実験文章ラボ

実験文章『オヤジギャグを言わない』

 どうもMr_noiseです。
実験文章ラボは不定期で僕が変な文章表現を試す企画です。
中見が無いなら外見からこだわればいいや、書くことないなら表現だけ凝ればいいやみたいな考えのもと、いろんなレトリック、言葉の綾を考案し、実際に書いてみる。それがこの実験文章ラボです。

 今回のテーマは『オヤジギャグを言わない』です。オヤジギャグってのは「布団が吹っ飛んだ」に代表されるような言葉遊び。妙齢の成人男性が好んで言いがちなお寒いギャグ、ギャグなのに笑えないもの、言うと完全体おっさん認定される言葉みたいな扱いを世間からされています。まあ、でも僕も31歳ですし、いい歳なので言いたくなる気持ちもわかる。脳から口を通してぽろっと溺れて、空気を凍らせそうになる。だったら言うのを我慢して、オヤジギャグの状況説明だけして、肝心のオヤジギャグを言わない文章を書けばどうなるのだろうと考えました。言わなくても読み手にはオヤジギャグが浮かぶのではないか。そして言ってないのに、文章を読んでオヤジギャグが思いつくのであれば、同類認定できるのではないか。試してみましょう。
実験文章を始めます。

『オヤジギャグを言わない』

 カーラジオからアナウンサーが淡々とした声で話している。「交差点に突っ込んだトラックはそのままのスピードで墓地に侵入し、墓石を……

 事故の影響か岩手から青森へと向かう道でで急に車が混んできた。それでも信号待ち以外で止まることはなく、ゆっくりながらも車は列をなして進んでいた。しかし岩手を抜けて青森に入ると、渋滞はひどくなっていく。目の前の信号が赤から青へ変わるが、前の車は動こうとしない。どうやら青森県道は……。 

 パーキングエリアで食事をしてからもう3時間も経って小腹が空いている。ふと助手席の彼女を見ると、機嫌の悪そうな顔をしながら、サンドイッチを食べている。彼はおどけた調子で「ちょっとでいいから、くれないっすか?」と声をかけた。すると彼女はサンドイッチ挟まれていたレタスだけ私に……。

 彼女は牛歩ペースの車の列に期待することに飽きたのか、タブレット端末で教え子たちの漢字テストの採点を始めた。「海月の読みは『くらげ』、よし、まる干ばつを『ほしばつ』と読むのは……。

 彼に「両親に紹介したい」と言われたとき、彼女は嬉しかったが、同時に彼は金に困っているんだろうなと思った。その証拠に彼が本当に結婚を考えているのなら先に大分に住む彼女の両親に会いに行くはずだ。要するに彼は地盤を固めて、彼女の周りを囲み、彼女の親から金を無心したいだけなのだ。彼女の両親の続ける干しシイタケの事業のもうけを……。

 「次に見える郵便局を右だよ」と助手席に移った彼は彼女に言った。自分は疲れたからと土地勘のない彼女に運転させる彼には苛々する。「右だからね」と念押しする彼の言葉を彼女はスルーした。両親に会う前に喧嘩してはここまで何をしに来たのかわからなくなってしまう。要するに彼女は彼に惚れてしまっているのだ。右手に郵便局が見えてきた。今なら引き返すこともできる。助手席では彼がなつかしそうに道を眺めては楽しそうにしてる。車を降りて、彼と別れることもできるのだ。しかし彼女は右折……。

 彼の両親と顔をあわせて一緒にご飯を食べて、彼と二人で庭に出て、雪で遊んだ。彼女と彼は手のひらサイズの小さな雪だるまを二人で作った。次の朝、庭に出ると、雪だるまは無くなっていた。彼に「どこ行ったんだろう」と彼女が言うと、「雪に埋もれただけさ」と彼は返した。彼は朝ご飯を済ませたら出かけようと言って、顔を洗いに行った。彼女は思った。私たちはこれからどこへ行くのだろうと。二人の行く末を暗示しているのだろうか、雪だるまがどこかへ……。

所感

  思ったよりオヤジギャグが思いつかなかったので、どんなオヤジギャグが言いたい文なのか読み解くのは難しくなってしまったと思う。これを読んで理解できた人は老若男女問わずおっさんソウルを持っていると認定したい。
最後に「イカ墨」も文章中で使いたかったけど生かす道が思いつかんかったわ。

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過去の実験文章たち(ほとんど失敗している)


 


 

 

 

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