古典文法のお話7-4 「せ」「し」の識別。
こんばんは。しめじです。
今夜は、とりあえず押さえておきたい識別の話の続きをしようと思います。
今回は、「せ、し」の識別です。
「せ、し」のよくあるパターン3+1
「せ、し」の識別を求められたとき、考えるべきはそれぞれ以下の4パターンです。
「せ」の場合。
・サ行変格活用「す」の未然形。
・使役の助動詞「す」の未然形、連用形。もしくは「さす」の未然形、連用形の一部。
・過去の助動詞「き」の未然形。
・その他、なんかの一部。
「し」の場合。
・サ行変格活用「す」の連用形。
・過去の助動詞「き」の連体形。
・強意の副助詞「し(文法書によっては「しも」)」。
・その他、なんかの一部。
サ行変格活用の未然形や連用形の場合。
これは、「~する」と訳せればサ変だ、と考えるのが一番良いと考えます。
なぜなら、このサ変の動詞は、直前に色々な種類の言葉がくっついて、複合語を形成することが多いからです。
基本となるサ変の動詞は「す」と「おはす」の二つだけ覚えればいいんですが、これに色々くっついて、
愛す、恋す、奏す、啓す、ものす、具す、ご覧ず、案ず
などの様々な動詞に派生しているんです。
ただ、全部を覚えるのはなかなか大変(というかそこに労力をかける合理性はない)ですから、古典特有の「啓す、ご覧ず」などをいくつか覚えておいて、あとは「愛する」「恋する」「奏する」「案ずる」など、「○○する」と言い換えられるものはサ変なんだろう、と考えたほうが良いかと思います。
また、これは「せ」の時限定ですが、後で書く使役・尊敬の助動詞「す」の未然形と見分けがつきにくいのも厄介な点です。
サ変の未然形も、助動詞「す」の未然形も、どちらも同じ「せ」なので、後に続く語の接続から見分けることはできません。
なので、これはシンプルに訳で考えるのが結局一番正確だろう、ということになってしまいます。
一方、「し」の後に続く言葉が連用形に接続するもの(例えば、過去の助動詞「けり」、完了の助動詞「たり」、接続助詞「て」など)であれば、これはサ変の連用形の可能性を考えていいです。また、「し」そのものが連用形である場合も、サ変の可能性があります。(もちろん、サ行四段活用の連用形の一部である可能性も忘れないでください)
過去の助動詞「き」の場合。
これは、結構簡単です。
ですので、試験などで問われた時はこれから検討すると楽かもしれません。
まず、未然形の「せ」ですが、これは次の形でのみ使います。
~せば、~まし。
(訳:もし~たなら、~だろうに。)
この「せ」だけ。これだけが、過去の助動詞「き」の未然形です。
つづいて、「し」の場合。
もしも「し」が連体形だったら、この「し」は過去の助動詞の連体形で決まりです。
例えば、今でもよく見かける言い方である「選ばれし者」の「し」。これ、直後が「者」ですから、連体形ですよね。
したがって、この「し」は過去の助動詞。
ね、これは簡単。
ですので、どのみちすぐに選択肢を一個消すことが出来るので、まずはこれから検討すると後が楽なのではないかと思います。
使役・尊敬の助動詞「す、さす」の場合(「せ」の識別)
これはいたって簡単。
直前の語が未然形なら助動詞「す、さす」です。
過去の助動詞も、サ変の動詞も、直前が未然形になることはあり得ませんので、これで一発で判断できます。
実際は、助動詞「す、さす」はそれが使役か尊敬かの判断が難しいので、それについてもまたいずれ書くと思います。
(といっても所詮は二択なので、そこまでややこしいわけではないのですが)
強意の副助詞の場合(「し」の識別)
文の途中に挟まって、強意を示す副助詞があります。
しばしば、係助詞「も」とセットになって、「しも」という形で使うので、「しも」も一つの副助詞として紹介している文法書も存在しています。
これも、すぐに見分けられます。
「し」「しも」を隠してみて、文が普通に読めたらこいつです。
なぜかというと、強意の副助詞「し」は、特別な接続を持たないからです。
また、強意という意味の性質上、それがあっても無くても文は成立してしまいます。
ですので、もしも「し」「しも」が消えても、実は文が何も崩れないのです。
ということで、以上4パターンでした。
ですが、こうやって書いてみるとやや入り組んでしまったので、明日か明後日には練習問題を載せてみようと思います。
ぜひ、実際に試しながら覚えて行ってください。
では、今夜はこの辺で。
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