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簡単に、文章の印象を「脱・子どもっぽい」させる方法。

こんばんは。しめじです。

最近、学校の中のことや、教員という仕事についてのことばかり書いてきたので、今夜は趣を変えて、文章のこつについてお話ししようと思います。

年齢は子どもなのに、妙に文章が大人っぽい人。逆に、年齢は大人なのに、文章が子どもっぽい人、どちらもそれなりにいます。

尤も、大人になると、塾の先生や学校の教員以外の仕事についた場合は子どもの文章を見ることがほとんどないのでピンとこないかもしれません。

でも、「妙に文章が稚拙な人」って、身の回りにいませんか? あるいは、あなた自身が悩んでいませんか?

文章がなかなか大人っぽくならない、という相談は、国語教師をしていると生徒から寄せられます。特に、受験に向けて小論文を練習している生徒、就職試験に向けて作文の練習をしている生徒。あとは、稀に読書感想文を真剣に書こうとしている生徒。

そこで、いくつもある「こつ」の中から、ちょっと心がけるだけで文章の見栄えが大きく変わることを、二つ、紹介しようと思います。

1 形容詞(やそれに近い語句)を多用しない。

楽しい、嬉しい、悲しい、辛い、苦しい、大きい、小さい、多い、少ない。

文の最後に使うと「〜い」で終わる単語の多くが形容詞です。もちろんそうでない場合もありますが。

これを多用すると、途端に子どもが書いた夏休みの絵日記の文章みたいになります。

例えば。

「今日は、家族で水族館にいきました。とても楽しみにしていたので、行けて嬉しかったです。行き先は、大阪の海遊館でした。車に長い時間乗って、やっと着きました。遠かったです。海遊館には、ジンベイザメや、すごく大きな水槽があります。ジンベイザメは、口が大きくて、大きい水槽は、きれいな魚がたくさん泳いでいました。とても楽しかったです。ですが、最後に立ち寄ったお土産屋さんに、楽しみにしていたジンベイザメのぬいぐるみが売っていなくて、とてもかなしかったです」

どうでしょう。見事に小学生の夏休みの一コマではないでしょうか。では、この文章から、形容詞や、それに似た語(きれいな、大きな、楽しみに、は形容動詞です)を削り、別の表現に置き換えてみます。

「今日は、家族で水族館に行きました。カレンダーに○印までつけていたイベント、当日はあっという間に終わってしまいました。行き先は、大阪の海遊館でした。高速道路を走り続けて■時間、やっと着きました。長時間のドライブでしたが、その疲れも忘れるほど興奮しました。海遊館は、ジンベイザメや、日本最大級の大水槽が有名です。ジンベイザメが餌を飲むために開けた口は、私一人くらいなら丸呑みできそうでした。大水槽は、色鮮やかな魚が群れをなして泳いでいました。大満足の家族旅行でした。ですが、最後に立ち寄ったお土産屋さんに、絶対に買おうと決めいていたジンベイザメのぬいぐるみが売っていなくて、それだけが心残りです。」

いかがでしょうか。中学生から高校生くらいにはなったんじゃないかと思います。題材が水族館への家族旅行なので、ある程度限界はありますが、言葉の選び方を変えるだけで文章の印象は変わります。

具体的な言い方をする、自分の実際の行動に置き換える、これだけで文の内容が一気に具体性を帯びるので、読んでいる側により明瞭に伝えることができます。仮に形容詞、形容動詞を使う場合も、より意味の狭い語を選ぶと良いです(例えば、「きれい」だと、透明感がある、光り輝いている、艶がある、色鮮やかで発色が良い、など、さまざまな可能性がありますが、「色鮮やか」にすると意味が限定的になりますね)

「楽しい」も、どれくらい楽しいのかは伝わりませんから、「どれくらい楽しいのかが伝わる内容」に置き換えればいいです。「とても」「すごく」のような程度を表す言葉も、それがどの程度なのかは伝わらないので、それがどの程度かわかる表現に置き換えるといいですね。

文章を書いたら読み直してみて、形容詞が使われているところは極力別の表現に置き換えてみると、一気に印象が変わると思います。

ちなみに、余談ですが、形容詞(特に、心情を表す形容詞)の持つ幼さを逆手にとった、こんな短歌もあります。

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい(穂村弘『シンジケート』)

本来、短歌は心の動きでないものでもって心の動きを表現するのが王道。そこであえて下の句を全て「心情を表す形容詞」で埋め尽くす、というのは、まさに逆転の発想です。 

2 文末を変える。

生徒の作文を読んでいると、5文ほど続けて「〜だと思う」が繰り返されているものに出会します。読みにくいですし、稚拙な印象を受けます。

文末を少しずつ変えるだけで、稚拙な印象は薄くなります。

たとえば、自分はこう思う、という内容でも、

〜だと思う。

〜だと考える。

〜ではないだろうか。

〜のはずだ。

と、様々な言い方ができます。自分が思っていることのうち、その文章の中心になる物事、テーマと呼べそうな内容であれば、「〜ではないだろうか」と呼びかける言い方にしてみたり、より確信のあることであれば「〜のはずだ」と置き換えることができます。

極力、直前に書いた一文と同じ文末にしないように心がけると、文章が一気に大人っぽくなります。

以上、二つ。どちらもそんなに難しいことではありません。もしよければ、試してみてください。

では、今夜はこの辺で。


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