令和いらねえ吊り輪ホットケーキ/2020年3月8日

 KBS京都の「レコ室からこんにちは」という番組は、前から気になっていた。

 平日夕方、15分の音楽番組。セレクターが京都在住の音楽好きの面々というのもいいし、なによりラジオ局収蔵のレコードから選曲するという縛りがおもしろい(持ち込んでもいいらしいけど)。

 KBS京都の伊藤健さんからご指名いただき、その大役を勤めることになった。京都在住でも京都出身でもないのに。

 とはいえ、ぼくとKBSには少なからず縁がある。2001年の暮れ、KBS京都の50周年を記念して行われた2日がかりの音楽フェス「KYOTO EXPERIENCE」のパンフレットを、ぼくが制作したからだ。そのイベントを中心となって企画したのは伊藤くん。この顛末については「ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック」にも書いているけど、貴重な体験をさせてもらった。

 今回ひさびさに収録のために訪れたKBSの局内の空気感も、ぼくのなかにまだ少し残っていた。

 KBSのレコード室というのがまた、ちょっと予想を裏切る感じなのもよかった。なんでも揃ってるわけではないのだ。

 LPレコード、シングル盤、CDと整理されて棚に収まっているけど、網羅ではない。あくまでそのときどきの需要や、歴代ディレクターの好みで収蔵されてきた作品主体というところか。

 要は「これがある」のに「あれがない」というパターンが多い。国内で発売された全レコードの物量からすれば「まばら」だし「まだら」。でも、その偏りが好ましい。突然、ジェシ・エド・デイヴィスのレコードが出てきて、ぼくに「よう、おひさしぶり」とあいさつしてきたような気分になる(今回は選んでない。またね)。

 「レコ室からこんにちは」は、毎週、月から水曜の17:15分から。週替わりでの担当で、ぼくは今月の9日から11日までを担当する。

 第一回はごあいさつがわりの選曲にした。1曲目は見つけた瞬間、息が止まるかと思った大好きなレコードから選んだ。A面の1曲目。あの曲からはじめることができてうれしい。

 収録したのは2月の後半。「レコ室」収録が終わって、局の近くをうろうろしていた昼下がり(午後の生ワイド「さらピン!キョウト」に出演することになっていた)。気になる感じの喫茶店に入ったら、開口一番「いらっしゃい。カレーですか?」と聞かれて面食らった。

 「いえ、コーヒーを」

 やさしそうな女性店主が安堵したように「どうぞ」と招き入れてくれた。あとで知ったが、その店は地元でとびきりの自家製カレーの名店「茶の間」だった。この日の分のカレーはすでに売り切れていた。

 もし今回の放送が好評で、また「レコ室からこんにちは」で選曲できる機会があったなら、絶対に行かないといけない店を、脳内マップにクリッピングした。

 コーヒーもおいしかった。

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