マガジンのカバー画像

読書感想文

47
シリーズでまとめていない本の感想をまとめています
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

鞍馬天狗 長編第3作『角兵衛獅子』(1927~28)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.1-200 野村萬斎が鞍馬天狗を演じたNHK時代劇が好きで、いつか嵐寛寿郎の映画も観ようと思っていた『鞍馬天狗』。今回、原作を手に取る機会があり読んでみました。 最初に選んだのは、鞍馬天狗と言えば杉作少年とのイメージから、超有名作『角兵衛獅子』にしました。 ちょうど、入院中に読んだ『ねこぱんち』で大佛次郎と猫の関係を描いた漫画を読んだので、これもまた一つの運命だと思うのです。 あらすじ 角兵衛獅子の杉作は、稼ぎ

鞍馬天狗 長編第6作『山嶽党奇談』(1928~1930)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.201-499 あらすじ 京都東山の高台寺横の路地には、白髪の老人の姿をした化物が姿を見せると騒がれていた。 また、化物だけでなく最近は山嶽党という暗殺集団まで現れていた。 鞍馬天狗は、ただの人殺し集団を野放しには出来ないと山嶽党を追いかけるが、中々尻尾を掴めず、何度も命を狙われてしまう。 隠れ家を変えようとしていたある夜も、鞍馬天狗と杉作は山嶽党の一味に命を狙われる。 同士である大前田逸郎の援助もあり、短筒で撃た

小市民シリーズ1『春期限定いちごタルト事件』(2004)紹介と感想

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』東京創元社, 2004 作者の作品は〈古典部〉シリーズが好きで全作読んでいますが、後はドラマ化された作品を見ている位になります。 〈古典部〉を読み始めた時に〈小市民〉シリーズも読もうと思いながら時間が経ってしまいましたが。 そして2024年、完結編の出版にアニメ化という流れの中で、今が読み時だと思い遂に手に取りました。 収録短編あらすじ 羊の着ぐるみ 小市民を目指す小鳩常悟朗と小佐内ゆきは船戸高校に入学した。順調な高校生活を始めたと思

小市民シリーズ2『夏期限定トロピカルパフェ事件』(2006)紹介と感想

米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』東京創元社, 2006 あらすじ 高校二年の夏休み初日、小山内さんに〈小山内スイーツセレクション・夏〉を渡された小鳩君は、なぜだかスイーツショップ巡りに付き合わされることになる。 疑念を抱きながらも付き合う小鳩君は、ひょんなことから堂島健吾からも厄介毎の話を聞いた。 果たして、小鳩君は小市民的にひと夏の思い出を作ることができるのか。 紹介と感想 シリーズ2作目は、小さな謎も挟みながらも、前作と違い長編の構成となっていました。 長

黒岩涙香「広告」「父知らず」「田舎医者」「女探偵」紹介と感想

黒岩涙香『黒岩涙香探偵小説選Ⅰ』論創社, 2006 黒岩涙香『黒岩涙香探偵小説選Ⅱ』論創社, 2006 今回は、ショートショート程の分量で展開される涙香オリジナル作品を4作、紹介していきたいと思います。 ジャンルの幅も広く、楽しめる作品が揃っています。 もし涙香が、もっと創作者としての方向に力を入れていたら、どのような作品を生み出していたのかが気になってしまいます。 広告(1889/明治二十二年) あらすじ ある新聞記者の男が、夫婦で俳優の稽古を始めてみると、仏国の俳

ミセス・ハリス シリーズ②『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』Mrs Harris Goes to New York(1960)紹介と感想

ポール・ギャリコ 亀山龍樹訳『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』KADOKAWA, 2023 去年、原作も映画も楽しんだ『ミセス・ハリス、パリへ行く』に続くシリーズ第2弾を読みました。 あらすじ ハリスおばさんとバターフィールドおばさんの家の間に住んでいる少年・ヘンリーは、一緒に住んでいる里親一家に日常的に虐待されていた。 心を痛めていたハリスおばさんは、得意先であるシュライバー夫妻のアメリカ転勤への同行をチャンスに、ヘンリーをアメリカにいる父親の所へ連れて行こうと画

2024年6月の読書まとめ+『ラディカル・ホスピタル 40』『税金で買った本 11』『うめともものふつうの暮らし 8』感想

6月は週に1冊ペースで小説を読めました。 急にヘレン・ヘイズのマープルを再見したくなったため、小説は久しぶりのミス・マープルを中心にアガサ・クリスティー再読が多かったです。 再読で感想を書いてない漫画も含めて、小説もマンガも好きなシリーズが中心の1か月だったので満足度の高い月でした。 同時に、アニメに合わせて前々から読もうと思っていた小市民シリーズに手を出せたのが嬉しかったです。 ひらのあゆ『ラディカル・ホスピタル 40』(2024) 25周年の40巻。最初の頃と比べる