高年齢者の雇用確保措置が拡大されます(ねっとwork5月号抜粋)

2021年4月より新たに改正施行された高齢者雇用安定法について、判例を交えてその詳細と注意点をご案内いたします。

高齢者雇用安定法が2021年4月より70歳まで雇用の努力義務へ

少子高齢化社会が進行するなかで、働く意欲がある高齢者の活躍を推進し、その活躍できる環境を整備することを目的として、高年齢者雇用安定法があります。
その高年齢者雇用安定法は、2021年4月より新たに改正施行され、「70歳までの雇用」が努力義務となります。

具体的内容と注意点

65歳までの雇用確保義務に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、70歳までの定年引上げ、又は70歳までの継続雇用制度など、いずれかの所定の措置を講ずるように努力しなければなりません。

現在、65歳まで高年齢者再雇用制度を導入している企業も多い一方で、65歳以降の労働条件の決定を際に従業員とのトラブルが発生するリスクもございます。昨今の改正施行を契機に、最近の判例を参考に法的にはどのように判断されるのか、その注意点を見ていきましょう。

=判例紹介=アルパイン事件(東京地裁令和元年5月21 日)

労働者は、60歳定年後も今までと同じ部署で、かつ同じ職務を行っていきたいと会社に希望を出していたにも関わらず、会社がこれを認めず他の部署配属にしたのは違法であると主張して争った事案

本判例の争点となるポイントと判決は次の2 点です。

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理由は以下の通りとなります。
(1)会社は労働者の希望に必ずしも添う必要はないため。
(2)会社の提示した再雇用の申し込みに、労働者が自らの判断で承諾していないため。
(3)会社が労働者に申し入れを行った定年再雇用にかかわる勤務場所及び職務内容が客観的に見て不合理でないため。

つまり、会社が提示する条件が客観的に見て不合理な職務内容や場所でなければ、定年後の職務内容等について双方の同意が得られずに定年を迎えた場合、そのまま労働者は定年退職となります。
どの会社でも起こりうる事案として、多くの事業主はこの判決に安心したのではないでしょうか?
まだ努力義務ではありますが、70歳までの継続雇用制度の導入するためのハードルを下げる良い判決であると思います。

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