャスト
 エルキュール・ポワロ/デビッド・スーシェ(熊倉一雄)
 アリアドニ・オリヴァ/ゾーイ・ワナメイカー(山本陽子)

ジョージ・スタップス卿/ショーン・パートウィー(中村秀利)
  ハティ・スタップス/ステファニー・リオニダス(雨蘭咲木子)
   フォリアット夫人/シニード・キューザック(寺田路恵)
     エティエンヌ/エリオット・バーンズ・ウォレル(桐本琢也)
     ブランド警部/トム・エリス(小野塚貴志)
   ワーバートン大尉/マーティン・ジャーヴィス(金子 達)
   ワーバートン夫人/ロザリンド・アイレス(吉野由志子)
 マイケル・ウェイマン/ジェームズ・アンダーソン(梶 雅人)
   ジョン・マーデル/サム・ケリー(五王四郎)


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