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『パイドン』上演に際して

2024年8月3日(土),4日(日) 福岡アジア美術館あじびホールにて上演される、Mr.daydreamer #9『パイドン』に際してのメッセージならびにあらすじとなります。

上演に際して

本公演は、プラトン著『パイドン(副題:魂について)』を原作に、リアルタイム演算で変化し続ける映像演出と、鑑賞者が自由に移動できる回遊型空間を組み合わせた演劇作品です。

哲学者ソクラテスの死刑執行の1日を、その場に同席したパイドンという人物が回想し語る、という設定の原作では、牢獄で刑の執行を待つソクラテスのもとに集った弟子たちと交わした「魂の不死」についての議論が展開されます。

── 死とは、真理の探究を妨げる肉体から解放され、魂自身となることである。

そのロジックに、肉体を伴った私たちはいかに対峙できるのでしょうか。
本公演は、「回遊型空間」として、客席と舞台の境界を曖昧に、鑑賞者は自由な場所、体勢、在り方でこの空間を鑑賞することができます。それは、鑑賞者であるあなたが、あなた自身の身体を自覚し続けることとも言えるでしょう。そして、あなたが観ている私たちも、あなたの存在を感受し続けています。

私たちMr.daydreamerは、2022年より、「ソクラテスシリーズ」と銘打ち『ソクラテスの弁明』『クリトン』そして本公演『パイドン』を三部作として取り組んできました。シリーズに共通するのは、ソクラテスを偉大なる哲学者ではなく個人として捉え、その像を超えようと試みていることです。『ソクラテスの弁明』では、裁判で民衆から向けられた「偏見」を、『クリトン』では、死の恐怖を覆うための「理性」を。

本公演『パイドン』で、私たちは何を超えていくか。この旅のひとつの終着点を見届けてください。

いまという時、ここという場所、そして身体をもって、この劇空間を共にしましょう。

あらすじ

他者との対話によって真理を探究することを好んだソクラテスは、その批判的精神を疎まれ、青年を堕落させた罪・不敬神の罪として訴えられる。裁判の場でソクラテスは、501人の市民裁判員に対し、自らの主義や善く生きることに対する強い信念を説く。不正や命乞いによって無罪になることを拒否したソクラテスに対し、有罪および死刑判決が下される。(『ソクラテスの弁明』)

裁判を終え、投獄されたソクラテス。死刑執行を意味する聖船の到着を控えた夜明け前、ソクラテスの旧友クリトンが、懇意にしている牢番を通じて牢獄へ侵入する。クリトンはソクラテスに逃亡を説得し、ふたりは善く生きることや国家・国法について問答を交わす。クリトンの説得は、失敗に終わる。(『クリトン』)

『パイドン』は、ソクラテスの死後、ソクラテスの死刑執行に立ち会ったパイドンが、当日の様子を回想し語るという設定で進行される。ソクラテスは、ケベスやシミアスをはじめとした弟子たちと、「魂の不死」について対話したのち、処刑のための毒杯をあおり死にゆく。

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